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2月22日

2月18日に、幽鬼の企画の”幽鬼の怪談日和”のYouTube、TikTok、ニコニコ動画での生配信の撮影のために七ツ釜で行ったことが、結果この地で眠る望月樹の逆鱗に触れ、五月雨や幽鬼、そして吉井が犠牲になっていく現場を目の当たりにした心霊現象研究家の鬼塚彰は、いつ自分が樹に呪い殺されないだろうかと怯えながら毎日を過ごしていた。

翌日2月19日からは、七ツ釜で起きた集団自殺の件についてのコメンテーターとして報道のニュース番組に引っ張りだこの忙しい日々を送ることになり、その多忙さから次第に幽鬼や五月雨そして吉井への亡くなって悲しい気持ちは少しずつだが和らいでいくようになっていった。

「心霊現象研究家の俺に仕事のオファーが沢山あるおかげで、俺の心の傷が完全に癒えたわけではないが、他に専念させてくれるものがあるから気持ちの切り替えが出来る。有難いと思いながら与えられた仕事をやり切らないといけない。」

鬼塚の中で少しずつだが自身が取り戻しつつあった。

そんな2月21日のお昼13時過ぎの事だった。
次のニュース番組に出演するまでに、お昼休憩をとるために、控室にあらかじめ用意されてあった弁当を食べ始めたときにLINE電話がかかってきた。

「星弥ってこれはもしや・・・!」

かかってきたLINE電話にすぐ鬼塚は電話に出た。

「もしもし、鬼塚です。」

そう話すと、電話の相手はあの望月樹の孫の饗庭星弥だった。

「饗庭さん、俺今凄く猫の手を借りたいぐらいに忙しい毎日を送っているよ。」

鬼塚がそう話すと饗庭はこう答えた。

「いつもTVerで視聴しているよ。警官の俺よりも忙しそうに過ごしているんで、さぞ望月樹による呪いのことも忘れてはいないかと思い電話したよ。」

饗庭がそう話すと鬼塚は笑いながら答えた。

「忙しいって、ぶっちゃけた話今だけの話だよ。集団自殺の話題からまた次の事件が発生したら今度はそっちの話題に切り替わって俺の出番はもうなくなるだろうから忙しいのは今だけだよ。今のうちに稼げることはしっかりと稼いで貯えないとね!」と話すと、饗庭は「忙しい時とそうじゃないときの波がある仕事は大変だね。」といって気遣ってくれた。

鬼塚は饗庭なりの優しい言葉に「ありがとう。忙しくないときは、俺もYouTubeやニコニコ動画、さらにはInstagramのストーリーズやTikTokで動画を上げたりして少しでも広告収入を得るための仕事をしているんだ。」と語りだした。

2人は笑いながら談笑すると、饗庭が「本題にうつりたい。」と切り出した。

鬼塚が「本題ってまさか、あの福冨克哉が首つり自殺を図るまでに、染澤潤一郎と望月裕の事件を記録したとされる8mmフィルムの行方なのか?」と聞き出すと、饗庭は「ああそうだ。明日非番だからね。金属探知機もレンタルで借りれることが出来たから、明日虹の松原に行って見て、福冨が埋めたであろう場所を特定して見せるよ。事件が大々的に報道されるまでは俺と鬼塚さんの二人で行おうねと約束したけど、今の鬼塚さんを見ていたら何だかとても大変そうだし、明日は俺一人で探すよ。結果がどうであれ、明日は必ず連絡をするよ。」と言ってくれた。

鬼塚は饗庭に「ありがとう。本当に一人で大丈夫なのか?」と聞くと、饗庭からは「俺からしたら、逆に鬼塚さんのほうが心配だよ。樹が弱みに付け込み祟られないか俺は心配しているよ。今の心情だと、次のターゲットとして狙われやすいからね。」と話すと、鬼塚は「心配をしてくれてありがとう。俺も出来る限り、時間が空いていれば必ず明日虹の松原に出向いて、饗庭さんと共に生前の福冨さんが隠した8mmフィルムの行方を追いたい。」と答えた。

饗庭は「無理しなくていいよ。出来る限りで良いし、こっちだって独自で行っていることだからね。また明日来れそうになった時は電話必ずしてね。お疲れ様。」といって電話を切った。

電話を終えた鬼塚は、14時から始まる報道番組のゲストコメンテーターとしての仕事の生放送を終え、さらに夕方17時からのニュース番組に出演と朝から夕方までニュース番組に出演してばかりの日々をやったと終えたのは19時を回った頃だった。

鬼塚が福岡の家に帰ってきたのは20時を回った頃だった。

「はあ、やっと終わった。そして明日もまた忙しい日だ。」

そう思いながら途中で買ってきた缶ビールを手に取り飲み始めた。

「思えば、福冨克哉ってどんな人物だったんだろ?」

ふと気になり、持っているMacのノートパソコンで”福冨克哉”と調べてみることにした。すると情報量は少ないながら、かつて存在したソメザワ・マテリアルの副社長にまで上り詰めた盗難・万引きの前科3犯の過去を持つ人としては紹介がされている。これは恐らくソメザワ・マテリアルの、染澤潤一郎の事件を伝えていく中で福冨克哉のことも伝えられている。

