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永遠に続く呪いの輪廻【完結】

9月13日 月曜の朝の事だった。

朝7時に起床した木藤は身支度を終え、妻が作ってくれた朝御飯を食べ、8時過ぎには会社に向けて出発をした。

会社に向かう途中で昼御飯のパンを買いにコンビニへと立ち寄った。

「今日はおにぎりが10円引きで安いな!よし、シーチキンマヨネーズに味噌汁になめこにでもしようかな。」

木藤がおにぎりのシーチキンマヨネーズを手に取ると、味噌汁のコーナーへと行きなめこを取ると、レジの前へ並び始めた。その時だった。大嶌から電話がかかってきたので、お会計を済ませた後に大嶌へ再度折り返しの連絡をした。

「社長、どうしたんですか!?何かあったんですか!?」

木藤の問いに大嶌が答えた。

「木藤君、驚かないで聞いてくれ。山嵜君が、七ツ釜で遺体となって発見された。」

大嶌の話を聞いて思わず木藤はショックが大きすぎて言葉を失った。

そんな木藤に大嶌は続けて話をする。

「山嵜君はわしらと旧染澤邸の広場の現場工事を後にした際に、恐らくだがこの七ツ釜に足を運んだと思われる。柵がないところでもあったから、あくまでも憶測にしか過ぎないが、誤って山嵜が海のほうへ落ちたんじゃないかと思う。」

木藤に説明した大嶌は電話を切ろうとした。

だが、木藤は納得がいかなかった。

「待ってください。あいつだって、育ち盛りの子供が二人いるんですよ?子供たちの結婚や孫の誕生を見届けずに死ぬなんてことは俺は絶対にありえないと思います。仮に自殺だったとしても自殺をしなければいけない理由が分かりません。それでも社長は山嵜の死を”あーはいはい、そうですか”という感じで右から左へと聞き流すんですか?おかしいですよ!きっと何か、何かあるはずです。僕は納得できません!」

木藤は大嶌に話すと勢いで電話を切った。

会話のやり取りを聞いていた20代らしき長髪の女性の客が木藤に声をかけた。

「海ってまさか七ツ釜の事ですか?」

聞かれた木藤は「すみませんね。お買い物中に大きな声を出してしまっていたようなら申し訳ありません。」と女性に対して話すとある指摘を受けた。

「七ツ釜には望月樹という人が、40年以上も前にあの地で自殺を図った人がいてね。またその樹の遺体が未だなお引き上げられていないことから、樹の都市伝説が存在するぐらいよ。七ツ釜には樹の御霊が彷徨っており、海を眺めてぼんやりとしていたら、海から白くて長い手が伸びてくるとそのまま海へ引きずり込まれるという話があるのよ。」

話を聞いた木藤が「貴重な話を聞かせてもらってありがとうございました。」といって一礼をすると、女性はにこやかに微笑み立ち去った。

車に戻った木藤は会社に向けて出発をした。

車を運転しながら木藤は「さっきの女性って、不思議な女性だったな。都市伝説なんて物騒なものを知っていて、まあそんなことばかり知っている人も世の中にはいるってことだよな。」

会社の事務所に到着した木藤は、社長のデスクで頭を抱えていた大嶌に声をかけた。


「社長、聞きましたよ。山嵜が事故死したんですよね。」

大嶌が木藤に向かってこう話した。

「木藤君、わしはもう、潤一郎の呪いのことばかり考えていた。だけど七ツ釜じゃ潤一郎の範疇外になるから、潤一郎の呪いや祟りではない。単なる事故だろう。」

大嶌がそう話すと、木藤は先程の女性が話していたことを説明した。

「さっき、コンビニで買い物をしていたんですよ。僕と社長の会話のやり取りが聞こえたみたいで女性から声を掛けられたんです。」

木藤が大嶌に話すと、女性が話していたことを振り返った。


「七ツ釜には望月樹という人が、40年以上も前にあの地で自殺を図った人がいてね。またその樹の遺体が未だなお引き上げられていないことから、樹の都市伝説が存在するぐらいよ。七ツ釜には樹の御霊が彷徨っており、海を眺めてぼんやりとしていたら、海から白くて長い手が伸びてくるとそのまま海へ引きずり込まれるという話があるのよ。」


