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第8話(1) 自称18歳

                  捌

「川中島って言ってもあの川中島じゃなくてその近くの山か……」

「川中島の場所についての定義は時代とともに変遷しております。隊長の発言もあながち間違っているわけではありません」

 勇次の発言に億葉が眼鏡をクイっと上げて反応する。

「近隣の山をまるごと演習場として確保しておくことが出来るとは……妖絶講も案外資金が潤沢なのですわね」

「そんな余裕があるなら給料をもう少し上げて欲しいもんだけどな」

 万夜の言葉に千景が笑う。

「一般人が迷い込む危険性は無いのだろうか?」

「大きな狭世を発生させて、山全体を囲んでいるからその心配は必要ないにゃ」

 三尋の疑問に又左が答える。

「! 隊長! 来ました!」

 集合場所に武枝隊の姿が現れ、愛は岩に腰を下ろし、瞑想している御剣に声を掛ける。

「そうか……」

 御剣は目を開いて、ゆっくりと立ち上がり、前に進み出る。武枝隊からも隊長である武枝御盾が一人進み出てきて、二人は向かい合って立つ。

「時間通りに来るとは意外だったな」

「それは此方の台詞じゃ。てっきり怖気づいて来ないものかと思ったわ」

「貴様ら如きを恐れる要素が皆無だからな」

「なんじゃと?」

「は~い、お待た~♪」

 睨み合う御剣と御盾の間に割って入るように黒髪の長身美人が現れた。

「うおっ⁉」

「!」

 突然の出現に御盾は声を上げて驚き、御剣は息を呑む。

「も~そんなに驚かないでよ~傷付いちゃうわ~」

 黒髪美人は腰をくねくねと動かす。ミディアムロングの黒髪と豊満な胸と尻が揺れる。

「普通に出て来てもらえませんかの⁉」

 色々と癪に障ったのか、御盾が大声を上げる。

「あ~ん、御盾ちゃん怖~い」

「隊長、その方は……?」

「ああ、こちらは……」

 愛の質問に答えようとした御剣を黒髪美人が制する。

「待って、御剣っち! 折角だから自己紹介するわ!」

「はあ……」

 黒髪美人はひとつ咳払いをして、自分の名を名乗る。

「初めまして♪ 関東管区管区長兼、星ノ条隊隊長、星ノ条雅(ほしのじょうみやび)、永久(とこしえ)の18歳よ♪」

「「……」」

 美人は雅と名乗り、往年のアイドル歌手のようなポーズを取る。それに対して上杉山隊、武枝隊、双方の隊員が沈黙し、その場が一瞬の静寂に包まれる。

「ちょっと、ちょっと! そこは『またまた♪』でしょ⁉」

「そのような約束事など知りませぬ!」

「……茶番には付き合っていられません」

「酷っ! 二人とも容赦なくない⁉」

「時間がありませんので話を進めて下さい」

「ちぇっ、分かりましたよ~だ」

 雅は唇をぷいっと尖らせる。その後すぐ真面目な顔つきになり、説明を始める。

「……大体のことは既に把握しているとは思うけれど、今回の対抗戦はこの演習場で行って貰います。ウチの優れた隊員が張った狭世の結界だから、つまらない乱入者や一般の方が迷い込むということは無いから安心して。怪我などした場合は、これまたウチの自慢の隊員たちが迅速な治癒・治療を行うから、心おきなく殺りあって……戦って頂戴」

「今不穏な言葉が聞こえたような……」

 勇次がボソッと呟く。雅は説明を続ける。

「自分たちで回復してもいいけど、それだとキリが無いから一人につき一度にしましょう。もっとも戦闘続行不能に近い状態になったら回復する余裕なんか無いだろうけどね。これ以上は無理だと私が判断したら、ウチの隊員に回収してもらうわ。」

「戦闘続行の可不可の判断は如何様に?」

 御剣の問いに雅は右の掌を広げる。そこに雀のようなものがとまる。

「これもまたウチの優秀な隊員が開発したこの雀型ドローンを多数配置します。これで私がこの場所にいながらでもモニタリングを行うことが出来るわ」

「おおっ、高性能!」

 億葉が目を輝かせる。

「スポーツじゃないし、明確に反則というものは定めないけど、多少行き過ぎた行為があれば……私が直々にお仕置きしてあげるわ」

 雅は突如低い声色になって、両隊に睨みをきかせる。御剣が呟く。

「地が出ていますよ」

「何か言った?」

「いいえ、何も」

 御剣は微笑みながら首を振る。雅は更に説明を続ける。一本の木を指差す。

「あそこに少し改良を加えた転移鏡を用意しました。一人ずつあそこに飛び込んでね。この演習場のどこかにランダムに飛び出るようになっているわ」

「ランダムに……」

「そう、運が良ければ味方と即合流出来るし、運が悪ければ相手に包囲されるわ。先に全滅した方が負け……説明は以上よ。何か質問あるかしら?」

「……」

 御剣は黙って雅を見つめる。

「何? 御剣っち?」

「……この間、武枝が魔女呼ばわりしていましたよ」

「んなっ⁉」

「ほ~う? 御盾ちゃん、それはどういうことかしら」

「い、いや、単なる言い間違いです……そ、それではお願いします!」

「……お願いします」

 御剣たちは雅に頭を下げ、それぞれ自らの隊員のもとへと下がる。

「さて……とにかく、作戦通りに行くぞ」

「作戦というかにゃんというか……」

「ん? あれは……」

 三尋が指差した方を見ると、武枝が大袈裟に隊員たちの頭上で右手を左右に振りかざすのが見える。勇次が怪訝そうに呟く。

「何をやってんだ?」

「……儀式のようなものだ、気にするな」

「そうは言っても大分気になりますけどね……」

 愛がそう呟いた後、雅が両隊に声を掛ける。

「準備は良いかしら? じゃあ、順番に転移鏡に飛び込んで!」

「あちらが儀式をするならこちらは円陣でも組みますか?」

「良いことを言うな、万夜。そうしよう、皆、円になれ」

 出来上がった円陣の中心で御剣が気勢を上げる。

「己の力を信じて戦え! 苦境に陥っても諦めるな! 上杉山隊はヤワではないと信じている! 絶対に勝つぞ!」

「「「おおっ!」」」

 両隊の各員が転移鏡に飛び込んで行く。千景はある地点に出た。

「さてと……ウダウダしていたら、あの自称18歳の人が言っていた様に敵さんに囲まれちまうな……早く愛と合流したい所だ、勇次を狙ってやがる赤髪の女も気になるし……!」

 その時、千景の首筋を刀が襲ったが、千景は間一髪躱す。

「ほう、今の一撃を躱しますか、さっさと終わらせてあげようと思いましたのに……」

 茶髪の女性が刀を構え直す。千景も笑みを浮かべ、拳を突き出して構える。

「へっ、色々考えるのも面倒臭え……片っ端からぶっ飛ばすか!」

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