バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

地下大迷宮の見回り2

 地下大迷宮は、元々存在した王墓を護る地下迷宮を取り込んで創られた物なので、ダンジョンクリエーターの力だけで創られた地下迷宮よりも広い。だが、実在している物を取り込んだ部分については形を変えることが出来なかった。
 それでも成長して全体でかなりの広さが在るので、王墓の地下迷宮の部分など今では僅かな範囲でしかない。
 その王墓の部分を過ぎたれいは、一度休憩をすることにした。れいに休憩は不要ではあるのだが、時間はあるので何となくそういった遊びも入れてみることにしたのだった。
 ダンジョンクリエーターが創る地下迷宮は、元々攻略されることを前提に創られているので、各階層とまでいくかはダンジョンクリエーター次第ではあるが、それでもそこそこの頻度で必要なモノがある程度揃えられた休憩場所が用意されている。中にはセーフティーゾーンとして、休憩場所を魔物が侵入してこない空間にしているダンジョンクリエーターも存在するほど。
 そういった休憩場所には、飲んでも問題ない水が何らかの形で用意されている。泉であったり湧き水であったりと様々。それと、食用可能な木か植物が少し用意されている場合もある。こちらの方はダンジョンクリエーター次第ではあった。
 現在れいが居る場所の休憩場所では、浅い井戸とほんのり甘い小さな実を幾つも付ける背の低い植物が少し生えていた。それと少し離れた場所に数人で座れる長椅子が一つだけポツンと設置されている。
 井戸の方は、井戸の形をした水瓶のように思えるほどに浅いが、それでも水はギリギリ手が届かないぐらいの深さにある。
 誰が管理しているのか分からないような場所に在る井戸だが、普通に飲めるぐらいには奇麗だった。
 小さな実の方は、ツブツブした赤く小さな実が集まって出来た実のようで、少し力を入れるだけで簡単に裂ける。
 食べてみるとほんのりと甘く、疲れている時には嬉しい甘さなのかもしれない。ただ、小さいので大して腹には溜まらない。
 休憩場所に用意されている水も食料も毒などは一切無く、仮に休憩場所がセーフティーゾーンでなくとも、魔物はそれに手をつけないようになっている。
 そんな休憩場所で休んだ後、れいは先へと進むことにする。既に現在地で出てくる魔物は、単体でも外の人では集団でなければ対処不可能な強さになっていたが、れいにとっては気にするほどではない。向こうから避けてくれるというのもあるが、そもそもれいにとっては最初の階層から強さは大して変化していないのだから。
 地下大迷宮に入って数日程経過したところで、れいは中盤の終わりに差し掛かる。途中途中で休憩を入れたりしてゆっくり移動しているとはいえ、各階層のスタートからゴールまでほぼ一直線に進んでいるので、やはり地下大迷宮はかなり広い。
 途中から坑道風から洞窟風になり、今では沈没船内風の見た目に変わっている。出てくる魔物も非実体のゴースト系と分類される存在がほとんどで、この辺りと戦うのは大変そうだった。
 それでも見ている分では変化は楽しいもの。れいの気分は既に観光に近いかもしれない。
 それからもどんどん進んでいき、予定通りに十日目に最下層に到着する。ここは正統派の地下迷宮といった感じで、レンガを組み上げたような見た目の壁や床や天井をしている。
 出てくる魔物も厳つい魔物が多く、いかにも強敵ですといった凶悪な面構えをしているものばかり。実際一匹でも外に出せば、国の一つや二つは簡単に潰せるだろう。
 そんな魔物達の横を通り、れいはダンジョンマスターの待つ最奥を目指す。
 最下層は地下大迷宮で最も広く、罠もまたかなり多い。ここまで来れる者はかなりの猛者であるし、攻略前提とはいえ、ダンジョンマスターもそう易々と斃される気はないということだ。
 そんな、本来であればダンジョンマスターの最後のあがきとも言うべき階層を、れいは危なげなく進んでいく。罠の場所を把握しているというのもあるが、仮に情報が無くとも同じだっただろう。
 そして最奥の間の前に到着する。
 れいが最奥の間に続く、仰々しくも重厚な扉の前に立つと、地鳴りのような音を立てて、ひとりでにその扉が開いていく。

しおり