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第12話(3)密約してみた

「いや~それにしても幸村さんには驚いたなぁ」

「流石に度胆を抜かれたね」

「……自信の表れか、天才の考えることはよく分からん……」

「そうやな……」

「どうしたの、ジュンジュン? ミーティングするんでしょ?」

「いや、なんでこの二人もおんねん!」

 隼子が海江田たちを指差す。

「そんな水臭いこと言わないでよ」

「一応対戦相手やろ!」

「細かいことは言いっこなし……」

「そうはいかんやろ!」

 サムズアップする水狩田に隼子が吠える。海江田が諭すように話す。

「まあまあ、一つ提案があるのよ」

「提案?」

「そうそう、短刀直入に言うけど、明日、手を組まない?」

「はあっ⁉」

「成程、理には適っているね~」

「いやいや、何がどう適ってんねん!」

 閃が片手を挙げて隼子を制する。

「ジュンジュン、ここは状況を整理しよう。明日の試合形式はバトルロイヤルが採用されることになった。そして、もしもあの博多のチームに負けたら全国大会の出場を辞退せざるを得ない雰囲気になってしまった。単なるエキシビジョンマッチのはずが所謂“絶対に負けられない戦い”になったんだ」

「雰囲気って、そんなの無視したらええやろ」

 閃が人差し指を立てて、左右に振る。

「あの幸村嬢の性格からして、そんな半端な行為を許すとは到底思えない。あの若さで『ツインテールの鬼神』との異名で呼ばれているパイロットだよ?」

「どんな異名やねん……」

「ちなみに『ツインテール×侍=最強』、『戦国の世から甦りしツインテール』って異名もあるね、あんまり定着してないようだけど」

「ちょっと長いし、そもそも戦国時代にツインテールおらんやろ!」

「とにかくだ……我々はリスクを減らす必要があるんだよ。そういうことでしょ?」

 閃が腕を組んで、海江田たちに問う。

「そういうこと、話が早くて助かるよ。全国大会出場辞退なんてことになったらスポンサーとの契約も台無しになるからね」

「……リスクを減らすとは?」

 話を黙って聞いていた大洋が口を開く。水狩田が呟く。

「魚テンプ―ラをいの一番で潰す……」

「……博多アウローラね」

「ならば対策を練らなければならないな」

「そう、これを見てくれる?」

 海江田が情報端末を取り出し、机上に3D映像を映し出す。それぞれ赤色、白色、緑色をした機体が戦う様子が映っている。

「これは?」

「博多アウローラの使用する機体、『トリオ・デ・イナウディト』だよ」

「意味はイタリア語で『前代未聞のトリオ』ってところかな」

 閃の言葉に海江田が頷き、説明を続ける。

「正式名称はもうちょっと長いんだけど、ここでは割愛して、単純に赤、白、緑と呼称するよ。名前からも大体の予想がつくと思うけど、三機同時運用で力を発揮する機体だ。赤は重火器武装に特化した機体、白は近接戦闘を得意とする機体、緑は索敵などに優れた電子戦闘用の機体だね」

「俺たちに似ているな」

「合体はしないけどね。知っての通りルール変更により、明日は3機とも出てくると予想される。単独でもパイロットの技量の高さも相まって厄介な存在なんだけど」

「有名なパイロットなのか?」

「ああ、赤に乗るのがリーダー的存在、松下克長(まつしたかつなが)。さっき壇上にいた長身痩せ型の男だ」

「ええっあの有名な松下さん⁉ 雰囲気が違うから全然気づかんかったで!」

 隼子が驚きの声を上げる。閃が指摘する。

「頭を剃っていたからじゃない?」

「そ、それにしても人相が随分と変わっていたような……いや、映像とかでしか見たこと無いけども」

「白に乗るのが竹中大門(たけなかだいもん)、背丈は普通だけど、筋肉質な男だね。緑に乗るのが、梅上愛(うめがみあい)。小柄でふくよかな女性。壇上には上がらなかったがパーティでの写真を撮ったよ」