その話を聞いた大嶌は木藤に「望月樹まさか、望月裕の実弟!?」と話すとすぐデスクのノートパソコンを開き、Yahoo!で検索をし始めた。

「望月樹 1948年12月3日生まれ モチヅキ・ドリーム・ファクトリーの創業者の望月裕の実弟である。中学の卒業と同時に、兄の会社に就職し、兄を支える一人として会社の発展に力を注いだ。1974年にモチヅキ・ドリーム・ファクトリーの経営赤字を補填するための借金が膨らみに膨らむと利息だけで返せない状態にまで陥り、12月28日にモチヅキ・ドリーム・ファクトリーは倒産した。倒産と同時に望月裕は精神的にも肉体的にも追い込まれ、自宅で妻の絹子夫人を絞殺した後に我が子を次々と刺殺し、家中にガソリンを撒きライターで火をつけ放火をすると、観音の滝に身を投じて自殺を図った。兄亡き後の樹は兄の事件のこともあり、再就職先もなかなか見つからず、また周囲の人間から気味悪がられ嫌がらせを受ける毎日だったという。そんな樹は世の中に生きていくことに対して嫌気がさしてきたのだろうか、1975年3月31日に七ツ釜に自殺を図り死亡した。自殺を図った場所からは靴と遺書、そして身元証明書となる運転免許証が見つかったことで望月樹がこの地で飛び込み自殺を図ったことがすぐに判明したが、遺体だけがまだ見つかっておらず、今もあの地で彷徨っていることが憶測に憶測を呼んでいる。都市伝説では、樹はあの付近の別の場所で死んだのに、七ツ釜で死んだかのように偽装して現れるとか、あるいは樹の遺体は沖に流されてしまったので国内で引き上げることは困難だとする説のいずれかがある。」

大嶌がそう話すと木藤はこう語り始めた。

「七ツ釜ってこれ以外にも恐怖のエピソードがありますからね。何せ唐津市内に限れば、虹の松原に七ツ釜、そして厳木ダムと観音の滝、自殺の名所とされる場所が色々ありますからね。確か兄の裕が観音の滝に身を投じて、遺体が引き上げられたときは遺体の損傷があまりにも激しさ所身元の判明に時間がかかったとされていますからね、誰もが知る唐津にまつわる怖い話の一つですよ。観音の滝では水難事故も多発していますから、遊泳は禁止されていますね。遊んだ人の大方があの滝の激流に流されてお亡くなりになっているところでもありますからね。」

その話を聞いた大嶌は「朝からそんな怖い話など聞きたくない。」とばっさり切り捨てた。そんな大嶌の姿を見て木藤は「社長って強がっているように見えて案外怖がりなんですね!それじゃ、僕や山嵜に話をしていた”弱みを見せつけないように”って仰られていたのも説明の示しがつかなくなりますよ。」と突っ込まれると、大嶌は「わしは大丈夫だ!どんな化け物が来ようがわしはわしの立場を守り抜く!」と言い切った。そんな社長を見て櫻井は木藤に「ああ言っていて呪われたらこの会社どうなるんでしょうかね?」と聞かれたので木藤は笑いながら「社長は大丈夫だ。」と答えた。

地蔵が壊されてから2日後の9月13日の事だった。
警察から一本の電話がかかり、現場からすべての証拠となるものを採取した結果、誰かしら入ってきたであろう痕跡などは、工事関係者である大嶌や木藤、山嵜、篠原、桑田らの指紋や足跡の痕跡は見つかったが、それ以外の指紋や足跡のみならず、毛髪すら見つからなかったことから「説明不能」という答えが返ってきた。

警察からの説明を受けた大嶌は納得がいかなかった。

「”説明不能”ですと!?一体誰がお地蔵さんを破壊するんだ!?幽霊の仕業だと言いたいのか!?」

大嶌が怒鳴り込むとすぐ他の警察官が担当に変わりこう説明を受けた。

「大嶌さん、我々も出来る限り調べてみましたが、こればかりは警察の範疇では解決が出来ないことだと思われます。信頼のおける霊能力者や或いは霊媒師の方にご相談をされるのが望ましいかと我々は考えます。」

警察からの回答を聞いた大嶌は「わかりました。考えます。」といって電話を切った。その結果を木藤にも伝えたが、木藤は納得がいかんばかりの表情で「霊媒師か霊能力者に相談しましょうってことですか。つまり霊障には警察も関わりたくないってことですよね。」と話し、失笑した。

大嶌は「仕方がない。警察が撤収をしたのだから、あとは反町さんの遺言通りに天空寺さんの和尚を呼んでもらい、あの地を清めてもらうしかない。壊された地蔵も嶌田石材工務店から直ったという連絡があるから、和尚さんの御経に合わせて、直してもらった地蔵を設置に取り掛かることにしよう。」と話し、木藤は納得して「わかりました。その作業には篠原や桑田にも加わってもらいましょう。」と言って話した。


