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むちやぶり

ご老公たちはご飯を食べ終わるとそれから一時間ほど休憩をとった

ご老公はごろんと寝ると着物からタバコとライターを取り出して一本吸った

ご老公

(あー本当にうめえな、休憩中に吸うタバコはよ)

農民たちはそんなご老公を見て心から心配して言う

(あんのーご老公様、そろそろタバコはやめた方がいいですよ、もう、お歳のこともあるべえし)

それを聞いたご老公は(あっ)と言いながら農民たちを睨み付ける

ご老公はニタニタ笑いながら目だけ笑わないで言った

(あっ、お前、いい度胸してんなー、俺が誰だかわかっていってる)

農民は(ひい)と叫びながら怯えて言った

(めっ、めっそうもありむせんだ、ただ、おらあ、本当にしんぺえだからいってんだ、ご老公様は天下人だとも、タバコは体に悪いだよ、決してご老公様をバカにしたことでねえだ)

ご老公は(ふーん)と言いながらタバコをやめずに吹かした後に言う

(ところでよ、おめえは今年で何歳になった)

農民
(えっ)

ご老公
(だからよ、お前は今年で何歳だっーの)

農民は嫌な予感がしながら恐る恐る言う
(おらあ、今年で58になりますだよ)

ご老公はまた(ふーん、58歳ねぇー)
といやみたらしく言うとタバコをたくさん吸い込んで吐いたあと言う
(ふー、おめえよ、俺が今年で何歳かって、知ってるよな、当然)

農民はブルブル震えながら答えた
(はい、もちろん知っとるだよ、だかんら、おらあ、ご老公様のお歳を考えて)

農民が答える前にご老公は大声で言った
(ばか野郎、俺はまだ、現役だ、そこいらにいるヤツと一緒ににすんな)

農民は(ひいー)と言いながらひたすら土下座をする

するとそこにご老公の様子をみに来た蝶野正カクさんがやって来た


蝶野正カクさんはご老公がなにやら農民たちに向かって騒いでいるのを見て思った

蝶野正カクさん
(おい、おい、おい、
またやってるよ、あのじいさん)

蝶野正カクさんはゆっくりと歩きながらご老公に気づかれぬように背後をとり、言う
(ガッテーム)

この大声を聞いた武藤黄門は(うわっ)と叫びながらおもいっきり右腕の肘を曲げて蝶野正カクさんの首もとに直撃させる

蝶野正カクさんは(いてっ)と唸りながら耐えた
さすが毎日武士として鍛えているだけはあった
武士の中でも蝶野正カクさんはかなりの耐久力の持ち主であった

武藤黄門はよろけながら耐えきった蝶野正カクさんを睨み付けると大声で言う
(お前、蝶野正カク、いい加減俺の背後に回り込むなってんだろーが、しかも、今日は大声でわけわかんねー事を言いやがって、お前、いい加減にしろよ、誰だと思ってんだ、俺の事を)


蝶野正カクさんは右手で首筋のあたりを撫でながら左手で手を振って言う
(あーもう、冗談、冗談ですよ、ご老公、こんなの俺たちの仲じゃあスキンシップみたいなもんじやないですか、それよりは、いてー)

ご老公は不機嫌になりながら言う
(どんな仲だ、そりゃあ、お前、いい加減に身分をわきまえろよ)

農民は恐怖のあまりその場に凍りついた

蝶野正カクさんは笑いながら言う
(いやー、わかってますって、わかってますよ、武藤黄門様、私はあなた様の忠実な家来です、しかしね、毎回、毎回、様子を見に来るたんびに農民たちをいじめてるのをみりゃあ、そりゃあ、たまにはこんなこともしたくなっちやうでしょう、武藤黄門様、いい加減、農民たちをいじめるのはやめてください、そのうち百姓いっきがおこりますよ、こんなことしてたら)

蝶野正カクさんの言うことを聞いていた武藤黄門は(なんだよ、そりゃあ、ちょっとからかっただけじやないか)
と言って農民を見た

農民たちは(ひいー)と言いながら冷や汗をかいた

しかし、蝶野正カクさんは
この隙を逃すことはなかった
(ほら、武藤黄門様、あんたさ、また、無言の圧力を農民たちにかけてるでしょう、見え見えなんですよ、それ、いつも思うんですが、結局、ご老公が悪いんでしょう、謝ってくださいよ、農民たちにとやんと)

武藤黄門は(ばつの悪そうな顔をしながらしばらく考えてから言う
(わかったよ、謝ればいいんだろ、謝れ)

蝶野正カクさん心のなかで思った
(まったく反省してねえな、このじじい、頭おかしいな、こいつ)

武藤黄門が少し顔を下げながら農民たちに謝った
(えー、この度は、なんと言いますか、
私の責任であります、以後、このような不祥事を起こさぬよう、いっそう、心を戒めていきたいと思います、大変、ご迷惑をおかけしました、スミマセン)

農民たちは初めて武藤黄門が謝ってくれたので少し、気分が良くなったが、また、明日から武藤黄門と一緒にに農作業することを考えると、蝶野正カクさんは余計に事をしでかしてくれたなと内心思った

農民
(いっ、いえ、ご老公様、私らも悪いところがありましただ、こちらこそ申し訳ありませんだ
と言って頭を下げた

武藤黄門は(そうか、そうか、そうだよな、俺も悪いけどさ、お前たちだって、結構失礼なところもあったもんな
まーいいか、これで)
と言って豪快に笑った

蝶野正カクさんは思わず拳を握りしめて、キレそうになった

しかし、農民の娘二人が必死にやめてくださいませ、という顔を見たのでなんとかこらえた







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