その記事によれば、福冨克哉は1936年9月27日生まれで天秤座のB型とあるな。記事によると、福冨の父親も潤一郎のと同様に戦争に出兵し、戦死してしまったらしい。息子を女手一つで育てようと朝夜通して働き続けてきた結果、息子の克哉の面倒を見切れなくなった一方、戦争が終わったことを機に益々勉強をすることよりも外で遊ぶことに対して強い関心を示すようになった克哉は、中学校の卒業を機に一度は就職をするが、金目当てに家の近くに停めてあったミゼットに目をつけ盗み出すと中古自動車に売りに出し現金を手に入れるが、その後盗難による被害届が出されたことにより、また捜査に出た警察が中古自動車を当たったところ福冨が売りに出したものだと判明し、一度目の逮捕となる。出所後、なかなか就職先が見つからず、再び盗難に手を染める。商店街の中にある貴金属店に目を付けた福冨は、入り込むと金目になりそうなものに目星をつけ、閉店と共に忍び込み、お目当ての貴金属の商品を盗み出そうと店の外を出ようとした時に、店の店主に見つかりすぐ通報され二度目の逮捕となる。出所した後、真面目に働こうと思い就職先を見つけようと頑張ってみるがなかなか決まらず、また食べるものに非常に困り始めたこともあってスーパーの中に入っていくと盗めそうな缶詰などを次々と自分の持っていた鞄の中に怪しまれないように詰め込んでいる様子を店員に見られ、通報を受け三度目の逮捕となる。三回目の刑務所の出所となったときに、人手不足で困っているという理由で職業案内で紹介されたソメザワ・マテリアルの染澤潤一郎との出会いで運命が変わるとそれまでの刑務所での勤務経験で培ってきた技術を糧に、ソメザワ・マテリアルでめきめきと新商品の開発に力を注ぐようになっていく。それがやがて主力商品となっていくにつれ、福冨は出世していき、ついにはNo.2の立場にまで上り詰めた。しかし高度経済成長期の終焉と共に会社が経営危機に陥ると、相次いで自分たちの会社が開発した技術を模倣したような商品が世に出始めると、さらに進化した商品が売れ始めるようになっていき、遅れないように常に最先端の技術を誇る企業として新商品を開発してきたが、自分たちの会社で発表するよりも先に出回ることが多くなっていき、次第に経営が悪化していく。歯止めを掛けたいために、福冨は営業活動に奔走をし続けてきたが前科3犯であることを理由にいじめを受けたり、精神的にも肉体的にも追い詰められてゆくと、染澤潤一郎の無理心中事件を機にソメザワ・マテリアルが倒産すると、潤一郎の戦友でありまた親友でもあった望月裕のモチヅキ・ドリーム・ファクトリーに入り、会社の立て直しに望月樹と共に各地を回り続けるが結果は変わらなかった。モチヅキ・ドリーム・ファクトリーの倒産と共に、理解者も行き場を失った福冨克哉は絶望視し、1975年1月1日の午後21時頃に虹の松原へ出向き、首吊り自殺を図り死亡した。まだ38歳の若さだった。福冨が自殺を図った後は、都市伝説として”かつて福冨が遺してきた遺物がこの地に隠されている”或いは”社会を怨みながら死んだ福冨の御霊が首吊り自殺を誘発している”などの噂が出回ったことで自殺者が相次ぎ、この地は観音の滝や七ツ釜、厳木ダムと同様に唐津市内に存在する自殺の名所として知られる結果となった。

記事を一通り読んだ鬼塚は「一体誰がここまで調べたんだかよくわからないが、こうやって物好きな人達によって都市伝説というのは生まれるんだろうな。」と読みながら考え始めていた。

「思えば都市伝説って定義って何なんだろう。杉沢村のように謎の鳥居があるだけでそれを見た人物が何でこの地に鳥居が立っているのかを詳しく詮索をしないまま、地図には載らない村がかつてこの地には存在していたという話が噂好きによる人物によって出回りそれがいつしかメディアでも登場されるようになっていった。犬鳴村も犬鳴峠での凄惨なリンチ事件があって、噂されるようになったのもあるから、良くも悪くも人間というのは結局は噂が好きなだけなのかもね。」

そう思い、読んでいた”世界禁断の地”というタイトルの本を読みだした。

「北センチネル島。なかなか興味深い。ひとたび上陸してしまえば敵とみなされ弓矢で撃ち殺されてしまう。そりゃあ禁断の地であることは間違いない。」

色々なページをめくっていくと、世界各国には色々な事情がある。

そう思いながら、片手にスルメイカをかじり始めた。

夜の24時を回った頃だった。もうそろそろ眠たくなってきたなあと思った鬼塚がベッドに入り、眠りについた。

しかし、なかなか寝付けられず、何度も目を瞑っては目を覚まし喉が渇いたので水を飲んではまたベンドに寝に入ってばかりを繰り返ししていた。

「どうしてだろう、涼しいぐらいの温度なのに、俺おかしい。」

ふと思い、酒に酔っている状態ではあったが、自分の部屋に誰かいないか霊視を行った。すると東向きの窓にカーテン越しに誰かに睨まれるようなそんな視線を感じた。

鬼塚は「お前は誰だ!?正体を現せ!!」と一喝をすると、その人物はいたことがばれたと思い一瞬で消えてしまった。鬼塚は「あれは一体何だったんだ。樹なら地縛霊だ、七ツ釜以外の場所にはまず現れない。樹ではない。」と自分の中で言い聞かせ、再び目を閉じた。

「樹は怨霊だから憑いてくるよ。フフフ。」

どこからか男の子の声がすると目の前にまたしても睨まれるような視線を感じ目が覚めた。「樹め!俺はお前の呪いに絶対に屈したりしない!かかってこい!俺はいつでも樹に勝ってみせる!!」と再び東向きの窓のほうを向いて鬼塚が語り掛けると、あの鋭い視線や男の子の声は聞こえなくなっていた。

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