明くる日の9月14日に朝9時過ぎに再び旧染澤邸があった現場に訪れた大嶌と木藤、篠原と桑田の4人は現地に天空寺の和尚と嶌田石材工務店のトラックが来るのを待つことにした。

先に和尚が運転するスズキのアルトワークスが到着した。

「天空寺で住職を務めています、佐野静吏と言います。名刺を持ってきましたのでこれを是非受け取ってください。」と名刺を渡されると、大嶌と木藤がそれぞれ挨拶を交わした後に名刺を渡し始めた。

名刺交換を終えた後に嶌田石材工務店のトラックが入ってくると、早速大嶌と木藤と篠原と桑田、そして嶌田石材工務店のトラックを運転していた守屋栄一の5人で修理をしたばかりの地蔵を軽トラックの荷台から降ろし始めた。

元々あった場所に再び地蔵を設置すると、お供養のための榊を献花台の中に入れて御経が唱えられ始めた。5人はその場で静かに目を瞑り、両手で手を合わせ拝んだ。

御経を読み終えた後、和尚の佐野から衝撃的な言葉を受けるのだった。

「大嶌さん、わたしには除霊が出来る程の強い霊能力を持っているわけではありませんが、この地にはとてつもなく邪悪な者の存在を感じます。わたしの力では微弱すぎてこの邪悪な者を退治出来る程の力は持っていませんので、わたしの知り合いに霊媒師がいるのでご紹介をしましょう。」

言われた大嶌は「邪悪な者の存在って何ですか?かつてここでは弊社社員の鮫島がここで事件を起こしていますが、まさか鮫島のことをいっているのですか?」と聞くと佐野は「いえ、今までに見た事がない邪悪な存在です。わたしもこの仕事柄上、元々霊感はなかったのですが、ありとあらゆる檀家さんの家に御経を唱えてきて、次第に自分の中で霊能力というのが強くなってきたんです。あくまでもわたしがみた姿にはなりますが、黒い靄がかかった人型で、目の部分が真っ赤に染まっています。わたしも人伝から聞いた話ですが、よく殺人現場で見かける霊というのは、赤い靄がかかっているんだそうです。どうして赤いかわかりますか?それは突然命を奪われまだまだこの世でやりたかったことをやり遂げずに命を落とした御霊が犯人に対して激しい怒りの感情をぶつけているんです。ところがここにいるのは黒い靄だったんです。黒い靄程質の悪い霊はいません。この世の中に強い怨恨の感情を抱きながらお亡くなりになったことで、自分たちのいる黄泉の世界に引きずり込んで仲間を増やしていこうとしているから、誘われても攻撃を受けてもご自身の強い意志を守り通さなければ、悪の誘惑に負けてしまうだけです。怨霊、悪霊と言われる地縛霊の一種だとわたしは思います。」と説明をし始めた。

佐野から説明を受けた大嶌は「わかりました。検討しましょう。」といって佐野の乗る車が遠くなるまでを見送った。

全てのやるべき行事が終わったところで、大嶌は木藤に「あとはこの広場を定期的に御祓いをしてもらい、我々で定期的に管理を行っていくことが大事になってくる。」と木藤に話すと、木藤は「この広場の工事に携わっていないが、久間田と仲村、椎名、米原にも公園の管理を行うように言っておきます。女里谷にも退院して会社に戻ってきたら同じ説明を行います。大嶌組にいる作業員全員で行いましょう。」と話すと、大嶌は「わかった。ありがとう。」といって返事をした。

そして何事もなく、一同は会社に戻ってくると、その後は事務作業に追われた。

篠原がパソコンのエクセルで「こんなものを作ってみたんですけど、どうでしょうか。」といって、あの広場の管理する人が誰になるのかの日直表たるものを作り出すと、桑田と木藤、そして大嶌の4人で内容を確認し合った。

大嶌が「わしはこれでいいと思う。」と話すと木藤は「俺はこれでOKだね。」と話し、桑田も続いて「あっ、僕もこの日程ならOKです。」と話した。

日直表を印刷し、プリントアウトをしたものを配り始めると、大嶌は「ここにいない久間田と仲村、椎名と米原にはわしから説明を行う。仕事だといえばやるだろうからこの日程通りであの広場を管理を行うことにしよう。」と力強く宣言すると一同は「はい!」と大きな声で返事をした。

その日の晩のことだった。

木藤が会社帰りにふらっと、望月裕が自決した観音の滝へと向かった。

「山嵜が望月樹による呪いなら、望月裕の呪いも未だに存在していることになる。反町さんが社長宛てに綴っていたYouTubeで幽幽というユーザーがアップロードをした染澤潤一郎のみならず望月裕・樹兄弟の生前の姿を映し出したあの8mmフィルムによる動画の内容の真偽を確かめたい。」

