バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

あーちーちーあーちー その3

 現在のコンビニおもてなしでも、氷菓といいますか冷たいスイーツを少し扱っています。
 果物の果汁と果肉を凍らせたシャーベットです。
 最近の暑さのせいで、これが飛ぶように売れていまして、ヤルメキスとケロリンもケーキや大福などのスイーツ作成作業の合間に、これをせっせと量産してくれています。
 ちなみに本店では太陽光発電システムのおかげでミキサーが使えますので、それをフル稼働しています。

 で、そんな2人に新たにお願いしようと思っているのが、アイスクリームです。
 この世界に飛ばされてきた時に、お店の在庫として残っていたアイスはすぐに完売してしまっていて今はまったく残っていませんが、材料さえあれば作成することは可能なわけです。
 
 僕が今回作成しようと思っているのはバニラアイスです。
 これですと、牛乳・砂糖・卵・バニラエッセンスがあれば作成可能なわけですが……

 牛乳と卵は、カウドンとクッカドウゥドルを放牧しているララコンベからすでに定期的に仕入れていますので問題はありません。
 砂糖とバニラエッセンスは、プラントの木で増産していますのでこちらも大丈夫なわけです。

「これでばにらあいす? なるものを作るのでごじゃりまするか?」
「どんなのができるでケロ?」
 材料を前にして、ヤルメキスとケロリンは2人とも目を丸くしています。
 そりゃそうですよね、はじめて作るわけですから。
「じゃあ、まずは僕はやってみせるから」
 僕はそう言って作業をはじめました。

 まずカウドン乳・砂糖・溶いた卵を鍋に入れて魔導コンロ弱火にかけて、沸騰しないように混ぜ続けます。
 とろみがついたら火から降ろしてバニラエッセンスを加えます。
 これを販売用に準備しているカップにいれて、地下冷蔵室で頑張ってくれているシオンガンタとユキメノームにお願いして冷凍してもらいます。
 カップは、シャーベットをいれるのに使用している物を使います。

 で、待つこと1分

 シオンガンタ達がとても頑張ってくれたもんですから、あっという間に完成しました。
 出来上がったバニラアイスを、早速ヤルメキスとケロリン、それに頑張ってくれたシオンガンタとユキメノームにも試食してもらいました。
 すると、ヤルメキスとケロリンは
「これは甘いでごじゃりまする!」
「しかも、すごく甘いケロ!」
 2人して顔を見舞わせながら感動しています。
 ユキメノームも嬉しそうに食べていたのですが……なぜかシオンガンタだけ食べようとしません。
「シオンガンタ、いいんだよ食べても」
 僕がそう言うと、シオンガンタは
「……パラナミオちゃんが来たら、食べてもらいます」
 そう言いました。
 
 そういえば、最近のパラナミオは学校から帰ったらまずこの冷蔵室に入って、キンキンに体を冷やしているんですよね。
 その時、シオンガンタと仲良く話をしているとパラナミオからも聞いていますので、多分、その時に食べてもらおうと思ってくれているのでしょう。
 シオンガンタには、まだたくさん作るからと言ったのですが、
「パラナミオちゃんが帰って来たら一緒に……」
 と言って聞いてくれませんでした。
 まぁ、とりあえずパラナミオが帰ったら一緒堪能してもらおうと思います、はい。

◇◇

 先ほどの僕のお手本を1回見ただけで、作成の仕方をほぼ覚えてくれていたヤルメキスとケロリンは、早速バニラアイスの作成を開始しました。
 もともとお菓子作りが上手な2人ですので、手際よく作業を進めています。
 この分ですと、あとは任せていても大丈夫な感じですね。

 そこで僕は次の準備に入りました。
 これは、ちょっと道具が必要です。
 コンビニおもてなしの倉庫に移動した僕は、その中からある道具を引っ張り出しました。
 大きな箱に入っていたそれは、手回し式のかき氷機です。
 大きな氷の塊をセットして、横のハンドルを回すとかき氷が出てくる、あれです。

 これを使って、かき氷を店頭販売しようと思っているんです。
 かけるシロップは、イルチーゴやレーモンなど、いつもシャーベットの材料として使用している果物を贅沢に使用します。
 カウドン乳を使って練乳も作成して、かけられるようにしようと思っています。

