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3話

「……で、どうしてこうなったんだろう」

外観と内観の大きさが違う。そんな事があるものか。
いや、今いるここがそうなのだから全否定も出来兼ねている。
外観より内観の方が小さいのなら、まだわかる。設計の都合上とかのアレだ。
しかし、今目の前にしているのは、外観に比べて内観の方が明らかに大きいのだ。

大きさの例を上げるとすれば、鶏小屋が普通の大きさの一軒家で、それを2個繋げた位なのが動物小屋の外観。
それに比べて、内観は小学校にある体育館ぐらいの大きさはありそうだ。
念の為一度外に出て裏へ回ってみたりもしたが、残念ながら勘違いでも何でもなかった。

では何故こんな事になったのか。それは妖精達にも分からなかった。
ココロの思い通りに作っただけだと言う。
ちなみに鶏小屋も一応確認してみたが、こちらはそんなに違いはなかった。
……うん、パッと見分からないぐらい、外観より内観の方が大きいのは、分かった。

まぁどちらも、作った大きさよりも中が大きいのは、保留する事にした。そのままどこかへ行ってしまえば、気にしなくてすむ、かも知れない。

一先ず、中がどうなっているのか見ておくことにした。
中はガランとしている。まだ何も飼っていないから当然と言えば当然だ。
けれど、細かく区間分けされているのか、所々に柵がある。
入り口から真っ直ぐ奥に向かって、通路が確保されており、向かって左側が2分割、右側が3分割されている。
どうやら動物を種類ごとに入れられるようで、左側が牛(肉牛、乳牛)右側が豚、羊、山羊を入れる事が出来る。
さらに、それぞれの区間の中は2分割されていて、大人用と子供用になっている。
けれど1つだけ、牛用の区間の片方は3分割になっている。大人用と子供用の他に、ミルクの出せなくなった乳牛用、だそうだ。
ちなみにこれは、タブレットに表示が出た、動物小屋内面図(説明付き)から得た情報である。

「うわぁ、牛しか考えてなかったんだけどなー」

まさか食肉…しかも3種類も。ん?山羊はミルク用…だよ、ね?
これは、買えと言われているのだろうか。誰に?分からないけど。
ちなみに鶏小屋も確認してみたけど、こちらも雛、成鳥(卵と肉)、卵の産めなくなった成鳥用と、しっかり分けられてました。

「えー、うん、まぁ…」

なんとも言えない言葉しか出てこない。
設備も整って、けれど自分でやる必要が無い(何を、とは言わない)のなら、無くはないのかと、思ってしまった。
この際だから、開き直る。食用に品種改良された動物は、美味しく食べるのが最大の愛情、そして感謝になると、旅行先で見学した牧場主さんが言ってた。気がする。誰が言ってたかは正直覚えてないけど、聞いたことは確かだ。

まぁしかし、この葛藤も買えなければ意味がないけれど。
2つの小屋を後にして、当初の目的を果たしに向かう。
まだ憶測に過ぎないけれど、この東側の端っこのどこかに、外へ出れる場所があると思う。
理由としては、動物小屋が元々あったから。
恐らくみどりさんがいた頃にも、動物を飼育していたんじゃないかと思う。
その頃には、他にも人がココを出入りしていたと言っていたから、家畜産業の盛んな東の国への出入りがしやすいようにしていた、はずだ。

どうやらその考えは間違っていなかったようで、端を歩いてから少しして、不自然な位置に鍵穴が浮いているのが見えた。
それは数日前、ここに始めてきた時に見た鍵穴と、全く同じだった。
それならば、タブレットに収納されている鍵が使えるんじゃないかと、タブレットを取り出す。

「…えーつと、あの時どうやって取り出したんだっけ?」

あの時はまだ何も理解していない時だったから、されるがまま状態だった。
それが今では、広い畑を作って、動物小屋も建てて、馬にも乗って……うん、色々やりすぎている事は理解している。
けれど、楽しくなってきているのは事実だ。なにより自由に自分の時間を使えるというのが1番大きい。

そんな事を考えていると、鍵が出てきた。
自動的に鍵穴に入り、ガチャリと解錠の音が聞こえ、再びタブレットへ戻っていく。
念の為、クッキーの形態を輿から馬車に変えてから、妖精達に出かけてくることを伝えて外へ出る。
外は南の国と同様、道が途中まで整備されている。
違うのは周り。南の国は開けた場所になっていて、少し離れたところに林があった。
けれとこちらは、道は整備されているとはいえ、木々が鬱蒼としている。林道だが森に近いかも知れない。
とはいえ、太陽の光もそれなりに届いているので、暗いということは無い。

「わぁーまたこっちは雰囲気違うねー。ええっと、この道沿いに行けば、いいのかな?」

東の国は、この世界にたどり着いた時にいた街がある所だ。
それがどこにあるのかは不明だし、目的の店があるかどうかも分からない。
一先ず、目の前に見えている道に沿って進むのが、迷わず森の外へ出れる方法だろう。
そう確信を持って、クッキーに進んでもらう。
数分もしない内に、前方が開けてきた。
完全に森から出てくれば、森とは違う緑が、目に飛び込んできた。

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