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ゲキオコプンプン丸のその後と、みんなで休日の手前

 マクローコの一件でドタバタした今日のコンビニおもてなし5号店ですが、どうにか無事に営業を終えることが出来ました。
 スアが来てくれたおかげで、グリアーナが張り切りすぎて壊してしまった誘導灯をすぐに直してもらえ、さらにアナザーボディ4体を即時投入してもらえたのがとても大きかったです。
「スアありがとう、本当に助かったよ」
 僕がそう言うと、スアはにっこり微笑みながら僕にすり寄って来まして、
「……旦那様の役にたてたのが、うれしい」
 そう言ってくれました。
 ほんとに、可愛くて頼りになる素敵な奥さんです、はい。

 店の片付けをしていると、レトレがやってきました。
 レトレは終始ニコニコ顔で僕に話しかけてきました。
「店長さんの情報のおかげで、ポルテントチップ商会が秘密裏にやっていた金融部門を一網打尽に出来たでですです。本当にありがとうございますです」
 そう言って何度も頭をさげたレトレですが、僕的には当然のことをしたまでって気持ちしかありませんでしたので、
「当然のことをしただけですよ。お役に立てて何よりですよ」
 笑いながら返事を返しました。
 レトレによりますと、ポルテントチップ商会はばれたらまずい案件は、今回のようにことごとく別会社を作成して関係書類もすべてそこに隠しているそうで、なかなかその悪事の全容が掴み切れないんだそうです。
「調査は難航しているですですけど、頑張りますですですよ」
 エレエは、そう言って商店街組合へと帰って行きました。
 ……しかしまぁ、ここまで巧みにあれこれやっているとなると、まだなんかやらかしそうな気がしないでもありませんが……その時はその時です。僕はまずこの5号店の経営に集中しないといけません。
 僕は、そんなことを思いながら店の片付けに戻りました。

 僕達が店の片付けを終えると、入れ替わるようにしてテリブルアが5号店に顔を出しました。
「あれ、テリブルアどうしたんだい」
「あぁ、診療所の工事が終わったんでね、今日からこっちのおもてなしナカンコンベ診療所を開店するんだよ」
 そう言うとテリブルアはニカッと笑いました。
 テリブルアがガタコンベで営業しているおもてなし診療所ですが、ガタコンベでの営業はコンビニおもてなし本店の閉店時間にあわせて午後5時までです。
 で、以後はこのナカンコンベにありますコンビニおもてなし5号店に併設する形で新設されたおもてなしナカンコンベ診療所を開店するわけです。

 病気の診察や怪我の治療を行う他に、スア製の薬品類のうち副作用があったり取扱に注意が必要な、僕が元いた世界でいうところの要指導医薬品の第一類医薬品といえる薬の販売も引き受けてくれているこのおもてなし診療所です。
 これらの薬品をテリブルアが使用方法や注意事項を丁寧に説明した上で販売をしてくれているわけです。
 で、このおもてなし診療所がナカンコンベにはまだなかったもんですから、今まではスアの薬品のうち副作用があったり取扱に注意が必要な物の販売は控えていたのですが、これでナカンコンベでも販売する目処がたったわけです。
 5号店が開店している間は、おもてなしナカンコンベ診療所は閉店しているわけですが、スアの薬品コーナーの横に転移ドアを設置してありまして、その戸を開けるとガタコンベのおもてなし診療所につながっています。この転移ドアを使ってテリブルアは、日中はガタコンベのおもてなし診療所で、本店と5号店のお客さんに指導を行っていくことになるわけです。
 ただ、この営業状態をずっと続けるのは少々無理があるな、と僕も思っていまして……で、手を打った次第です。
 
「さ、いくぞ」
「は、はいなのです」
「すぐ行きますニャ」
「あ、ちょっと待って欲しいゥ」
 テリブルアがおもてなしナカンコンベ診療所の方へ移動していくと、その後方を3人の魔法使い達がついていっています。
 この魔法使い達ですが、3号店のある魔法使い集落に住んでいる魔法使いの皆さんです。
 スアの薬品のうち、副作用などがある薬品は今までは本店のみで扱っていたのですが、他の支店に薬剤師的な感じで魔法使い達を店員兼任で配置して、ゆくゆくはすべての支店でスアの全ての薬品を扱えるようにしようと考えた僕は、3号店に
『医療業務に従事する魔法使い募集』
 の張り紙をしたのですが、すぐに3人の応募がありました。

