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夏のティーケー海岸ものがたり その1

 先日、神界で危うくお縄になりかけてしまった、どうも田倉良一です。
 マルンによりますと、あの事件以後、ラウェさんが僕の事を探しにやって来る様子はないとの事でしたので、僕としましてもどうにか安堵しきりなわけです。
 ……しかし、一部とはいえご自分の記憶を消してしまったラウェさんってば、支障なくお仕事出来ているのでしょうか……他人事ながら少し気になってしまいます。何しろ実際問題として悪かったのはこっちなわけですからね。
 あるかどうかはわかりませんが、何か機会があればきちんと謝罪させてもらいたいな、と、思っています。

 その事件のそもそもの元凶となった、マルンが経営しているヤルメキススイーツのお店の2階に開店準備が整っているコンビニおもてなし神界出張所なんですが……
「求人広告は出してるんですけどねぇ……どういうわけかさっぱり応募がないんですよ」
 マルンがそういって首をかしげるように、新しい店員さんの申し込みが今のところまったくないそうなんですよね。
 まぁ、神界警察のラウェさん絡みであそこまで大規模なもめ事が起きたわけですし、その現場に結構な数の使い魔のみなさんが出くわして、その光景を目の当たりにされてましからね、やっぱそれが広まったせいでマルンのお店で働いてみたいと思う人が少ないんじゃないのかな、と思ってしまうわけです、はい。
 マルンは、仕方なくコンビニおもてなしの弁当などの一部商品をヤルメキススイーツのお店で、スイーツと一緒に販売しているそうです。
 ヤルメキススイーツのお店はマルンが1人で切り盛りしているため、負担が増えすぎないように、と、とりあえずは弁当やパン類のみの扱いになっているそうなのですが、それでも多くの使い魔のみなさんに喜ばれているそうです。
 早くバイトが見つかれば……そう思わずにはおれません。

◇◇

 そんな神界での大騒動が終わって1週間ほど経過したある日のことでした。
 転移ドアを利用して、ティーケー海岸で商会本店をやっているアルリズドグ商会のアルリズドグが僕を訪ねてやってきました。
「なぁ、店長さんよ、ちと折り入ってお願いがあるんだけどさ……」
 そう言いながら話しを切り出したアルリズドグなのですが、その話しを総合しますと……

 なんでももうじきティーケー海岸ではこの時期恒例の夏祭り月間に入るそうです。
 この1ヶ月は、ティーケー海岸にお店を構えている方々にとっていちばんの稼ぎ時なんだそうです。
 と、言いますのも、この出店を目当てに多数のお客さんがやってくるからだそうなんですよね。 

「と、言うわけでさ、コンビニおもてなしにも出店をだしてもらえないかと思ってさ」
「出店を、ですか?」
「そうなんだ、ティーケー海岸の夏祭りではさ、毎年あちこちの都市にある有名なお店に声をかけて出店を出してもらって客集めをさせてもらっているんだけど、今年はコンビニおもてなしさんにそのお役目をお願い出来たらな、と思ってさ」
 アルリズドグは僕に向かってそう言うと、いつものように豪快に笑っていました。
 なんでも補助金を出してもらえたり、出店として一等地を提供してもらえたり、と、なかなか破格な条件に見えなくもありません。
 僕は、アルリズドグに
『一応コンビニおもてなしのみんなにも意見を聞いてからにさせてもらってもいいかな』
 そう訪ねたところ、快諾してもらえました。

 それを受けた本日。
 コンビニおもてなし本店の応接室には各地にあるコンビニおもてなし本支店のみなさんが集まっていました。
 コンビニおもてなしでは週に一回、各本支店の責任者が集って情報を交換しあっていまして、今日がその日だったんです。
 応接室に集まっているのは

 本店の代表として本店店長代行のブリリアン
 2号店の代表として2号店店長のシルメール
 3号店の代表として3号店店長のエレ
 4号店の代表として4号店店長のクローコ
 5号店の打表として5号店店長の僕
 ここにおもてなし商会のファラさん、ルア工房のルア、ペリクド工房のペリクドさん
 こういったメンバーが一堂に会しています。

 まずは皆から今週のコンビニおもてなしの営業状況を発表してもらのですが、総じてどのお店も問題なく営業出来ている様子でした。
 特に、先日まで続いていた猛暑の間作成し続けていたヤルメキススイーツ制作のアイスクリームが大人気だそうです。
 いくら増産しても、入荷した端から売り切れているそうです。
 それを受けて、各店の店長からは
「早急にアイスクリームの増産をお願いしたい」
 との意見が多く寄せられました。
 これに関してはヤルメキススイーツを作成しているヤルメキスとケロリンの2人に僕から改めてお願いしてみることになりました。
 
 その後、簡単な情報交換を終えたところで、僕はアルリズドグから提案された出店のことを皆に相談してみました。
「僕としては受けてみたらどうかと思っているんだ。小規模とはいえ、ティーケー海岸では、おもてなし商会ティーケー海岸店があって、そこで今までもコンビニおもてなしの商品を販売していわけだし、多少なりとも名前が知られているとは思っているんだ。そんなわけで、ティーケー海岸の人々にとってもまったく未知な存在というわけではないわけだしさ、結構集客が見込めるんじゃないかと思っているんだ」
 僕がそう提案するとと、
「いいんじゃないですか、ゆくゆくはティーケー海岸に正式にコンビニおもてなしをオープンする際の試験営業的ものとして」
「うん、あのティーケー海岸は割と人口も多いし」
 そんな意見が多数寄せられました。
 意見交換の後多数決を行ったところ、全員が『ティーケー海岸の夏祭りに出店をだす』ことに賛成してくれた次第です。

 これを受けて、会議が終わると僕はすぐさまスア製の魔法ドアをくぐってティーケー海岸へと出向きました。
 アルリズドグ商会を訪ね、中で仕事をしていたアルリズドグにこの結果を伝えたところ。
「ありがてぇ、よろしく頼むぜ。アルリズドグ商会も全面的に協力させてもらうからさ」
 そう言って、嬉しそうに笑っていました。

◇◇

 こうして、コンビニおもてなしの出店をティーケー海岸の夏祭り期間だけ出店することが正式に決まりました。

 期間が5週間近くありますので、さしあたって各支店が1週間交代で出店の管理を行うことになりました。
 と、言いますのも、このティーケー海岸は海水浴場としても知られています。
 そのため、出店を担当してもらう皆さんには、平日の閉店後とお店が休みの日である休日の際に海岸で遊んでもらえるように配慮した次第です。
 せっかく海にお店を出せるわけですし、ついでに海岸と夏を満喫してもらわなきゃ損といえますしね。

 くじ引きの結果……最初の週の担当を、僕が店長をしているコンビニおもてなし5号店が行うことになりました。

 早速5号店に戻った僕は、みんなにこのことを伝えました。
 すると
「うむ、気合いが入りますな」
 と、グリアーナ。
「夏祭りに出店する出店となりますと、かなりの集客も見込めますものね」
 と、シャルンエッセンス。
 この2人を筆頭に他の店員のみんなもやる気満々な様子でした。

 出店は当分の間、僕プラス5号店の誰かもう1,2名加わってもらう方針になりました。
 これを受け、僕達は早速その準備にとりかかりました。
 ティーケー海岸の夏祭りはもうじき始まりますからね。

 こうして、コンビニおもてなしによる、ティーケー海岸での出店の準備が大急ぎで進められていきました。

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