13 リンゴの小玉事件
長年、信州に住んでいた。
秋、リンゴの季節になり、贈答用のリンゴを注文することになった。
電話で連絡すると、農協の営業担当者がたまたまいなくて、営業慣れしていない年寄が電話に出た。長野県の農協らしい・・・。
年寄は、リンゴの大きさを「大玉」だとか「中玉」だとか、話していたが、埒が開かない。
長いこと話していると、正式にはリンゴの等級に、「秀」だの「特秀」だの、それも、「特秀」の「M」や「L」と呼ぶのがわかり、「特秀」の「L」を注文して、要領を得ない年寄りに憤慨して電話を切った。
後日、発送完了の伝票が送られてきて、伝票を見て、さらに大憤慨。
あれほど、
「特秀」の「L」の「大玉」を送れ」
と言ったのにと。
抗議の電話をしようと思ったが、伝票を確認すると、
よりにもよって、リンゴを発送した担当者の記入欄に、
『小玉』という人物の名があり、『小玉』の捺印がしてあったのを見まちがえていた。
送られたリンゴは「特秀」の「L」だった。
あやうくとんでもない失敗をしでかすところだった。
(了)