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第140話 伝説と本

「よっ、こないだの本あったから持ってきたぞ」
グラハム伯自ら1冊の本を届けに来てくれた。
「グラハム伯自らわざわざありがとうございます」
「予想より早く見つかったからな」
そう言いつつ目がキョロキョロと見まわすグラハム伯。
「クスクス、ふたりは今庭で剣の鍛錬中ですよ。よろしければ見てやってください」
ミーアがグラハム伯の気持ちに気づき案内する。
庭ではイングリッドとエルンストがそれぞれに木剣を持ち黙々と杭に向かって打ち込みをしていた。その様子を見たグラハム伯は何やら不思議そうな表情をしている。
「なあ、あの2人黙って杭に打ち込んでいるんだが。普通は『えい』とか『そりゃぁ』とか気合の声出しながらやるものだろう」
「え、グラハム伯。実戦で自分が打ち込む事を事前に敵に教えるようなやり方するんですか」
「あ、いや、でも今は練習だろう」
「練習は実戦のように、実戦を練習のようにでしょう。実戦でやってはいけないことは練習でもやるべきではないと思います」
「そういうのかあ」
グラハム伯は納得したようなしてないような表情をしている。
「それはそれとして、10にもならない子供の打ち込みじゃねぇぞ。杭が切り倒されそうじゃないか。手に持ってるのは木剣だよな真剣じゃないよな」
そうして騒いでいるグラハム伯に子供たちが気付いた。ふたりともがワッと駆け寄ってくる。
「グラハムじぃ、こんにちは」
ふたりでグラハム伯に抱きついていくとグラハム伯は目じりを下げて普段のキリっとした雰囲気がまるでない。
「なあ、ミーア。こういうの良いな」
「そうね。イングリッドもエルンストもグラハム伯をまるで実のおじいちゃんのように慕ってるし」


「それでは、しばらくお借りしますね」
子供たちは遊び疲れて眠ってしまい、僕達はグラハム伯から本を借り受け調べ物を始めた。
 四神獣、強大な力を持ちかの国の4方を守る4体の神獣。
「東を守る蒼き竜、南を守る赤き鳳、西を守る白き大虎、そして北を守る蛇の尾を持つ黒き亀。それらは中心の光の麒麟を呼ぶとする、か……。どう思うミーア」
「フェイそれって四神獣って4体でセットで……」
「多分4体全部倒すと麒麟が現れるってことか。ブルードラゴンが東って事は、あの場所を起点にして西に向かえば白い大虎に会えるってことなのかな」
「でも、漠然と西って言っても」
「うん、方向だけ分かってもね、それに遠くまで行けばちょっとの方向の違いがとんでもない違いになるだろうし。何か目印みたいなものが欲しいところだけど」
「行ってみないと分からないんじゃないかなあ」
「やっぱりそうだよね。でも、おおよそやることが決まったね」
「そうね。まずはブルードラゴンを倒した場所から西を確認ね」


「という事は、お前たちはまた深層の奥に行くのか」
借りた本を返しながらグラハム伯にこれからの話をすると、心配そうな顔で僕達に聞いてくる。
「そうですね。やはり確認しないと気持ち悪いので」
「そうか。お前たちならそう滅多なことは無いだろうが気をつけていけよ。それで、いつから行くんだ」
「そうですね、10日ほど休んでから準備、それからなので20日後くらいに出ることになると思います」

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