観音の滝へと到着をした木藤が真っ先に向かったのは観音の滝の滝面だった。

森の中へと入っていき、滝面が見渡せられるところへとやってきた木藤は地面に座り込み「ただ川の水が勢いよく流れ落ちているだけの滝だった。自殺を図ったのは間違いないだろうが呪われた場所までのものでもない。」と判断したら、誰もいない森の中なのにガサガサと風がないのに木々が揺れる物音がしてくると、特に気に留めることなくじっと滝の水飛沫を眺めていたら、木藤は背後から複数の誰かの腕に押されるような形でドンと背中を押され滝のほうへと落下してしまった。

物音が聞こえてからあっという間の出来事だった。

悲劇は相次いだ。

大嶌は再び広場へと現れると、あの壊された地蔵の前へと現れしゃがみ込むと手を拝み始めた。

「お地蔵さん、どうか我々を守ってください。宜しくお願いします。」

大嶌がそう話し、お地蔵さんの前にあるお線香立てにお線香を立てると、大嶌以外の人間はいないはずなのに明らかに人が動く足音が聞こえてきたのだ。大嶌はたまらず振り返り、「誰だ!姿を見せろ!」と大きな声を上げても、周囲には誰もいない。

すると目の前に設置されてあった地蔵が大嶌のほうに向かって勢いよく倒れてきた。

地蔵の顔が大嶌の顔面に直撃したのと同時に、倒れたときの頭の打ちどころが悪かったために、その後意識を取り戻すことはなかった。

そして作業員の篠原と桑田、そして久間田と仲村と椎名と米原と事務員の櫻井の7人は会社から近所の焼き鳥屋で一杯ビールを交わした後、唯一ビールを飲んでいなかった椎名のヴェルファイアに乗り、一人一人の家に送りに向かう道中だった。

車は武雄市内に入るため武雄多久線の馬神トンネルに入った時だった。

トンネルに入ろうとする直前のことだった。助手席に座っていた櫻井が椎名に「ねえ、あそこ誰かいなくない?」と酔っ払いながら話すと、椎名は「酔っ払って何言っているんだよ。誰もいないよ!」と話し車の運転をし続けた。ヴェルファイアはトンネルの中に入っていくにつれスピードが落ちない。時速は200Kmにまで達した。必死で速度を落とそうと椎名はブレーキを踏むが効かない。その人影は徐々にヴェルファイアに近づいてきた。

「やばい!目の前に白いワンピースを着た女性が歩いて近づいてきている!このままでは女性を轢いてしまうかもしれない!」

椎名がそう思い、慌ててハンドルを、左側のトンネルの壁にはぶつかりたくないと考え思いっきり右側に切ると対向車線を走る大型のトラックと正面衝突をしてしまった。ヴェルファイアはフロントが激しく大破し、また乗っていた人間の大方が衝撃の強さにシートベルトをしていても前に押し出され、運転をしていた椎名や助手席の櫻井、そして後部座席に座っていた篠原と桑田、久間田と仲村、ヴェルファイアに乗っていた全員が帰らぬ人となった。

白いワンピースを着た女性は何事もなかったかのようにヴェルファイアのほうをみて振り返ると、こう言い放った。

「素敵なロイド眼鏡がお似合いな男性が乗っているわね。男性が独身だったら結婚したいわ。」


一方ではやく会社に戻りたい女里谷は入院先の病院でのリハビリ生活に明け暮れていた。明くる日の9月15日の午後15時過ぎに警察が女里谷の病室に訪れると、会社の仲間たちの訃報を伝え始めた。

警察から「大嶌組は存続しないと思いますので、今後女里谷さんがどうなされるか、新しい会社での再就職先を見つけることも視野に動いてください。」と言われ、女里谷は警察に「わざわざ来てくださって説明もしてくれてお忙しい中、ありがとうございました。でも僕だけが生き残るのは辛すぎます。」と言って嗚咽が出る程泣きじゃくってしまった。警察はそんな女里谷の様子を見て「女里谷さん、辛いのはわかります。でもこれが現実です。今はまだ精神的にも非常にショックだと思いますが、時間の経過とともに徐々に受け入れてくると思います。」と宥めるしかなかった。

警察からの慰めの一言に女里谷の目は涙で真っ赤にした状態で空を見上げ、大きな声を上げて悔しさを露わにした。

「あああああああああああ!!!!!!!」

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