「この二人もスキンヘッドになっとる⁉」

「ちょっと不気味だね~。揃って出家した訳でもあるまいし」

 画像を見た隼子と閃の反応に、海江田が両手を広げて頷く。

「そう、一旦辞退したのにやっぱり出たいって言い出すとか気になる所が多くてね。ここはオタクらと手を組んだ方が良さそうだという結論に至ったのさ」

「分かった……どうすれば良い?」

「まず初手で電光石火に合体してくれる? 白の相手をお願いしたい。リーチのある赤は私が鞭でなんとかする。緑は水狩田に任せるよ、機体性能的に接近戦は嫌がるはずだ」

「了解……」

「倒した後はどうする?」

 大洋の問いに海江田は小さく両手を上げる。

「リスクは片付いたことになるわけだから、後はご自由に……。地元のスターに華を持たせるも良し。『ツインテールの鬼神』の鼻っ柱を叩き折るのも良し……」

「データは取りたいね、邪魔しないでくれる?」

「う~ん、それはその時の気分次第かな?」

 閃の言葉に海江田は肩を竦める。

「……で、何で大洋の部屋で話し合いやねん? ミーティングルームを用意してもらっていたやろ?」

 部屋を出て、隼子は振り向いて海江田に尋ねる。

「あ~それはね……」

「は、疾風さん⁉ こ、これは⁉」

 大洋たちが声のした方を見ると、高島津伊織の姿があった。

「貴女は社長代行の……」

「不潔!」

「えっ⁉」

「部屋に女性を4人も連れ込むだなんて……! 弟から聞いていた話とは違いますわ!」

「ちょ、ちょっと待って下さい!」

「待ちません! 貴方には失望しました!」

 そう言って、伊織は走り去ってしまった。大洋がうなだれる。

「くっ、破廉恥な男だと思われてしまった……」

「いや、落ち込む所そこちゃうやろ! なんか物凄い大事なこと言うてたぞ!」

 隼子が騒ぐ横で海江田が呟く。

「このように参加者同士の私的な交流だと勘違いしてくれる……密約を結んだなどとは誰も考えない……」

「成程、理に適っている……かな?」

 閃が首を傾げる。



 翌日、鹿児島湾内に設けられた試合会場で四組のロボットが顔を合わせる。

「障害物も何も無く、シンプルな会場だな」

「横幅約150m、縦幅約300mといったところだね」

「湾沿いに観客席も設けたのか、大丈夫か?」

「安全性は保障されているそうだから、気にしなくていいと思うよ。美馬くんたちも見ているってさ、恥ずかしい試合は出来ないね」

「……これ、床は何で出来ているんや? 鉄か? 桜色とはまた派手やな……」

 隼子が石火で軽く足踏みする。カンカンと音がする。

「ジュンジュン、そろそろ始まるよ~」

「あ、す、すまん」

「博多アウローラの三機は南方に、そして、北にいる赤紫の機体が……」

「そう、高島津製作所ご自慢の名機。鬼(おに)・極(きわみ)だよ。最初の機体はこの電光石火と同じく、17年程前に作られたけど、そこから改良を重ねていった……単純に壱、弐とナンバリングしていたんだけど、よほど自信があるんだろうね、極と名付けるなんて」

「とりあえず、鬼退治は後まわしだな」

「そうだね。まずは手筈通り、トリオ・デ・イナウディトを倒す……」

 やがて試合開始を告げるアナウンスが流れる。大洋が叫ぶ。

「よしっ! まずは合体……」

「電光石火! エテルネル=インフィニ!」

 幸村の声が戦場に鳴り響く。

「こいは中止になったロボチャン準決勝の再戦のようなもんじゃ! よって手出しは無用でお願いしょごたっ!」

「「「ええっ⁉」」」

 幸村の唐突な宣言に大洋たちは再び驚かされる。

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