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コ・コンビニおもてなしクエスト? その2

 ……え~……田倉良一です。
 現在、私は妻であるスアが操縦している魔法の絨毯にのりまして、山の中腹に居座っている伝説級の魔獣フレイムゾンビドラゴンのところに向かっております。
 温度の変化を体感出来るように、魔法の絨毯の周囲に魔法壁を展開しないまま進んでいた僕達なのですが、フレイムゾンビドラゴンが発していると思われるすさまじい熱量のせいで魔法の絨毯の上は蒸し風呂どころの騒ぎではありません。
 すでにドンタコスゥコは大の字になって魔法の絨毯の上に倒れ混んでいます。
 日傘をさしているシャルンエッセンスも、僕の背中に倒れ混むようにして意識を失っています。
 で、僕は、魔法の絨毯の先頭に座っているスアにですね
「スア、原因らしい魔獣も見つけることが出来たわけだし、こうして視認も出来ているんだから魔法壁を展開したらどうかな?」
 そう言いました。
 ですが、スアはまったく反応しませんでした。
「スア?」
 僕は、な~んか嫌な予感がしてスアの肩に手をのせました。

 ……なんということでしょう……

 スアは、僕に肩を掴まれると同時に、僕の方に向かってパタンと倒れ混んできたのです。
 ちょうど僕の膝の上にスアの頭がのっかったのですが……その顔は熱にやられて真っ赤になっています。
「……う、うみゅう……」
 妙な言葉を発しながらピクリともしないスア。
 どうみても、熱にやられて気を失っています。

 僕はゆっくりと前方へ視線を向けました。
 すると……山の中腹に居座っているフレイムゾンビドラゴンも僕達に気が付いたらしく、こっちを見ています。
「……あ、あぁ……どうも、こんにちは」
 僕は、苦笑しながらぺこりと頭をさげました。
 ほとんど職業病ですね……つい相手に向かって挨拶をしてしまったわけです。
 フレイムゾンビドラゴンが応えてくれるわけがありませんよねぇ……

 ぺこり

「へ?」

 ……なんということでしょう~2回目~

 前方にいるフレイムゾンビドラゴンがいきなり頭を下げたではありませんか!?
 い、いやぁ……礼儀正しい伝説級の魔獣もいるんですねぇ……あはは。
 僕は思わず乾いた笑いを浮かべました。
「……ん?」
 その時、僕はある事に気が付きました。
 フレイムゾンビドラゴンの周囲に、何やら炎がとぐろを巻き始めていたのです。
 しかもその炎は、フレイムゾンビドラゴンの頭に向かってどんどんどんどん集まっているではありませんか……
「……ま、まさか、ちょっと……ふ、フレイムゾンビドラゴンさん?……あ、あなた今のそれって、お辞儀なさったのではなくてですね……ぱ、パワーを貯めていらっしゃるとか、いいませんよね?……あはは」
 僕は、乾いた笑いを浮かべながらフレイムゾンビドラゴンを見つめていました。

 ……なんということでしょう~3回目~

 そんな僕の前で、フレイムゾンビドラゴンは下げていた頭を持ち上げると、僕達に向かって紅蓮の炎を吐き出したではありませんか!
 ゴ●ラもガ●ラも目じゃありません。
 ソー●ーレイよりは劣っているといえますが……と、とにかくすさまじい炎の柱がとぐろを巻きながら僕達に向かって突進してきているんです。
 当然、緊急回避案件です。
 ですが、この魔法の絨毯の操縦者であるスアは暑さで意識を失っています。
 このままでは、僕達はあの炎に包まれながらサライを聞くことになってしまいます。
「えぇい、くそう!」
 一か八か、僕は先ほどまでスアが座っていた魔法の絨毯の先頭へと移動すると絨毯の布を思い切り真上に引き上げました。
「あがれ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」
 すると、魔法の絨毯はすさまじい勢いで急上昇していきました。
 そんな魔法の絨毯の真下を紅蓮の炎が通過していきます。
 間一髪で、僕はその炎をかわすことに成功したわけです。

 し……しかしですね……この状態でいつまでこの魔法の絨毯を操縦出来るかなんてわかったもんじゃありません。
 しかも、フレイムゾンビドラゴンてば、なんか羽ばたこうとしてません?
 なんか、こっちに向かってこようとしてません?

 って、いうか……きた~~~~~~~~~~~~~~~!?

