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第5話(4)VSダークホース

 ダークホースがまたもや突っ込んできた。大洋は光に光宗(仮)を構えさせる。

「やけっぱちになったのか……? ならばこれで終わらせる!」

 光は刀をダークホースの胴体部分に向かって横に薙いだ。すると、ダークホースの上半身と下半身が分かれた。マイペースな閃もこれには少々慌てた。

「た、大洋! ちょっとやり過ぎだって!」

「い、いやそれにしては手応えが無かったような……うぉ⁉」

 大洋は驚いた。ダークホースの上半身が光に飛びついてきたからである。

「くっ! な、何だ」

「これがダークホースの別形態『分離モード』です!」

 回線から多田野の声が聴こえてくる。

「あ、安易なネーミングだな⁉」

「余裕ぶっていられるのも今の内ですよ!」

 ダークホースの頭部の口に位置する部分がガバっと開き、鋭い牙が現れた。

「! そ、その牙でまさか⁉」

「そのまさかですよ!」

 多田野はダークホースの牙を操り、光の左肩に思い切り噛み付かせた。

「くっ、離れろ!」

「離れません!」

 光はダークホースを何とか振りほどこうとするが、ダークホース上半身が文字通り喰らい付いて離さない。閃が援護射撃を試みるが、流石の閃もこれには躊躇した。

「的が小さくなっている上によく動く! 下手に撃ったら今度こそ大洋に……」

「気を取られていて良いのか?」

「⁉」

「そのキャノンとガトリングガンが目障りだった。だが、距離さえ詰めてしまえば!」

 ダークホースの下半身がいつの間にか電の死角となる位置までに潜り込んできていた。

「ちぃ!」

 閃は電の左腕を操作し、自身の機体の左斜め後方に位置していたダークホースの下半身に対してひじ打ちを喰らわせようとした。そこに回線から梅原の声が聴こえてきた。

「遅せぇよ!」

「どわぁ!」

 電のエルボーアタックは不発に終わり、先にダークホースの両後ろ脚から繰り出されるキックをもろに喰らってしまった。電は前方に突っ伏すように倒れ込む。

「くそっ!」

 それでも閃はうつ伏せになった電の機体を左半分だけ起こし、ガトリングガンを放とうとしたが、ダークホースの右前脚に踏み潰されてしまう。

「くっ……左腕部がやられたか」

「こっちの銀色は制圧したぜ」

「流石です、キックさん!」

「菊だ! ……いいから早いとこ、その金色の喉笛噛み千切っちまえよ」

「了解! いただきま~す」

「ぐぬぬ……」

 相手チームの物騒な会話も一応耳には入っていたのだが、大洋には纏わりつく相手を振り切ることがまったく出来なかった。

「大洋!」

「くっ! こうなればこっちがやけくそだ!」

「⁉」

「何⁉」

 大洋は両腕を使って光の首から上を引っこ抜いた。直前にサブモニターに切り替えて、視界は確保してある。そしてその視界にダークホースの下半身を捉えた。そちらに目掛けて大洋は光の首とそれに噛み付く相手ごと投げ込んだ。

「ぐおっ⁉」

「な……⁉」

 奇跡的な偶然か、ダークホースの上半身と下半身が再びくっついた。但し、上半身は裏表逆の状態になってしまっている。多田野が慌てる。

「キックさん! こ、これはどういう状況ですか⁉」

「落ち着け! 恐らく接触したことによって、分離モードが強制解除になったんじゃ! もう一度分離して、体勢を立て直す!」

「そうはさせん!」

 大洋は遠隔操作で、光のヘッドバルカンをダークホースの上半身に向けて放った。予想だにしない至近距離からの攻撃を受け、多田野は混乱に陥る。

「どわぁ⁉」

「今だ!」

 大洋が機体を素早く走らせて、ダークホースに飛び乗った。そして、すぐさま相手の上半身を羽交い絞めにする。

「ぬっ!」

「暴れ馬め! 大人しくしろ!」

「ちぃ! 振り落とす!」

 梅原はダークホースの下半身を激しく上下動させ、光を落馬させようとする。しかし、そうはさせまいと光は必死にしがみつく。大洋が叫ぶ。

「閃、後は何とかしてくれ!」

「ちょっとカオスな戦況だな……」

「しまった! 銀色め、いつの間にあんな位置に⁉」

 梅原は距離を取った電の姿を確認した。

「返すよ、隠し玉!」

 閃は電の右腕を使って、転がっていたランスを拾って思い切り投げつけた。ランスがダークホースの左前脚に突き刺さる。

「うおっ⁉」

 ダークホースは体勢を崩し、膝を突いた。閃は間髪入れずに、電のキャノンを構える。

「動いていない的ならば当てるのは容易い……!」

 電のキャノンが火を噴いた。今度はダークホースの左後脚を撃ち抜いた。バランスを失ったダークホースはたまらず横倒しの状態になる。それを見た審判が即座に判定を下す。

「ダークホース、これ以上の戦闘継続は不可能と判断! よって、勝者、二辺工業!」

「やった~♪」

 喜ぶ閃の声を聞きながら、大洋はふうと安堵の溜息をついた。



「お疲れさまでした」

「お疲れさまで~す」

 大洋と閃が試合終了後の撤収作業を行っている梅原と多田野に声を掛けた。

「自分の首をもぎ取るなんて、全くイカれた戦い方をしやがって……アンタ、その恰好だけじゃなく、頭もどうかしているんじゃろ?」

「それは同感~」

「そういうアンタもじゃ。味方が射線上におっても構わず撃つなんて……」

「……」

「気にしなくて良いですよ、キックさんがこういう物言いをする時は、ある意味褒めているんです。まったく素直じゃないんだから……⁉」

 梅原が多田野の尻を思い切り蹴り上げる。多田野は悶絶しながらしゃがみ込む。

「余計なことを言うな……!」

「ああ、ご指導ありがとうございます……あ、大洋さん、今後の健闘を祈ります……」

「あ、ありがとう……」

 多田野のエールに対し、大洋は若干引き気味の笑顔で答えた。

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