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25章 労働基準法違反

 1日で1000人ほどの治療を行い、全ての怪我を治癒することができた。

 死者を蘇らせてほしいという依頼があったものの、それについては丁重にお断りした。アカネの魔法では、死人を復活させることはできない。

 治療時間は一二時間にも及んだ。仕事時間もさることながら、一秒たりとも休憩を取ることはできなかった。労働基準法に完全に違反した労働が、こちらの世界においても繰り返されることとなった。ある意味では、一日に二〇時間以上勤務させられた会社よりもひどい。あの会社であっても、一時間くらいは休憩する時間があった。

 アカネを悲しくさせたのが、誰も「休憩を取りませんか」といってくれなかったこと。自分の
病気を治療するのに必死で、治療をしている人間への思いやりが欠けていた。

 イベントが終了すると、マツリからねぎらいの言葉をかけられた。

「アカネさん。本日はありがとうございました」

 体力的な疲れはないものの、一日中働かされた疲労感は現実世界と似たようなものだった。ゆったりとしたセカンドライフを望んでいただけに、メンタル的な疲れが出てしまった。

「報酬を持ってきました。仕事の紹介料として、報酬額の1パーセントもしくは1万ゴールドの少ない方をいただきます」

 マツリは紹介料で生計を立てていたのか。仕事をしている様子がなかったので、どのように生活をしているのかと思っていた。

「ありがとうございます」

 多くの人間を治療したにもかかわらず、大した金額ではなかった。アカネは仕事をしたというより、ボランティアをさせられた気分になってしまった。

「アカネさん。魔法ってすごいですね。心から感動してしまいました」

 精神的な疲労が大きいので、さっさと切り上げてしまいたいところ。家に帰って、スローライフを満喫したい。

「疲れてしまったので、切り上げてもいいですか」

「はい。ゆっくりと休んでください。アカネさん、今日はありがとうございました」

 家に帰ったら、「セカンド牛+++++」を食べようかな。あれを食べることで、生きる活力を得られる。

 お風呂にも忘れずに入ろう。お湯につかることで、心の芯を温めることができる。 

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