バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

めでたい? その1

 テトテ集落に魔法使い集落の皆さんがお引っ越しし始めて少し立ちました。
 魔法使いの皆さんの中には使い魔を連れてお引っ越ししてこられた方も多いものですから、テトテ集落が一気に賑やかになった感じです。
 何より、魔法使いの皆さんとテトテ集落の男性の方が結ばれた結果なわけですので、集落中がなんといいますか祝福ムードで包まれている、そんな感じです。
 先日、定期訪問をした際にも、魔法使いの皆さんが魔法で花火をうちあげて歓迎してくださったりと、毎回過剰にもてなしてくださっていたテトテ集落の皆さんの歓迎ぶりにまで影響が出始めている次第です。
 とはいえ、テトテ集落の皆さんが元気になるのは、僕としても嬉しい限りです。

 テトテ集落の一番近くにあるのが辺境都市ガタコンベなわけなんですけど、以前はテトテ集落で一番若いリンボアさんが集落を代表して数日かけて、このガタコンベに買い出しにこられていたんです。
 で、コンビニおもてなしを気に入ってくださってご利用くださっていることに気が付いた僕が、集落まで定期的に商品を配達しますよ、と申し出て今にいたるわけです。
 荷物をお届けし始めたころは、テトテ集落は元気のない、おもいっきり寂れた集落でした。
 自分達が食べる最低限の野菜だけ作って細々と暮らしておられた感じだったんです。

 それが

 僕がパラナミオ達を連れていった。
 ↓
 集落の皆さん、子供と接することが出来てうれしい
 ↓
 僕達に野菜や果物を持って帰ってほしいと思い、農作業などに気合いを入れられた
 ↓
 ついでに僕達が来やすいように道も綺麗にしよう
 ↓
 ついでに集落も綺麗に作りなおそう
 ↓
 おいおいみんな、しょぼくれてる暇などないぞ!

 ……と、まぁ、こんな感じでどんどん集落に活気が満ちあふれていきまして、そして今に至るわけです。
 何はともあれ、この調子でどんどん元気になっていってほしいな、と思っている次第です。

◇◇

 そんなテトテ集落で、ちょっとした出来事が起きています。
 テトテ集落へ移住した魔法使いの方々の中には、コンビニおもてなしに自作した魔法薬を卸してくれていた方々もおられました。
 で、その方々がですね
「あの……魔法薬をテトテ集落で私達が販売してもよろしいでしょうか?」
 そう申し出てこられたんです。

 で、スアも交えて相談した結果、魔法薬のチェックは今まで通りスアが行い、そのチェックでOKが出た商品を集落で販売することになりました。

 魔法使いの皆さんも、かなり魔法薬の精製技術が進歩なさっていますので、スアも最初は
「……もう私がチェックしなくてもいいかも」
 そう言っていたのですが、それを聞いた魔法使いの皆さんは
「な、な、な、何をおっしゃいます!」
「スア様のチェックは是非ともお願いしたいです!」
「私達の技量を見ていただきたく……」
 そう、強く申し出てこられたもんですから、この形に落ち着いたわけなんです。
 どうも魔法使いの皆さん的には
『憧れの伝説の魔法使いのスア様に自分の作った魔法薬をチェックしてもらえる』
 というのがこの上ないやる気と喜びになっておられるようなんですよね。
 
 これを受けて、テトテ集落に移住なさった魔法使いの皆さんは
『テトテ集落魔法使いのお茶会倶楽部』
 という魔法使いの商店街組合的な組織を作られまして、倶楽部のみんなで魔法薬のお店を運営していくことにされました。
 お店の名前は『テトテ集落魔法使いのお店』と、シンプルなものになっています。
 スアは、このお店の名誉顧問に就任……といいますか、テトテ集落の魔法使いの皆さん、並びにその旦那さん達に拝み倒されて渋々就任させられた次第です。

 で、このテトテ集落魔法使いのお店では、魔法使いの皆さんが作成してスアのチェックを受けた魔法薬や、魔石、薬草なんかを販売することになっています。
 ちなみに、テトテ集落の長のネンドロさんによりますと、
「このテトテ集落に、小売りのお店が出来るなんて、何十年ぶりですかニャあ」
 と、嬉しそうに言われていました。

