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リベンジマッチ

「て、敵襲⁉」
村人の一人が「信じられない」といった様子で叫ぶ。そしてそれをきっかけに不安が他の村人たちにも広がっていく。あっという間に俺への興味が敵への恐怖に変わった。

まあ、それはそうか。俺が一人合点していると、
「カラードさま。今こそ敵を倒し、【真の勇者】の出現を知らしめる時です。」
すぐ横のセバスチャンが諭すように言う。【聖剣】の封印を解いてそれを手にした俺としても、もう侮られているわけにはいかない。俺は頷くと、【聖剣】を掴んだまま村唯一の門へと走りだした。セバスチャンや一部の村人も俺の後を追いかけて走り出す。

正直「お前が祖父の択んだ【真の勇者】だ」と言うセバスチャンの言葉を俺は半信半疑で捉えていた。だが、セバスチャンの言葉通り【聖剣】を手にできた俺はもしかすると本当に【真の勇者】なのではないか?そんな非現実主義的な感情が俺を急かし続けた。

村の中心にある広場から東の外れにある門までは約三十カイコ―ある。カイコ―はエイ王国で使われている長さの単位で、転生者曰く一カイコ―と百メートルがほぼ同じらしい。だからそこそこ距離がある。しかし、俺たちが三十カイコ―も走る必要はなかった。魔族の方もこちらへ向かっていたのである。
「あっ、コーホーだ……。」
不意に後ろから声が聞こえた。立ち止まって前の方を見ると、確かにコーホーである。

「もう一回お前と戦えるなんてな。さあ、リベンジマッチと行こうじゃないか。」
俺はそう呟くと【聖剣】をきちんと構えてコーホーへ近づく。
「おいコーホー。勝負だ!」
俺が叫ぶと、コーホーはこちらへ向かってくる。するとその時、異変が起きた。
「な、なんだ?これ……。」

それもそのはず、急にコーホーと自分のステータスが視界へ現れたのだ。まるでゲームのように。
【コーホー(C級魔族)・HP:3500・攻撃:赤いビームLv.5(必殺技)・青いビームLv.3・スキル:カウンター】
【カラード(真の勇者)・レベル1・HP:200・攻撃:斬撃Lv.1・防御:簡易シールドLv.1・魔法:なし・スキル:一撃必殺・装備:聖剣】

そうか。これがステータスメガネ。【真の勇者】には勝手についてくるのかな。まあいい。取りあえずリベンジマッチと行くか。

[コーホーの攻撃]
『コーホーは青いビームを撃った!勇者は回避した。勇者に0のダメージ!』

「クソ、いきなり撃ってきやがった。でも、前よりは俺も慣れている?」
俺は呟く。これが【真の勇者】の自信なのか。

[カラードの攻撃]
『勇者の斬撃!コーホーのカウンター!勇者に500のダメージ!』

「なっ……!」
分かっていた。俺はコーホーには勝てないって。後ろにいた村人たちからは「やっぱりザクじゃーね……。」というあきらめの声が聞こえる。「カラードさま……。」驚愕を隠せないセバスチャンの声も。

HPが0になる=死ではない。あくまで仮死状態である。だがこの距離だとコーホーにとどめを刺される。魔族特有の【永死信号《デス・サイン》】というやつだ。それを仮死体に打ち込まれると俺は死ぬ。クソ!俺は【真の勇者】じゃなかったのか。

俺は意識を飛ばした。刹那、コーホーが【永死信号《デス・サイン》】を打ち込むのを第六感で感じる。これで終わり……。

その時、【聖剣】が赤く光った。

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