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暴食のペット

 執念というモノがある。絶対者にして全能であるれいには無縁の感情ではあるが、時にその執念は大きな何かを成すことがある。それがどういった影響を及ぼすかは場合に依るだろうが。
 それに変異という現象も存在する。ハードゥスで言えば魔王だろうか。偶発的に起こる現象ではあるが、それを狙って起こそうとする者もこの世には存在する。もっとも、それらも含めてハードゥスではれいの管轄内なので、やろうと思えば偶然や奇跡などと呼ばれるモノまでコントロール可能なのだが。
 だが、そこまで可能である強力な管理者というのは、それなりに経験を積んだ管理者だ。若い管理者はそこまで至れていない者が大半。中にはそこまで出来るのを知らない者まで存在するほど。
「………………ありきたりとはいえ、面白い組み合わせですよね。まぁ、結果は何とも言えませんが」
 とある世界に一人の人物が居た。
 ある日、その者は強大な力に魅入られてしまった。よくある話ではあるが、その者が他とは少し違っていたのは、力を求めはしてもそれは他者に。それも自身で創造した存在にという、管理者の真似事の方に向いてしまったところか。
 その者の執念は凄まじく、また才能も有していた。その結果、生まれたのが星殺しという異名を得ることになった存在。
 その存在は、周囲の力を吸収して無限に強くなるという異能を持っていた。とはいえ、似たような存在は過去にも何度か現れている。そして、中には管理者を殺すまでに至った存在も居る。それをれいが始末したことだってあるほど。
 今回の場合、その異能の力が強すぎたというのが問題なのだろう。なにせ、ただそこに存在するだけで、何もしなくとも無限に周囲から力を奪い続けるのだから。今まで現れた取り込むことで力を得るタイプとは明らかに違った。
 その存在が現れた星は、その異名を得た結果通りに死んだ。管理者を殺さずに星だけを殺してみせたのだが、しかし、通常世界は星一つで構成されている訳ではない。世界によって名称は異なるが、星の外には宇宙が拡がり、そこには無数の星が存在している。それら全てを含めて世界なのだから。
 もっとも、ハードゥスに関してはハードゥスしか存在していない。そして、ハードゥス一つで他の世界と同等以上の大きさなのだ。その大きさがいかに規格外かが分かるというものだろう。
 話を戻すが、星が一つ消滅しても世界への影響は軽微。なのだが、問題は星を壊してもその存在は在り続けたということだろう。そして、あろうことか今度は世界から力を吸収し始める。
 それに焦った管理者は、力を奪われた部分の修復を行うがてら、管理補佐達にその存在の討滅を命じた。だが、結果としてその存在を強化するだけの結果に終わる。近づくだけで力を奪われるというのは、想像以上に厄介ということだろう。
 管理補佐から力を奪ったことで、その存在はより強大になった。もっとも、その存在に意思は存在しない。強力な能力の反面、ただそこに在るだけの存在でしかない。まぁ、それだけでも非常に厄介な能力なのだが。
 結果だけ言えば、その世界は管理者ごと吸収されて消滅した。その後も外の世界の力を吸収しだしたのだが、それは現在も続いている。別に討滅するだけならば現在の創造主でも可能なのだが、それは放置されている。何故かと言えば。
「………………際限なく力を吸収する。力の扱いに困っている元本体にとってはこれ以上ない存在でしょうね。それに、吸収量は私の成長速度と比べても大した量ではないようなので、元本体であれば討滅するのはいつでも出来ると。一応与える餌については配慮しているようですが……」
 というわけで、その存在はれいの元本体のペットとして飼育されているようだった。意思の無い置物なので、近くに何も無ければ害はないというのも都合がよかったのだろう。

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