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12話

ニコがピーマンを食べられないことが判明してからも、いくつか食べれない物が分かってきた。
ピーマンはおそらく苦み。これはまぁ、子供がピーマンを苦手とする第一の理由だ。なぜピーマンの苦みがダメなのかは、聞いたことがあるが忘れてしまった

次に判明したのはトマト。付け合わせで出したところ、最初に一口(くし切りの半分)を食べてそっとお皿に戻した。受け付けないものは出して構わないことはピーマンの時点で伝えてある。
トマトはおそらく味ではないだろう。チキンライスや、オムライス等にケチャップは使っているが、おいしそうに食べてくれる。
食感、だろうか。ココロも小さいころは種の周りが少し苦手だった覚えがある。食べれなかったわけではないけれど。

それからナスとブロッコリーと…。一般的に子供が嫌いな野菜が上がってきた。にもニンジンや玉ねぎはパクパクと食べてくれる。
まだ食べたことない食材もあるので、これからも増えてくるだろうが、一つずつ、おいしく食べられるように工夫していく予定だ。無理しない程度に。


そして、ニコと暮らし始めてから一週間が経った。
今日は週に一度の仕事の日(現時点で)。ジャムを作る日だ。
昨夜キレイに洗われた瓶と、希望のメッセージが届いている。ちなみにリックからは、この間お邪魔した日に瓶を預かってきている。

「やっぱりイチゴも来るよねー」

前回はアプリコットとブルーベリーから、アプリコットにした。
イチゴもブルーベリーも、ジャムの定番だ。当然、その要望が来ないわけがない。
しかしイチゴ…。イチゴはココロの一番の好物だ。好きが興じて、スキルを外して自分で育てているくらいだ。当然、まだ実っていない。

「まぁ、材料が無いから作ろうにも作れないんだけどね」

ということで、イチゴは自然却下になった。いや、もしあったとしても、自分用に回すためにしたかもしれないが。
そのため、今回はレモンジャムになった。オレンジと同様マーマレードにする。

皮をむいて千切りにして一度茹で、水にさらす。白綿を取り除き、果肉、薄皮、種と分ける。
果肉と皮、それと同量の砂糖、後々取り出せるように薄皮と種を料理用のネットにいれて火にかける。
灰汁をせっせと取り除き、煮立つのを待つ。途中で薄皮と種を取り除き、火にかけてる時間を確認したのち、火を止めて瓶詰にする。
ライラ陛下とリックに渡す分以外に少し残った。せっかくだからおやつに使うため、取っておく。
ジャムを詰めた瓶を熱処理して、あとは冷めるのを待つだけだ。

「量はそんなにないから、プチパイにでもしようかな」

以前買ってきておいた冷凍パイシートを取り出す。
すぐに使いたいが出したばかりなので少し使いずらい。

「リンーちょっといい?」
「はーい!」

火を使っている間は、ニコとユキがこちらに来ないように妖精たちと遊んでもらっている。
以前はお手伝いとユキの相手だったが、ニコも加わったので全員そちらに回ってもらった。何か手が必要な時には、その都度呼ぶようにしている。

「このパイシートをしたいんだけど、出来る?」
「できるよー」

チョンとパイシートに触っただけなのに、すぐに解凍されたのがわかる。
麺棒で伸ばして12等分する。そのうち6枚にジャムを載せて、残り6枚に切り込みを入れてジャムを挟むように乗せる。端をフォークでつぶすようにしてシート同士をくっつけて、溶き卵を全体に塗り、予熱したオーブンへ。
レモンジャムはそこで終わったので、別のジャムを使ってもう2回同じ工程を繰り返すと、計18個のプチパイの完成だ。
切れ目を入れてあるので、どれがどのジャムを使っているのかわかりやすい。

後のお楽しみということで完成したパイを冷蔵庫に保存して、同じく完成していたジャムを一つライラ陛下に送る。
お昼用におにぎりをいくつか握って、もう一つのジャムをリックに届けるために出かけた。


「ありがとうございます。またお願いします」
「いえ、こちらこそ。じゃあ、また」

ジャムを渡して軽く会話を交わし、今日はリックの家を後にした。
すぐに済むからとニコを馬車で待たせているし、今日はこの後買い物予定だ。

「お待たせ。クッキー、お願い」

目的の場所を指定すると、クッキーがゆっくりと動き出す。

「?」
「ん?あ、今日は少しお買い物していくよ」

いつもと違う道に向かい始めたので、不思議そうな顔をしている。
買い物も、いつもとは違うところに向かっているのが分かったのだろう。

向かった先は、野菜の種や苗を買った農業センターだ。
少し前から考えていたのだが、ユキの保護からニコを預かるところまで少しバタバタしていた。
ニコを預かって一週間(もうそんなに経ったのかと思わなくもないが)。ようやく落ち着き始めたのと、街に出てくるタイミングが合ったので、今日にした。

「さ、行くよ」

ニコを馬車から降ろし、一緒に店に入る。
目的はもう決まっているので、迷わずすすむ。

「あ、よかった。沢山ある」

たどり着いたのは、イチゴの苗。少し多めに苗をカゴに入れていく。
それを植える場所はもう確保してある。
ライラ陛下がイチゴジャムを望まないはずがないということと、自分がもっと食べたいという思いが強く出たためだ。

イチゴの苗を購入し終えて、家に帰る。
すでに苗を植えられる状態なので、自動農園のスキルを適応するため、久しぶりにスキルを使用した。
レシピツリー(そう呼ぶのがなぜかしっくりくるのでそう呼んでいる、レシピ自動保存のスキルの事)は、増えていくのが楽しくてよく開いているし、自動畜産は動物たちの健康確認に欠かせない。
一方で、自動農園はあまり開く機会がない。こうして新しい苗を植える時か、時々ふとした時に成長具合を見る程度だ。これからはなるべく見るようにしよう。

イチゴの苗も植え終わったところで、少し早いがおやつにする。
妖精たちには一つずつ、残りをニコに。ニコが食べきれなかった分をココロが食べた。
プチパイもおいしいけれど、今度はワンホールのパイを焼こうかなと、1人決意した。

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