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第7話(3)防衛戦の果てに

「古代文明人が何の用やねん⁉」

「そればっかりは聞いてみないと分からないよ~」

「また砲撃が来るぞ!」

 大洋の言葉通り、ロブスターが三度そのはさみからビームを発射した。正確に狙いを電光石火に定めてきている。

「くっ!」

「回避しきれん! ……って、ええっ⁉」

 隼子が驚く。二体のインフィニが電光石火をかばったのである。

「ど、どういうこっちゃ……?」

「どうもこうもない」

 水狩田がモニターを開き、大洋たちに告げる。

「さっさと大会運営からのメッセージを確認しろ」

「……大会は中止! 大至急敵を迎撃せよ⁉ って、ウチらがやるんか⁉」

「未確認だけど、防衛軍は周辺海域の敵部隊を迎撃に出払ってしまっているみたいね、今動けるのはアタシらだけってことさ」

 同じく回線を開いて話しかけてきた海江田に閃は頷く。

「人類同士で争っている場合じゃないってことだね~」

「そういうこと」

「奴が海に潜ったぞ!」

 大洋の言葉に全員がすぐさまモニターを確認する。ロブスター型ロボットが海中に姿を消したのだ。

「撤退したんか……?」

「そういう訳ではないみたいだよ~」

「白衣ちゃんの言う通りだね」

「目標を切り替えた……」

「切り替えた……?」

 大洋の呟きに水狩田が反応する。

「レーダーで追える。ここまできたらステルス機能を使う必要はないってことだ」

「こっちも確認したよ~」

「これは……狙いは宇宙センターか!」

 ロブスター型ロボットが海中を急速潜航し、宇宙センター方面へと向かっているのが、電光石火のモニターでも確認することが出来た。

「アカン! なんちゅうスピードや!」

「種子島宇宙センターは前世紀からこの国の宇宙開発の要だ、むざむざ破壊されるわけにはいかない、何としても君たちで阻止してくれ! って、大会運営のお偉いさんたちが騒いでいるよ……簡単に言ってくれるね」

 海江田が淡々と呟く。大洋が閃に問う。

「速いな……陸地を走って追いつけるか?」

「それだと無理だね。他の方法なら……」

「他の方法?」

「そう、他のね」

 水狩田の問いに閃が笑顔で頷いた。



 ロブスター型ロボットが再び海面に顔を出した。宇宙センターは目と鼻の先である。それを確認すると、ロブスターははさみを広げ、ビームを発射しようとした。

「させへんで!」

「⁉」

 銅色にカラーリングを変化させ、翼を広げた電光石火が上空からロブスターを狙い撃った。直撃こそならなかったが、照準が狂ったロブスターの砲撃は宇宙センターの建物を僅かに掠めるに留まった。

「そんなモードも隠し持っていたとは……」

 インフィニ2号機を乗っていた電光石火から飛び降りさせて、地上に着地した水狩田が忌々し気に呟く。閃が笑う。

「本当は出来る限り隠しておきたかったんだけどね~」

「俺たちにも黙っていたのか?」

「敵を欺くにはまず味方からってね?」

 自分の右隣に席を移した大洋に対して閃はウィンクする。

「いつもなら恨み節の一つも言うてやるところやけど、今日は大目に見たるで、オーセン! オイシイところをよう残してくれたな!」

 メインパイロットの席に座った隼子が喜々として叫ぶ。閃が釘を刺す。

「ジュンジュン、これはあくまで飛行支援モードだからね、直接戦闘は極力避けてね」

「分かっとる!」

「本当かな~?」

「関西ちゃん、奴の上空を旋回して!」

 海江田が隼子に指示を飛ばす。

「了解!」

「どうする気だ?」

「ロブスターの一本釣りさ!」

 海江田は海面に向かって、インフィニ1号機の鞭を振るう。そして鞭を巧みにロブスターに巻き付ける。

「海江田!」

「それ!」

 インフィニ1号機が海中からロブスターを引き上げ、地上に向かって投げつける。そこにはインフィニ2号機が待ち構えていた。水狩田は2号機の右手のクローで飛んできたロブスターを引き裂いた。二つに別れたロブスターが爆発する。