 ハーフエルフの魔法使いハーレット
 猫人の魔法使いニャレット
 狼人の魔法使いウルレット

 3人とも同じ師匠の元で修行していたそうで、名前もその師匠につけてもらったんだそうです。
 まだ駆け出しの3人ですけど、面接をした際に
「あ、あの……私達一生懸命がんばるのです」
「まだ半人前ですニャけど、一人前になれるように頑張りますニャ」
「どうかよろしくゥ」 
 何度も頭を下げながら必死にアピールしてきたんです。
 他にも応募者はいたのですが、3人の前向きな姿勢と熱意、やる気で採用したわけです。
 まだまだ駆け出しの3人ですが、ゆくゆくはスアの薬品の説明だけではなく、病気の診療・治療行為も出来るようになってもらって、ここナカンコンベの5号店とブラコンベの2号店、そしてララコンベの4号店に常勤してもらう予定です。
 なので、診療所の修行の合間に店舗の接客の勉強もしてもらわないといけないのですが……
「だから昨日も言っただろ!その薬の副作用は異常な眠気じゃなくて倦怠感だって!」
「す、すいませんなのです」
「うぅ……また間違ったニャ」
「め、メモメモですゥ」
 診療所から聞こえてくるテリブルアの怒声を聞く限りでは、当分の間は診療所の勉強で手一杯になりそうな感じですね。
 でもまぁ、やる気満々の3人ですし、きっと頑張ってくれるはずです。

◇◇

 翌日。
「店長またせたな、乗降タワーも完成したぜ」
 朝一で5号店に顔を出した僕に、ルアが笑顔でそう言いました。
 店の屋上に建設していた魔道船の乗降タワーが完成したわけです。
「じゃあこれで5号店の改築が完成したわけだね」
「あぁ、そういうこった。なんか不具合があったらいつでも言ってくれ!すぐに直してやっからさ」
 ルアはそう言いながらニカッと笑いました。
 その背には、今日も赤ちゃんのビニーが背負われています。
 なんかもう、最近はその姿に違和感を感じなくなりました。

 ルアと一緒に設備を確認して回った僕ですが、さすがルアです、完璧な出来上がりです。
 ルアは、僕との確認作業を終えると弟子達を連れてナカンコンベの街外れに向かって移動していきました。
 そこに、ルア工房ナカンコンベ支店を建設する予定にしているルア達なんですよね。
 この5号店の出来上がり具合を宣伝材料にして、このナカンコンベでもルア工房を展開しようとしているわけです。
 すでにこの5号店のガラス壁などに関して問い合わせが結構きていますし、何より迅速・丁寧・完璧な仕上がりがモットーのルア工房ですからね。家や店舗の建築・改装から武具の作成までなんでもござれできっと繁盛することと思っています。
 当然、僕達のコンビニおもてなし5号店とも連携することになっていますので、お互いに頑張っていければな、と、思っている次第です、はい。

 そんなわけで、いよいよ魔道船の就航が可能になりまして、5号店の正式オープンをすることも可能になったわけです。
 で、僕は5号店の正式オープンを次の週末に行う事にしました。
 というのがですね、ガタコンベが所属している辺境都市連合が毎年春に開催している花祭りが次の週末に行われる予定になっているんです。
 それに合わせて5号店を正式オープンして魔道船の就航も開始してですね、ここナカンコンベの人達に花祭りに来てもらおうと考えたわけです。
 ちなみに、今回の花祭りはブラコンベで行われます。
 ブラコンベの領主代行をしている辺境駐屯地の隊長ゴルアが準備に追われているはずです。

 いろいろ動き始めたわけですが、なんか僕も気合いが入ります。
 まだまだ始まったばかりの5号店ですが、もっともっと頑張っていかないと。

 ……ですが、明日は5号店のことは少し忘れる予定です。
 明日は5号店がプレオープンして初めての休日です。
 なので、明日は1日家族サービスをする予定にしているんです。
 最近は、この5号店の仕事が忙しくてパラナミオ達とあまり遊んであげれていませんでしたから、みんなで一緒にナカンコンベを回ってみようと思っているんです。
 パラナミオ達、喜んでくれるかなぁ。

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