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第2話 『魔王になりたい子』




 少年の第一声は「俺を魔王にしてください」だった。私は理解が追いつかず、その場で動きが止まる。



 その様子を見て少年はハッと思い出すと、姿勢を正した。



「あ、申し遅れました! アベルと言います!! あなたの弟子にしてください!!」



 いや、それはそうだけど!!



 私は姿勢を低くして、少年に合わせると、優しい笑顔で言う。



「いやね。ここは魔物がいなくなったとは言っても危険な森なの。早く仲間のところに帰った方がいいよ」



 すると、少年は首を振る。



「何か帰れない事情があるの?」



 すると少年は首を縦に振る。



 子供が一人でこんな森の奥までくるんだ。しかも魔王になりたいと言う。よっぽどの理由があるに違いない。



 ここは1日だけでも泊めてあげて、そのあと家に帰せばいいだろう。



 私は少年を家の中に入れる。



 私の家は森の中心にある最も大きな魔樹と呼ばれる木に作ったツリーハウスである。
 余生を一人で暮らすために作ったもののため、部屋は小さいが少年一人くらいは泊めることができるだろう。



 少年を家の中に入れると、安心したのか少年の腹が鳴る。



「朝ごはんいる?」



「頂いていいんですか?」



「まぁ、残り物だけどね」



 そう言いスラミーに用意させる。私は少年とリビングで向かい合うように座った。



「どうしてこんなところに?」



 私はずっと気になっていた質問をする。



 普通の人間はこの森に入ることすら嫌う。そんな森なのになぜこの少年はやってきたのだろうか。



「父と喧嘩したんです」



 少年は下を向いて答えた。



「だからって、魔王になりたいなんて……」



「そうしないと父には勝てないんです。父は勇者ですから」



「……え、今なんて?」



「父に勝てないんです」



「いや、その後よ」



「父は勇者ですから」



 その時思い出す。この少年の顔はあの忌々しい勇者に似ていること。



「ままままままー!! ウソーー!!」



 私が驚いているうちにスラミーが料理を運んでくる。



「どうしてここを知ってるの!!」



「父があなたのダンジョンに行った際に、計画書と設計図を拾ったとか」



 だから、作戦がバレバレだったのかー!!



 今思い出せば、ダンジョンには初見殺しの罠ばかりだったのに勇者は無傷で最下層までやってきた。



 少年は改まって言う。



「お願いします! 僕を魔王にしてください」




【後書き】

 わーお、

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