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第4話(3)大会初戦前日

「一回戦の相手ということは……大分県第一代表の小堀(こぼり)工業さん?」

 閃の問いに恰幅の良い人物が大きく頷く。

「そうたい! そしてウチが小堀工業自慢のロボット、『卓越(たくえつ)』のメインパイロットば務める、増子益子(ましこますこ)たい!」

「おばさんだったぞ!」

「失礼なこと言うな! 聞こえるやろ!」

 増子が語り始める。

「なんでこんな何の変哲もない普通のおばさんがロボットのパイロットに……? そう思っているやろ? 何故ウチがパイロットに選ばれたかというと、そう、あれは去年の暑い夏の日のことだったと……」

「急に語り始めた⁉」

「あ、いたいた! ちょっと何やっているんすか、増子さん⁉」

 一人の青年が走り寄ってきた。

「なんね、曽我部君?」

「なんね、じゃないっすよ! 急に居なくならないで下さいよ!」

「今、一回戦の相手に挨拶ばしとったたい」

「え⁉」

「こちらが『卓越』のサブパイロット、曽我部君たい」

「あ、どうも曽我部と申します、どうぞよろしく……じゃないっすよ!」

「なんね!」

「こんな所で対戦相手に油売っている場合じゃないんですって! ミーティングが始まりますから、早く宿舎に入りますよ!」

「いや、ちょっと家族に種子島のお土産ば買おうと……」

「遊びにきたんじゃないっすよ! ほら、早く行きますよ! 全く、何で俺がこんな保護者みたいなことをしなきゃならないんだ……」

 曽我部と名乗った青年がぶつぶつと不満を漏らしながら増子の背中を押して、宿舎の方へと向かっていった。

「あれが一回戦の相手か、なかなか手強そうだな……」

「いや、今のどこでそう思ったんや⁉」

「感じなかったのか? 強者のオーラを……」

「生憎、全く!」

「まあ、とりあえず私たちも宿舎に入ろうか~」

 閃に促されて、大洋たちも宿舎に足を向けた。



 大洋たちは宿舎で閃の司会でミーティングを開始した。

「じゃあ、明日の試合について対策会議を始めようと思うんだけど~」

「その前にちょっと良いか?」

「どうしたの、大洋?」

「今更で恐縮だが、大会方式について確認したいんだが……」

「してなかったんかい……」

 呑気なことを言い出す大洋に隼子が呆れる。

「すまん……」

「まあ良いよ。この一か月、光の操縦に慣れることに専念していたからね」

 閃は小型のタブレットを操作し、大会プログラムを開き、説明を始める。

「この大会の試合は最大3対3で行われるんだ」

「つまり、電、光、石火と3体とも出せる訳だな」

「そう。但し、互いの戦力のある程度の均衡を保つため、相手より多く出せる機体は1体だけなんだ」

「そうか。ん、ということは……?」

「明日の対戦相手、小堀工業は今大会、卓越1体しか登録していない、だからこちらも3体の内、2体しか出せないんだよ」

「そうなのか……」

「というわけで……」

 閃がプログラムを閉じて、大洋と隼子、二人の顔を見る。

「明日は光と石火、大洋とジュンジュンに出てもらうよ~」

「ええっ⁉」

「そこ、そんな驚くとこかな~?」

「戦闘狂気質があるお前は出たがるものだと思ったんだが……」

「いや、どんな気質だよ……これは相手を冷静に分析した結果だよ。これを見て」

閃は宿舎に持ち込んだモニターに映像を流す。そこには白と青のストライプが特徴的な機体が戦う様子が映っていた。

「これは……卓越やな」

「そう、相手のロボット、卓越の大分県予選の映像だよ」

「地上戦に特化した機体だな、スピードもかなりのものがあるようだ……」

 大洋の言葉に閃が頷く。

「うん。だから、飛行能力がある石火で空中から攻撃して欲しい。相手の注意が逸れた所を光が一気に間合いを詰めて……」

「光宗でたたっ斬ると……!」

 大洋が右手を左の手のひらにぶつける。

「いや、大会とはいえ何かあったら困るから模擬戦用に用意した光宗(仮)の方を使ってもらうけどね~」

 大洋がうなだれる。

「……(仮)であれをアレすると……」

「そんな露骨にトーンダウンせんでもええやろ……」

「以上、ミーティング終わり!」

「いや、終わりかい! もうちょっと何かないの?」

 隼子の問いに閃が腕を組む。

「う~ん、なにか隠し玉を用意している可能性がなきにしもあらずだね~」

「隠し玉?」

「こっちで言う電光石火への合体機能とかさ、向こうも県予選レベルでは全ての性能を見せてはいないと思うんだよね~」

「なるほどな……」

「データが無いのはあっちも同じだから、その辺は五分五分じゃないかな。まあ後は戦ってみてからのお楽しみということで……」

「いや、お楽しみって……」

「よし、風呂に入ってくる!」

「私はご飯を食べてこよ~バイキング結構豪華なんだって~」

「いや、マイペースやなアンタら!」

 隼子のみが不安を抱える中、大会初戦当日を迎えた。

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