バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

第4話 冒険者登録をしよう



ついに俺は冒険者ギルドへとたどり着いた。



それは周りの建物よりも一際横に大きな建物で正面には大きな両開きの扉が常に空いている状態で待ち構えている。


外から中を覗いてみると、非常に活気にあふれた雰囲気でゴツい屈強な男ばかりかと思ったが意外とそうでもなく華奢な男性や女性も割と見受けられる。



覗いてばかりじゃ何も進まないので勇気を出して建物の中へと入っていく。中は入り口側の空間に通路を挟んで木製の机や椅子が並んでおり、そこで談笑をしたり何やら真剣な表情で話し合ってる人たちもいた。



真ん中の通路を進んで奥へ行くと前世での市役所のような受付カウンターがあり、そこには受付嬢が3人待機してそれぞれ仕事を行なっている。そのカウンターの横には大きな掲示板があり、おそらく依頼書であろう紙がたくさん貼られていた。



とりあえず俺は冒険者登録をしないといけないので空いている受付嬢のところへと向かった。



「あのー、すみません。冒険者登録をしたいのですがここで合ってますか?」

「はい、合っておりますよ。ようこそ冒険者ギルド、サウスプリング支部へ。冒険者登録でしたらこちらの紙に名前と年齢をお書きください」



すると謎の記号が書かれた一枚の紙を手渡された。書いてくださいと言われても...これってどこに何を書けばいいんだろう??そう思ったのも束の間、頭の中に先ほどの声が鳴り響いた。



《スキル『多言語理解』により、アルクス文字を習得しました》



またしても急なアナウンスにびっくりしてあたりを見渡してしまった。特に周りの人に聞こえている気配はなく、受付嬢さんにはどうかしましたか?と不思議そうな目で見られてしまった。そろそろこれにも慣れていかないといけないな。



何でもないですと伝え、再び渡された紙を見てみると先ほどまで意味不明だった記号がなぜか文字だと認識できて読むことも出来た。やっぱり持っててよかったな~、このスキル。



というわけで冒険者登録用紙と書かれた紙にアルクス語で「ユウト」そして「15歳」と記入して受付嬢さんに渡した。すると彼女はカウンターの下から一枚の板のようなものを取り出してカウンターの上へと置いた。よく見ると何か文字や図形のようなものが描かれている。



「ではこちらに手を置いていただいてもよろしいでしょうか」

「はい、分かりました」



俺は言われたとおりに板の上に手を置いた。感触的には金属のような冷たさをしていたが今までに触ったことのないような触り心地でなんだか不思議な気持ちになった。



手を置いて数秒後、板に描かれている文字や図形が光り出した。先ほど警備兵さんのところで見た魔道具と同じ白い光を発している。すごく幻想的だな~と見入ってしまっていたが、それは2秒ほどですぐに消えてしまった。



「もう大丈夫ですよ、ありがとうございました」



板の上に置いていた手を引っ込める。すると受付嬢はその板をひっくり返し、裏のくぼみにはまっている四角いカードのようなものを取り出した。前世で言うクレジットカードほどの大きさだった。



「これで冒険者登録は完了となります。そしてこれがユウト様のギルドカードとなります。再発行には銀貨1枚が必要になりますので紛失しないようにお気を付けください」

「ありがとうございます」



えっ、もう登録終わったの?
思った以上の早い手続きでとてもびっくりした。前世の役所でも見習ってほしいくらいの速さだわ。受け取った銅色のプレートには「ユウト」「15歳」そして「Fランク」と記載されていた。



「では冒険者としての最低限守って頂きたい注意事項がありますのでご説明させていただきます」

「はい、よろしくお願いします」

「では1つ目、冒険者同士の争いは禁止です。二つ目、犯罪者以外への殺人・窃盗・詐欺・恐喝行為は禁止です。ルールを破られますと最悪の場合、当ギルドから追放という形になりますのでご注意ください。以上になります」



あれ?それだけなのかな。これもまた非常に簡潔で最低限のことばかりだけど...



