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「えーーっ ! どこの子かも分からんのに ? ……きっと、この子の家族がこの子を探してるだろうから、俺は警察に預けた方が良いと思うけどなー」
 ママの意見にパパが反対すると、ママは負けずにパパに言い返す。
「だからー、その子は飛華流の部屋のクローゼットを通じて異世界から来た子だって言ったでしょっ ! それなのに、誰にこの子を助けてもらうつもり ? ……とりあえず、一晩くらい泊めてあげてもいいでしょ ? 丁度、空き部屋もあるんだから……ねっ ?」

「いや、それは違う。そんな判断を、簡単にしない方がいい。……もうお前もいい年した大人なんだから、子供と一緒になってあんな事を信じるなよ」
「もうっ ! 何で理解できないのっ ! 飛華流だって、あれはどこかから自分のクローゼットにやって来た子だって、はっきり言ってたのに……パパはさ、頭が固すぎるんだよ。世の中には、科学では証明できない不思議な事だって起こるんだよ。日常の中には、非日常が隠れているんだから」
「いやいや、お前の発想が幼稚すぎるんだよ。俺は、オカルトなんて信じないから」


「……なあ、あのまま二人で解決できると思う ? 俺は、パパに賛成なんだ。だって、確かにクローゼットから人間が出てくる訳ないじゃん……ハア」
 どんどんとエスカレートしていく二人の言い争いに、真誠は深いため息をつく。
「うーん……まあ、後は二人に任せるしかないね。僕ら子供には、どうする事も出来ないんだし」
 僕はそう言って、のろのろと階段を上っていく。

 現実主義者のパパと、夢想家のママ……あの二人の価値観は真逆だ。それに、二人とも頑固だから、自分の考えを押し通す。このまま互いの意見をぶつけ合ったって、喧嘩に発展してしまうだけだぞ。
 しかし、どうしてこんな事態になったのだろう。フィクションの世界でしか起こらない様な出来事が、こうして実際に起きてしまっている。これは夢なのではと、何度か頬をつねってみたが、ちゃんと痛みを感じられた。どうやら、現実みたいだ。

 それにしても、口では上手く言い表せない様な不思議なオーラを纏った少女は一体、何者なのだろう。首に高価なアクセサリーを身に付けていたから、どこかの金持ちか何かだろうか……。




 僕は今までと違う光景に、違和感を覚えた。
 休日は家族四人で、朝食の時間を過ごす。それは、いつもと何も変わらない。
 だが、今日は昨日出会った謎の少女も、当たり前の顔をしてこの場に居るんだ。一晩泊めるだけじゃなかったのか ? 結局、どうなったのだろう。
 
 少女は僕の向かいの席に座っていて、こちらをじっと見ている。そんな、少女の視線を感じつつも、僕は目を合わせない様にしていた。

 目の前には焼きたての食パンに、温かいコーンスープが置かれている。ふわふわと沸き立つ湯気とともに美味しそうな香りがして、食欲をそそられた。

「いただきます」

 僕は軽く手を合わせ、バターの染み込んだパンにかぶりつく。皆も次々に皿へ手を伸ばし、朝食を味わう。

「二人とも、あのね……これから、この子と一緒に暮らす事になったの。だから、仲良くしてあげてね」
 ママの言葉に唖然とし、僕は真誠と顔を見合わせた。いや、嘘だろ ? 突然、そんな事を言われても、すんなり頷けない。

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