 そんな中……
 テトテ集落の魔法使いの皆さんから持ち込まれる魔法薬をチェックしながら、スアが眉をしかめていたんです。
「スア、どうかしたのかい?」
「……魔法薬の種類がね、すごく偏ってる、の……」
「偏ってる?」
「……うん……なんていうか……精力増強薬とか……健康増進薬とか……」
 スアの言葉を聞きながら、僕はとりあえず苦笑することしか出来ませんでした。
 これってつまり、夜の……あ、いえ、これ以上は突っ込まないことにします。

◇◇

 テトテ集落が賑やかになっている中、僕も負けないように今日もコンビニおもてなし5号店の営業に精を出しています。

 コンビニおもてなし5号店はすっかりナカンコンベになじんだ感じです。
 定期魔道船の発着タワーも出来たものですから、ナカンコンベの全住人の皆様が
「あぁ、あの魔導船が止まるお店ね」
 といった具合に覚えてくださっています。
 最初の頃は、お客さんが押し寄せてくると僕とシャルンエッセンス以外の店員のみんなは右往左往することが多かったんですけど、最近はそんなことも少なくなってきたといいますか、ナカンコンベで新しく雇用したみんなもすっかり逞しくなった感じです。
「この調子で頑張っていかないとな」
 僕は、店内を見回しながら気合いを入れ直していました。

 その時でした。
「あの、店長様、ちょっとよろしいですか?」
 転移ドアの方からそんな声が聞こえてきました。
 僕が振り返ると、そこには魔王ビナスさんの姿がありました。

 ガタコンベにあるコンビニおもてなし本店で、本店から4号店までの各店のお弁当などの作成をほぼ一人で担ってくださっている大変頼もしいお方です。
 ……っていいますか、魔王の力をコンビニのお弁当作成に使ってもらってて恐縮しきりなんですけどね。

「あれ? 魔王ビナスさん、どうかされました?」
「えぇ、少し……」
 そう言いながら魔王ビナスさんは嬉しそうに微笑まれていました。
 いつものように着物風の衣装に身を包んでおられる魔王ビナスさんは、僕の前に歩み寄ってくると、
「実は私……このたび内縁の旦那様の子供を身ごもりまして……」
 そう言うと、魔王ビナスさんはポッと頬を赤く染められました。
 その言葉を聞いた僕は、満面に笑みを浮かべました。
「うわぁ、よかったですねぇ、おめでとうございます!」
 僕がお祝いの言葉を述べていると、店内にいた他の店員のみんなも気付いたらしく、
「おめでとうございます!」
「よかったですねぇ」
 口々にお祝いの言葉を述べながら魔王ビナスさんを取り囲んでいきました。
 みんなに祝福されながら魔王ビナスさんは、
「皆様ありがとうございます。本当にありがとうございます」
 頬を赤く染めながら何度も何度もお礼を言いながら頭を下げておられました。
 そんな中、魔王ビナスさんは改めて僕へ視線を向けると、
「……つきましては、私、しばらく産休(おやすみ)をいただきたいと思いまして……」
 頬を赤くそめたまま、そう言われました。

 その言葉を聞いた僕は……笑顔のまま血の気が引いていくのを感じていました。

◇◇

 先ほども申し上げましたが……魔王ビナスさんは。本店から4号店までの4店舗のお弁当作成を一手に担ってくださっています。
 5号店のお弁当が、僕とピアーグ食堂で作成しています。
 5号店は人口が多いナカンコンベにあるもんですから、本店から4号店用に作成しているお弁当とほぼ同数のお弁当を毎日作成しています。

 つまりですね……ここで魔王ビナスさんが産休で抜けるということは、本店から4号店用のお弁当を作成出来る人が、新たに必要になるってことです。
 僕が回ろうにも、5号店の弁当作成をピアーグのピラミと一緒にやっているので現状手一杯なわけです……

 僕は、魔王ビナスさんに拍手を送りながら「ど、どうやってこの難局を乗り切ろう」と、必死に考えを巡らせていました。

しおり