「では何かご質問などはありますか?なければこれで以上となります」



あ、本当にそれだけだったみたい。もしかして他のことは当たり前のことばかりだからもう知ってますよね的な感じでわざわざ言わないのかな。でも俺はこの世界について知らなさすぎるから情報はあるに越したことはない。ここは時間かかってもいいから聞けることは聞いておかないと。



「あのー、もしよろしければもっと詳しくギルドについて説明して頂けると助かるんですが大丈夫ですか?」

「...え、あ、はい!大丈夫です!」



めちゃくちゃ目を丸くして驚かれてしまった。そんなに冒険者ってギルドの説明なんて聞かないのかな?それに驚きすぎてめちゃくちゃ声大きくなってたし。なんか申し訳ないことしてしまったかな。



てか今初めてちゃんと受付嬢の顔を見たけどめちゃ可愛いじゃん...!茶髪でセミロング、澄んだ水色の瞳。間違いなく今まで見てきた女性の中でもトップクラスの可愛さだ。...よく見たら他の受付嬢もレベル高っ!!



「基本的なギルドのルールは先ほどですべてですが、あと依頼を受けるにあたっていくつか注意事項やランク制度の説明がありますがお聞きになりますか?」

「はい、ぜひお願いします」

「まず冒険者にはランク制度というものがありまして、Fから始まり、E、D、C、B、A、Sの7段階の区分があります。ユウト様など登録されたばかりの方はみなさんFランクから始まります。その後依頼を達成していただき一定の基準を満たしますと次のランクへと昇格するという形になりまして、ランクが上がるにに応じて受けられる以来の種類も増えてきます。」



「次に依頼を受けるにあたっての注意事項です。各依頼には最低受注可能なランクというものがありまして明記されているランク以下の方は該当の依頼を受けることが出来ません。また依頼を破棄、または失敗された場合には違約金を支払って頂くことになりますので慎重にお選びください。これで説明は以上になります」



なるほど、俺が知っている冒険者の仕組み通りだな。やはりお金をたくさん稼ごうと思うとランクを上げてより難しい依頼を受けるということが必要になってきそうだな。しかし失敗すればお金を失う、自分の実力と依頼の内容をしっかりと見極めなければいけないな。それに一つ気がかりなこともある...



「すみません、依頼の中には緊急的に出されるものや直接指名などで断ることが出来ないものとかってあったりしますか?」



「非常事態にギルドから緊急依頼を出すことはありますが、それは絶対に受けなければいけないというわけではありません。しかし報酬も普通の依頼より多めに設定されている場合が多いので基本的にはみなさんお受けになられますね。あとはAやSランクになるとギルドから冒険者様への直接指名の依頼が出されることもあるそうですがそれに関してはあまり詳しくは分かりかねます。申し訳ありません。」

「いえいえ!こちらこそ教えていただきありがとうございます。これからよろしくお願いします」



そうか、緊急クエストは断ることもできるけれど報酬が良いから断る理由がないということか。それに直接指名の依頼は高ランクにならないとないから、あまり事例がないのかもしれないな。AとかSランクの冒険者はかなり数が少ないのかもしれない。ということは真ん中のDやCランクぐらいの冒険者が大半を占めているのかな?...ではまずはそこを目指すことにしようか。



「こちらこそよろしくお願い致します、ユウトさん。私はサウスプリング支部にて受付を担当しておりますレイナと申します。何かありましたらぜひお声がけ下さい。」



レイナさんは笑顔でそう答えてくれた。いやー、この世界の受付業務ってすごいな。処理も早いし、丁寧で対応も素晴らしい。最初の受付さんがレイナさんでよかった。冒険者も何とかやっていけそうだ。



ということで冒険者登録も完了したので早速依頼でもこなしてみますか。



初めての冒険者としての仕事にオタクとしての憧れを抱きつつ、俺は依頼書が沢山貼られた掲示板の方へと足を運ぶことにした。

しおり