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2章 復活

 絶望にかられていると、目の前がどういうわけか明るくなる。その後、明らかに不審人物にしか見えない女性が登場することとなった。

 女性は頭にリングのようなものをつけていた。茜はこの人も死んだことがあるのかなと思った。

 死人はしゃべれないのかなと思っていると、リングをつけた女性が話しかけてきた。

「こんにちは。死後の人間の管理をしている、メイホウです」

 死後の世界を管理する発想は頭になかった。人間は死んだら、魂を天国に返すものであると信じ切っていた。

 メイホウは水晶玉を眺めている。茜は何が映し出されているのかなと疑問に感じた。

「あなたは生き返る資格がありますね。別世界で魂を蘇らせましょう」

 人生は27年で幕を閉じてしまった。満喫できたかといわれると、完全にノーである。現実世界に戻れるのであれば、現実世界に戻りたい。

「現実世界には戻れないんですか?}

「それはできません。そんなことをしたら、未来が変わってしまいます」

 現実世界に戻れなかったとしても、別世界でやり直すことができる。そのことを前向きにとらえるようにしよう。

 個人的に興味を持っているのは恋愛。現実世界では結婚できなかったので、転生した世界では結婚してみたい。

 デザイナーになる夢もかなえたい。自分の描いた絵を評価されることで、人間的に認められたい。

 自分の願望を頭に思い浮かべていると、メイホウから声をかけられた。

「復活するにあたり、希望する年齢はありますか」

 茜の人生で最も輝いていたのは、17~18才くらいのときだ。交際していた彼氏と、いろいろなところに遊びに行っていたときが、一番の幸せだった。

 高校時代に交際していた彼氏は、高校卒業と同時に別れた。お互いの人生を歩んでいこうというのが、主な理由となっていた。子供の遊び、大人の付き合いは異なるのかもしれない。

 額に手を当てながら、17か18にするのかを考える。わずか一歳ではあるものの、彼女にとっては大きな意味を持つような気がした。

「18歳でお願いします」

「年齢の変更は認められませんので、最終確認をさせていただきます。18歳でよろしいですか」

 17の方がいいかもしれないと思いつつも、希望年齢をつげることにした。

「はい。よろしくお願いします」

「わかりました。18才という設定にします」

 メイホウは水晶玉を見つめていた。 

「あなたは社会人になって働きづくめでした。人生を楽しめなかったと思うので、年を取らないという設定を付け加えたいと思います」

 テレビでたまに耳にする、永遠の18歳を体験できるのか。茜はそのことが嬉しくてたまらなかった。自分の老ける姿を目の当たりにしたくない。

「不老不死、体が疲れなくなる、眠らなくても平気、病気(異常状態)にかからない、空気がな
くても生きていける、飲食しなくても生きられる、トイレをしなくてもいいなどといった設定を
加えます。見た目は人間ですけど、中身は別のものと考えてもらってもいいかもしれません」

 体が疲れなくなる、眠らなくても平気というのも心強い。疲れのたまらない体なら、いろいろなことができる。

 空気がなくても生きていけるのも面白そうだ。宇宙などの空間では、どのようになるのだろうか。

 飲食しなくてもいいというスキルはあるものの、ご飯を食べたくなるときもある。茜はそのときにどうなるのかを確認することにした。

「ご飯を食べた場合はどうなるんですか」

「胃袋の中で消滅します」

「水を飲んだ場合はどうなるんですか」

「食べ物と同じように、胃袋の中で消滅します」

 胃袋の中で食べ物がなくなってしまうとは。どのような理屈に基づいているのだろうか。 

 メイホウは説明を付け加えた。

「胃袋に一切たまらないので、100トンのコメを平らげることも可能です」

 コメばかりを100トンも食べたくないかな。肉、果物などをバランスよくとりたい。

「体内ですぐに消えるので、糖分、脂の取りすぎの心配はありません。好きなものだけを食べる
生活ができますよ」

 食事のバランスを考えなくてもいいのか。それについては、すごくありがたい。体の健康のために、野菜などを食べる必要はなくなる。

「あちらの世界で体重を変えられないので、身長、体重についても決めます。どれくらいがいいですか?」

 女性としてアイドル体形は理想だ。アカネは理想の身長、体重を告げることにした。

「170センチ、50キロでお願いします」

 160センチで生活していたときに、あと10センチくらいほしいと思っていた。170くらいあれば、好きな異性をベストショットで眺められる。

 体重を50キロにしたのは、アイドルのような体形が好きだから。女性にとって、くびれた腰、細い脚は理想といえる。

「わかりました。170センチ、50キロにします」

 いろいろと話をしているうちに、セカンドライフに興味を持つようになった。一秒も早く、あちらの世界に移りたい。

 次の人生を想像していると、足が宙に浮いている感覚があった。

「体を飛ばします。すぐに終わりますので、痛みなどは一切ありません」

 茜の視界が一瞬にして切り替わることとなった。

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