思い出と崩壊
もう14年も昔のことなので、自分は覚えてないが、お母さんから聞いた話。
わたしはまだ赤ちゃんだった。
ハイハイし始めた頃、隣の家に行ったとき、当時、一歳だった祐太と仲良くなったらしいのだ。
記憶はほとんどないけど。
どうして仲良くなったのか分からない。
運命って本当にあるのかな?
あなた達と出逢えたことは大切な思い出です
どれも遠い昔なので、その記憶が消えるのが怖いのだ。
こんなことなんかなければ今もみんなで笑っていられたのですか?
途端に階下から母の叫び声が聞こえた。
「思い出話どころじゃないわね。」
由利亜さんが武器を身構える。
わたしは大鎌をそっと握り締めた。
赤い三日月状の刃が鈍く光った気がした。
慌てて階段を下った。
嫌な予感は当たってしまったのだ。
家のなかに奴らがいた。
母に奴らがしがみついて噛みつこうとしている。
むやみに日本刀や弓、薙刀を振り回すと母を傷つけかねない。
周りはそのせいでゾンビを倒せずにいた。
考えるより先に体が動いた。
大鎌を床に放り出し、ゾンビに突っ込んで行く。
ー守らなきゃー
「なにやってんだ、馬鹿!!」
みんなの悲鳴にも似た叫び声なんか聞こえなかった。
死んだって構わないー
彼女はそう思った。