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第126話 双子の鍛錬と聖国からの手紙

「イングリット、エルンスト、準備はいいかい」
「はい、パパ」
「大丈夫よパパ」
「剣の持ち方はこうだ。そう、イングリットいいぞ。いやそうじゃない。エルンストはもう少し左に……。それを振りかぶって、円の動きを意識して」
「えい」
「やー」
「おお、いいぞ」
我が家の庭で子供たちに木剣を振るわせ、一通りの鍛錬を終えると。
「フェイ、さすがに7歳で剣の鍛錬は早いんじゃないかしら」
お気に入りの場所でメイドのジェシカのサーブしたお茶の入ったティーカップを手に一言文句を言ってくるミーア。双子の我が子たちに剣を握らせたところにミーアはちょっと文句があるようだ。
「いやいや、竜の祝福があるんだから早いってことは無いと思うよ。それにミーアが初めて剣を手にしたのだって似たような年齢じゃなかったっけ」
そう言いながらジェシカの渡してくれた濡れタオルで手をふき、ミーアの隣に腰掛ける。
 ファイアーデビル討伐成功後、ほどなく僕たちは自分たちの屋敷をもった。
「お前たちも、そろそろ自分たちの屋敷と最低限の家臣をもて」
とのグラハム伯の言葉に従った形だ。人を雇入れ職場を作るのも貴族の義務なのだそうだ。
そこで屋敷と対外的な窓口としての執事、身の回りの世話をするメイドや料理人等と20人と小規模であるけれど騎士団を作った。人選にはグラハム伯と師匠の伝手で信用できる人間を紹介してもらいどうにか形を整えた形。領地を持たない貴族である僕はこうでもしないとお金をあまり使えないというのも理由だったりもする。多くの上位魔獣の討伐、ウィンドドラゴン討伐、数回にわたるスタンピード殲滅、ファイアーデビル討伐等で僕の資産はとんでもないことになっていて、これだけのことをしても減った感じがしない。もっともファイアーデビル討伐後はスタンピードの発生もなくわりとのんびり暮らしているのでこれはこれで良いかなとも思ってはいる。

「旦那様、お手紙でございます」
執事のギディオンが持ってきたのは
「ヘンゲン子爵家の華押。アーセルからかな」
勇者パーティーは勇者様は帝国子爵家の嫡男なのだけれど、色々なしがらみから活動拠点は未だに聖国においていて、たまに連絡を取り合う関係に落ち着いている。
「ほう、街近くに出てきた上位魔獣の群れを単独パーティーで討伐か。勇者パーティーもかなりやるようになったなあ」
そういう僕の隣でミーアがクスリと笑う。
「ファイアーデビル討伐戦の時に十分に実力はあるのは分かってたでしょう」
「まあ、そうなんだけどね。それより問題はこっちだな」
そこには聖国の使節団が僕を表敬訪問すると書いてあった。

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