「羽、全部骨なのに、なんで羽ばたけてんだよ、あんたぁ!?」
 そんな僕の叫び声などお構いなしに、フレイムゾンビドラゴンは魔法の絨毯に向かってまっすぐ飛んできています。
 僕は、魔法の絨毯の一部を掴んで右に左に引っ張ってます。
 今のところ、それで左右には動けています。
 で、それを前に倒すと加速してくれる感じですね。

 とにかく僕はフレイムゾンビドラゴンの逆方向へ向かって魔法の絨毯を飛行させています。
 せめてスアが目を覚ますまでは逃げないと……僕がそんなことを考えていると、
「……このドンタコスゥコとしたことが……どうやら気を失っていたようですねぇ」
 そう言いながら、ドンタコスゥコが目を覚ましました。
 目を覚まして欲しかったのは君じゃなかったんですけどねぇ……
 そんな僕の目の前で、ドンタコスゥコはおもむろに腰の魔法袋へ手をかけました。
「店長さん、このドンタコスゥコ、こんなこともあろうかと、こんな物を準備してきていたんですよねぇ」
 そう言いながらドンタコスゥコは、大きな弓を取り出しました。
「ど……ドンタコスゥコ……なんだいそれは?」
「ふっふっふ……これですけどねぇ、門番(ゲートキーパー)の弓と言ってですねぇ、伝説級アイテムなんですよねぇ」
「は!? ドンタコスゥコ、お前がなんでそんな物を持ってるんだ!?」
「いや、実はですねぇ、前に門(ゲート)の遺跡を調査した際にですねぇ、偶然見つけたんですよねぇ」
「は!?」
「で、ですねぇ、どこかの金持ちの好事家か金持ちの冒険者にでも売りつけようかと思っていたのですがねぇ、とりあえずどれくらいの威力があるのか、一度試し打ちをしてからでないとお値段の付けようがないなぁと思っていたのですがねぇ、ちょうどいい試し打ちの標的が現れましたねぇ」
 そう言うと、ドンタコスゥコはその弓をフレイムゾンビドラゴンに向かって構えていきました。
「じ、事情はだいたいわかったけど……それ、本当に打てるのかい? 遺跡にあった大昔の道具なんだろ?」
「あぁ、それは大丈夫ですねぇ、取り扱い説明書が一緒にありましたので、それを解読しましたのでねぇ……ただ、ひとつ問題があるんですよねぇ」
 ドンタコスゥコは、弓のあちこちにあるボタンを押したりレバーを引いたりしながら、その顔に苦笑を浮かべました。
「……このドンタコスゥコ……生まれて今まで、一度も弓を射たことがないのですよねぇ」
「……だ、だめじゃん」
 ドンタコスゥコと僕は、顔を見舞わせながら真っ青になっていきました。
 そんな僕達の後方に、フレイムゾンビドラゴンがどんどん迫っています。 
 スアも、僕の膝枕で未だに意識を失っています。

 その時でした。

「弓なら得意ですわ。幼少の頃から嗜んでおりましたので」
 意識を取り戻したらしいシャルンエッセンスが、そう言いながらドンタコスゥコから弓を取り上げるとフレイムゾンビドラゴンに向かって構えていきました。
 すると、その弓の間に光りの矢が出現したのです。
 シャルンエッセンスは、その矢を引き絞りながらフレイムゾンビドラゴンへ狙いをつけています。
 そして、
「いざ!」
 一言とともにシャルンエッセンスは光りの矢を放ちました。
 その矢は一直線にフレイムゾンビドラゴンに向かって突き進んでいき、その眉間に突き刺さりました。

 GYAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO

 すさまじい絶叫とともに、フレイムゾンビドラゴンが真っ逆さまに落下していきます。
「や、やったのか!?」
 僕は、魔法の絨毯から身を乗り出して下を覗き込んでいきました。
 シャルンエッセンスとドンタコスゥコも僕の後方から頭を出しています。
 そんな僕達の視線の先で、フレイムゾンビドラゴンは真っ逆さまに落下しているのですが……その体は炎に包まれています。
 その下には森林が広がっています。
「……なぁ……あのままフレイムゾンビドラゴンが落下したら……やばいんじゃない?」
 ただでさえ最近、異常に暑かったじゃないですか?
 当然、森の木々もカラカラに乾いていると思うんですよね?
 そこに、火の塊と化しているフレイムゾンビドラゴンが落下しているわけですよ……

 僕達は、その場で真っ青になりました。

 そんな僕達の思いを余所に、フレイムゾンビドラゴンはどんどん落下しています。
 そして、もう少しで森……というところで

 いきなり制止しました。

「「「え?」」」
 その光景に、僕達は目を丸くしました。 
 ……間違いありません……フレイムゾンビドラゴンは、森まであと数メートルというところで、空中に制止しています。
 その光景を見つめながら唖然としている僕達だったのですが……そんな僕の膝の上に寝てたはずのスアの右手がフレイムゾンビドラゴンに向かって伸びているではありませんか!
「……ごめんなさい……寝てた?」
 スアは、僕の顔を見つめながらオロオロした表情を浮かべています。
 僕は、そんなスアを思い切り抱きしめました。
「いや、スア、ばっちりのタイミングだったよ!」

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