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第2話 深淵に歌えば/錆びれた心臓・その①

「して、あんたはなにゆえ右手首にロープなんて巻いてらっしゃるの?」
「こいつがねぇと俺死ぬらしいんだわ」
「そういう病気的な奴?」
「ンまぁ、そうだな」

 いろいろとあるんだね。俺の知らない世界ってのは。でもそういう世界とか俺けっこう好きよ。なんだかファンタジー小説って気がするじゃない。さっこんの俺はなんだかつまらない物語ばかりを呼んでいるような気がしてならなかったからね。ああ、これは比喩表現的なアレだよ。わかりづらくってごめんなさいね。

「んじゃこっちも聞くが、なんでお前は鎖のない手錠をかけてんだ?」
「父親に『ずっとこうしてろ』なんていうフウに言われてるんすよ。なんか、これを付けてないとお前はやらかすとかなんとか」
「ほぉ~っ。犯罪者かテメェ」
「失礼しちゃうな!」

 俺が犯罪者だって? そんなの蝸牛に向かって「お前はチーターだ」って言うくらいバカなことだ。本当にバカげてるよ。悔い改めて。

「あともう少しでつくぜ」
「へぇ~っ。あ、あれっすか! あの赤い屋根のレンガの家!」
「ああ」

 へぇ~っ! 結構イイとこに住んでるじゃないの! 俺の家なんて仕事帰りのパラノイアどもがしてったゲロであふれてるっていうのに、この家1個もゲロ地帯ねぇじゃん! 家なのにゲロねぇじゃん! ゲロ無しハウス! ギャハハハハハハ!

「ゲロねぇなんて珍しい家っすね」
「あたりにスライム放し飼いしてんだよ」
「な~る。スライムって人間の胃液好きっすもんね」
「ああ」

 ドメニコーニさんの部下Aと部下Bが俺の腕を掴んで、レンガの家の中に突っ込んだ。そして俺はびっくりしてしまったね。なんたって吹き抜けてたんだもん。例えるならハコ? 外から見ると、部屋の数とか20くらいありそうな感じの窓の数だったけど、全部あれ嘘よ。窓或ところとか、なんか体育館のあの上のところみたいな感じになってる。それがいくつもあって、マジで高所恐怖症の俺からしたらマジに怖い。

「運動場も兼ねてたりするからこういう作りになってんだ」
「ジムみたいな?」
「そういうこった」

 へぇ~っ。俺ジム行ったことないから知らなかったけど、ジムってこういうのなんだな。初めて知った喜び、真実ウレシイ。

「んじゃ、さっそく始めるか」
「なにを?」
「――1発殴らせろ」

 マジ狂いすぎて泣きまくり。
 狂人だぜ、ドメニコーニさんよォ。

「喧嘩嫌いっす」

 人を殴ったりけったりスンの嫌い。だって相手泣かしちゃうことあるし、こっちも痛くなるしでいいことがまったくないもの。良いことが無いのにやる意味が分からないっていうかなんというか……。

「喧嘩じゃアないぜ。お前の力量を測るんだ」
「なるほど」

 じゃあ本気でやらなくっちゃア、失礼ってもんか! そんなことを考えて、俺は拳を握りしめ、息を大きく吸い、大きく踏み込み、腕を引き絞る。ボンデージ流闘魔道1970式――!

「〝ブラック・パラノイド〟」

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