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各地の発展

 世界は狭いようでいて広い。争っている場所もあれば、それとは無縁の平和な場所もある。
 争いの激しい場所には、それに見合った文化があるように、平和な場所にも、それに見合った文化がある。
「………………」
 そんな平和な地域から持ち込まれた供物の中に、新しい本が大量に在った。それをれいは、拠点にしている部屋で黙々と読んでいく。
「………………やはり物語が多いですね。それも恋物語が増えましたか?」
 争いの絶えない地域では、英雄ものの物語など勇ましい物語が多いが、平和な場所で書かれた本だからか、恋愛ものや推理ものなど、平和な物語か少し刺激がある物語が多いようだった。
 それらを読んだ後、魔法道具の方も確認していく。
「………………見事なまでに生活の補助ばかりですね」
 室内の温度を一定に保つ魔法道具や、食材を冷やして保存する魔法道具。他にも、使った食器を自動で洗浄する魔法道具や、掃除を楽にしてくれる魔法道具などなど。
 とりあえず出来の良い魔法道具を優先して供えたからか、中には何故それを供えたのかと思わずにはいられない魔法道具も混じっていたが、概ね生活に密着した魔法道具だった。
 れいはそれらを確認しつつ、何処にそれらを保管するかを選別していく。ほとんどを巨人に下げ渡すにしても、何でもかんでも同じ場所に保管すればいいというものではない。
「………………まぁ、武具類が少ないのは個人的には嬉しいですがね」
 人の武具では、巨人達には小さすぎる。鋳溶かして新しく造るにしても、そもそも孤島には敵が存在しないし、外敵もれい達が許すはずがない。
 既に巨人の衣食住全てが揃っているので、金属は在っても邪魔なだけでしかなかった。それよりも遊び道具の方がまだ役に立つだろう。それもまた小さくはあるのだが。
「………………あの辺りは長く平和なだけあり、食料も豊富ですね。品種改良も積極的に行っているようで、味の向上だけではなく、新しい食材も多いですし」
 選り分けをを終えたところで、れいは早速それらを各保管場所に転送していく。それと共に、巨人の長の下に何を何処にどれだけ送ったかが書かれた大きな紙を送っておく。
「………………これで供物の整理はいいでしょう。それにしても、相変わらず量が多いですね。何か恩恵を与えた覚えはないのですが」
 はてと首を傾げるれいではあるが、言ってしまえば、ハードゥスに住んでいるというだけで、れいの恩恵を受けているのと同じであった。
 それに、安定や安全のために管理補佐の派遣なども行っているので、れいが思っている以上にハードゥスの住民はれいの恩恵を受けているのであった。
 もっとも、そのことに気づいているかどうかはそのモノ次第ではあるのだが。

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