「み、見事だ……」

「さ、流石のコンビネーションやな……」

「お褒めに預かり光栄だね」

「大したことじゃない……」

 感心した大洋たちの言葉に対して、海江田たちは事もなげに返答した。

「水狩田、相手のパイロットは?」

「……激突直前に脱出したようだ」

「ああ、その砂浜に転がっているポットか、回収しよう」

 そして海江田は機体を地上に飛び降りさせた。

「パイロット……そ、そうか、相手にも人が乗っているんやったな……」

「どうするつもりだ?」

 大洋の問いに海江田は冷たい声色で答える。

「そりゃ、捕虜に対してやることは一つだよ……」

「拷問……」

「い、いや、それはアカンで! 条約違反や!」

 水狩田の発した物騒なワードに隼子が色めきたつ。海江田が笑う。

「ははっ、冗談だよ。アタシらがやるのは身柄を拘束するだけさ」

「アタシら?」

「上の連中がどうするかは知らないけどね……まあ、手荒なことはしないでしょ。その先のことには興味もないし」

「知る必要もない」

「成程、『極悪なお姉さん』らしい考え方だね~」

「!」

「海江田」

「……ああ、分かっている」

 閃の冗談めいた言葉に、僅かに動きを止めた海江田だったが、機体の左腕を伸ばして、ポットを回収しようとした。

「捕虜確保となったら、特別ボーナスとか出ないものかね……どぅお⁉」

 身を屈めたインフィニ1号機を強烈な砲撃が襲う。1号機の左半身が大破する。

「な、何……?」

「海江田⁉ くっ!」

 水狩田がモニターを即座に確認する。

「クソ、もう一機いたか! マタタビ、注意しろ!」

「ウチの会社はフタナベや!」

「隼子!」

「ジュンジュン、もっと高度上げて!」

「え?」

 大洋と閃のかけた声も遅く、気が付いた時には、先程のロブスター型ロボットより、ひとまわり巨大なロブスター型ロボットが海面から物凄い勢いで跳ね上がって、電光石火の斜め上まで飛んできていた。

「そ、そんなアホな……ぐおっ⁉」

 巨大ロブスターはしならせた尻尾を振り下ろして、電光石火を叩いた。凄まじい衝撃を受けた電光石火は地面に猛スピードで地上に叩き付けられた。

「「「うわっ‼」」」

「……だから言ったのに……大丈夫、生きてる?」

 水狩田が呆れ気味に大洋たちに声をかける。

「……死んでたら答えられへんやろ!」

「全くだ」

「とりあえず元気か、しぶといな……!」

 巨大ロブスターが手足などを使って、海面を叩き始めた。それによって弾き出された大小様々な水の塊が、電光石火とインフィニ2号機に襲いかかる。

「こ、この水、厄介やな!」

「コンクリート片でも投げつけられているかのようだね~」

「防戦一方だ! 一旦距離を取るぞ! ……どうした?」

 大洋が水狩田に問う。水狩田がわずかに笑みを浮かべて答える

「海江田を置いてはいけない、大事な相棒だからね」

「無事なのか⁉」

「ちょっと意識が朦朧としているけど……なんとかね」

 大洋の叫びに海江田が反応する。

「ならば、そちらの機体か俺たちの機体に乗るんだ!」

「そうしたいのは山々なんだけど……この機体で帰投するのが契約条件の一つだからさ」

「そんなこと言っている場合か⁉」

 大洋の叱るような声に、海江田は苦笑しながら答える。

「ごめんごめん、でもね、コックピットハッチが開かないんだ……脱出ポッドも作動しないし……機体の外には出れそうもないんだ……」

「海江田⁉」

「くっ……」

「大洋!」

「!」

 閃の声を聞き、大洋が巨大ロブスターの方に目をやると、ロブスターは横に大きく尻尾を振りかぶっていた。

「あれで一気に薙ぎ払うつもりや!」

「耐えきれるか⁉」

「さっきの空中のより強烈だ、ガードしても難しい……」

「くそっ!」

「!」

 次の瞬間、小型戦艦が、巨大ロブスターに砲撃を仕掛けた。

「なんだ⁉」

「防衛軍の部隊が間に合ったんか⁉ でもそんな戦艦一隻じゃ……」

「一隻じゃないわよ! よく周りを見なさい!」

 桃色の派手なカラーリングの戦艦から女性の声が響いた。続いて、地上から青色の戦車、ミサイルを積んだ黄色の大型トラック、空中から赤色の戦闘機、海中から緑色の潜水艦が、巨大ロブスターに向かって一斉に攻撃を加えた。思わぬ攻撃を立て続けに喰らって巨大ロブスターもたまらず体勢を崩す。それを見て、戦闘機のパイロットがすかさず指示を飛ばす。

「チャンスだよ! 全員フュージョン‼」

「な、なんだ……?」

 大洋たちが戸惑っている、あっという間に戦闘機と戦車、大型トラック、小型戦艦、潜水艦が一つの機体に合わさり、巨大ロボットの姿になったのである。

「フュージョントゥヴィクトリー、見参‼」

 空中に浮かぶ巨大ロボットが五人の揃った叫び声に合わせてド派手にポーズを決めた。

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