 氷は、またまたシオンガンタ達のいる本店の地下冷蔵冷凍庫で作成してもらいます。

 外が暑いため、シオンガンタ達にも少し冷凍能力を多めに使ってもらっていますので、みんなに疲れが出ないように早めに交代しながら対応してもらっています。
 イエンティやチルチルーノ、ユキーゴンといった冷属性の使い魔達に参加してもらっています。
 みんな妙に張り切っていたのですが、
「「「パラナミオちゃん、来てくれますよね?」」」
 と、口を揃えて言ってまして……みんな、どうもパラナミオと会えるのが楽しみで仕方ないみたいなのですが、パラナミオってばどんだけ冷蔵室に入り浸っているんでしょうね、パラナミオってば。
◇◇

 そんなわけで、準備も滞りなく進んでいきました。
 そこで、僕はまず本店と5号店で試験販売をしてみることにしました。
 本店はブリリアンに任せて、僕は5号店の準備をしていきました。
 かき氷器を店の前に設置しまして、『氷』の旗をぶら下げていきます。
 ここの担当は、試食配布のスペシャリスト、ルービアスにお願いしようと思ったのですが、
「店長……に、日中の暑さは無理っぽいです~」
 外に出たルービアスは、体中から汗なのかウナギ特有の体液なのか判断つきかねる液体を大量に放出しながら一瞬でばったり倒れてしまいまして……

 そんなルービアスを涼しい店内に退避させまして、
「ここはウチの出番やね!」
 代わりに、5号店の出店担当ジナバレアにバトンタッチしてもらいました。
 ちなみに今日のジナバレアは、白地に『猛暑』と手書きしたシャツを着ているのですが……よくみたら、下半身にはビキニの下を着用しているのですが、シャツの下はどうもノーブラなようです。
 結構豊満なバストを誇っているジナバレアなのですが、作業を続けていくと汗をかいて、徐々にシャツが透けていって、そこをお客さん~主に男性客~達が凝視して……
「ジナバレア」
「はいな?」
「ちゃんとビキニの上も着用してください」
「え~? ええやん別に、減るもんやないしぃ」
 ジナバレアはそう言ってケタケタ笑っていましたけど、しっかりビキニの上も着用したうえで販売を行ってもらいました、はい。

 で、そんなジナバレアがですね、麦わら帽子を被って
「はいはいかき氷でっせ~、涼しいでっせ~、甘いでっせ~、バニラアイスもありまっせ~」
 と、声を上げながら販売を行っていったところ、あっという間にすごい数の人だかりが出来ました。
 お客さん達は、目の前で出来ていくかき氷を見ながら
「ほ~、見るだけでも涼しくなるねぇ」
 そんな声をあげておられたのですが、これを手に取り、口にすると
「うわぁ、冷たい!」
「この暑い日には最高だねぇ」
 と、嬉しそうに歓声をあげられていました。
 その声がさらにお客さんを呼びまして、試食販売は大盛況でした。
 かき氷と一緒に販売していたバニラアイスも大好評でした。
「冷たくて甘い、なんかこれ、くせになるおいしさね」
 と、特に女性のお客さん達に大好評でした。

 途中、本店の様子を見に行ったのですが、こちらも試食の屋台が大盛況になっていました。
 
 この分だと、全店で販売しても問題なさそうですね。
 これは、早急に増産の計画を立てないと……

 そんなことを思いながら、新しい氷を準備しに本店の地下冷蔵室におりますと、
「このバニラアイス美味しいですね」
「うん、美味しい」
 そんな会話を交わしながら仲良くバニラアイスを食べているパラナミオとシオンガンタ達の姿がありました。
 シオンガンタをはじめとした冷属性の使い魔のみなさんは、パラナミオと一緒にバニラアイスを食べながら満面の笑みを浮かべていました。
 なんか、ちょっと微笑ましい光景ではあるのですが……みなさん嬉しいからでしょうか、いつもよりいっぱい冷やしてくれている気が……あ、あれ、なんか僕の体が、妙に強ばって……

しおり