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聖剣解放

広場には相変わらずたくさんの人がいた。王城からの伝達を読む人、長椅子に座っている老夫婦、そこらじゅうを走り回っている子供……。これが今は亡き父の遺した功績だと思うと泣きそうになる。
そして広場の真ん中にそれはあった。

「じい、これだな。【聖剣】は。」
俺がそれを指さしながら言うと、セバスチャンは「そうですとも」といった様子で頷く。
それは岩に差さっている上に、鎖で岩と結ばれている。【真の勇者】はこれをいともたやすく抜けるというが、本当なのだろうか?
「おお……。」
俺が抜こうとする前に、セバスチャンが声を漏らした。
「じい。どうした?」
セバスチャンのあまりに突然すぎる反応を不思議に思った俺は、セバスチャンに問う。

「いえ。五十年前に起きた惨禍を思い出してしまったもので……。」
セバスチャンの言葉。俺は魔族軍の侵攻かと想像してしまう。だが、
「五十年前、この村は一度滅びかけたのです。」
セバスチャンがそう続けたので俺は驚き、セバスチャンの方を凝視する。
「五十年前、レンリン様が魔王をこの【聖剣】で斬り殺した時、【聖剣】が魔王の血を取り込み、【悪魔《ザ・ビースト》の剣《ソード》】となったのです。」
セバスチャンは重々しい語り口で話し始めると、こう続けた。
「【悪魔《ザ・ビースト》の剣《ソード》】】は魔王をも超える魔力を持っており、その魔力によって村は吸い上げられました。しかし当時の魔法使いが自分の魔力と相殺、足りない部分は自分の魂で補ったことで【悪魔《ザ・ビースト》の剣《ソード》】は【聖剣】へと回帰。しかし魔法使いは消滅しました。

レンリン様の名声を損なわぬため、当時のパーティーメンバー関係者と一部の宮廷関係者にしかこのことは伝えられず、『魔法使いは死去・村がおかしなことになったのは、勇者の必殺技に魔法使いの魔力が重なり、その攻撃と魔王の防御が拮抗して一時的に世界魔力の限界量を超えたため』と発表されましたが、真実を知るものはこのことを【剣《ソード》の覚醒《・アウェイクニング》】と呼んでいます。」
「【剣《ソード》の覚醒《・アウェイクニング》】……。」
そんなことがあったなんて……。俺は絶句した。国ぐるみで隠すなんてよっぽど大災禍だったに違いない。そしてそれを隠していた祖父は相当辛かっただろう。
「この村を守るにはこの剣の覚醒リスクを《《俺が》》背負わなければならないんだな?」

しつこいとは思っているが、もう一度俺はセバスチャンに確認する。これ以外にもっと良い手があるのなら、俺はそれを使う。甘っちょろいと思われるかもしれないが、それが俺のやり方である。
「はい。この剣を抜くしか方法がないのです。」
セバスチャンはもう一度頷く。
俺は覚悟を決めて【聖剣】の前に立つ。刹那、周りの人たちが俺の方を見るのを感じた。そして俺は時折聞こえてくるシニカルな声を無視して【聖剣】に手をかける。セバスチャンの言葉をまだ完全に信じたわけではない。しかし、ここまでセバスチャンの言葉に重みがあるとなると……。俺は【聖剣】を引っ張る。すると、いとも簡単に「スルリ」と抜けた。周りの驚愕の声もつかの間、
ガランガランガランガラン……。
敵襲を告げるベルが鳴った。

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