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湯北署捜索譚

(この物語は年号が語るように架空のものであり、登場人物や建物に実在のものは存在しません。また刑事事件に関して作者は素人です。実際の手法と隔たりがあると思われます)

 平成45年春。湯北署では年に1回あるかないかの大事件に見舞われていた。

「被疑者の大西稀五郎、強盗で居合わせた会社役員を殺人の模様」
「現場から歩いて移動するところを確保」

六手梨警部……警察きっての風雲児。都会の交番で問題を起こし左遷された……は、この事件の担当にされていた。

「持ち込んだ包丁に被疑者の指紋。簡単な事件です」

前任の老警部は退職年を迎え、逮捕から判決まで自らの手柄になるはずだったのにと零しながら、六手梨警部に引きつぎ資料を手渡した。

 湯北署の拘留所は僅か2畳の独房だ。大会社の某人物が扱いについて問題提起したように、居心地は非情に悪い。スマートフォンの持込みも出来ず、外部との接触も断たれている。

「看守さん、早う裁判してくれませんか」

稀五郎は50代のくたびれた男である。働き先では不当に扱われ、人生に疲れている。一見すると人殺しには見えない。

「刑事裁判が終わるまでは貴方は被疑者です。例え現場を見られていても」

看守が一冊のノートと鉛筆を差し出す。

「六手梨警部からの差し入れです。呟かれて困ると話したらこれに日記でも書かせろと言ってました」

稀五郎は名前の割に気の利く警察《ポリこう》だとつぶやいた。

 裁判は1つの証拠だけで押し進めるものではない。今回の場合、証拠となる包丁の指紋に本人の自白、目撃者の証言、防犯カメラ、被害者の検死などがある。証拠を整理、状況を明確にして、誰が犯人かを決めなければならない。

「固定観念を植え付けられるのは嫌だな」

この視点から、目撃者……会社役員の知り合いであるが、その人物の元にはすぐには行かない。近い人物だと偽証の場合がある。ここまでは正しい判断に思える。

「湯北街は温泉街で、旅館があったな」

六手梨は旅館に電話をかけ、松の間を予約する。割烹で出るような料理を味わい、露天風呂に入り放題。色事《コンパニオン》にも手を付ける。同僚に見られて言い広められる。

「来てすぐなのに何豪勢に遊んでいるんですか!」
「左遷されて来た奴はとんでもない奴だな」

週刊誌ネタでもあり、写真を撮られれば、捜査そっちのけで遊んだと問題になるだろう。
六手梨は急に笑い出す。

「フフフ……真相に繋がる証拠を手に入れたぞ!」

わざわざ言うほどのことではない。稀五郎はこの旅館の梅の間で一泊しているという内容だ。この町の住人ではないという証拠なのだが、旅館の女将《おかみ》さんに宿帳を見せてもらっただけだ。

「わざわざ一番高い部屋に行ってそれですかい」

周囲は名の通りの警部に呆れ果てた。
 六手梨警部は喧嘩に滅法強い。小さい頃合気道を習っていたらしいが、師範を殴って破門されている。

「やるかやられるかなのに、細かい礼儀に拘る武道は間違っている」

殴った原因がそれである。敵と見れば手が出る。合気道を本気で学んだので、掴みかかられても容易く投げられる。それでも30代の今は、若いときより大分大人しくなったと言われる。湯北街は温泉街特有の治安で、肩に刺青をした男が歩いてきて六手梨に衝突する。

「見ねぇ奴だな」

我々が思っているより刺青男《かれら》は礼儀正しい。相手の様子を見て敵対組織かどうか判断し、別の組のものならば実力で追い払い、警察だったら威嚇するだけだ。法律の網が彼らを用心深くさせている。それにも関わらず、六手梨は下手に出て無事に通り過ぎようとする。

「おっと、前を見ていなくてすみません」

男は六手梨の様子を観察する。

「おやぁ?この顔、この街に来た問題の警部だろ!」

面相は割れている。問題を起こした直後ならさらなる問題化を恐れるだろう。殴ってこの街は組と警察とどっちが偉いか示すこともできる。拳《こぶし》が当たってもそれは偶然だ。ところが衝突の仕返しにと殴りかかった男の腕は、六手梨に掴まれる。

「うをりゃぁぁぁぁ!」

その勢いを使われて天高く放り投げられた。落ちてくると頭を打たないようにと手を添えられる。腰を強かに打ち、しばらくは立ち上がれなかった。

「強ぇ……」

 温泉街に唯一の高校がある。湯北村雨高校という。剣道部があってインターハイ出場の剣士がいたりする。高校で使っている竹刀の銘も村雨。ちょっとかっこいい。

「おじさん警部なんだ。ちょっと剣道部の子に会いに来たんだけど」

村雨高校の生徒に案内されて剣道場に来る。インターハイではない剣道部の子、緋内美鈴さんが出てくる。これが事件の目撃者なのだからやりきれない。心理カウンセラーでも付けたいところだ。

「事件のことなんですが……」

美鈴は六手梨が思っていることとは関係なく本人の思っていることを話し始めた。

「まず、おじ……会社役員をしていたんですが」

会社というもののブラックな会社で本当に悪い叔父だったという。この辺りは目にした引継ぎ資料通り。この街の無法者も騙して疎まれている。

「美鈴は殺される所を見たのか?」
「その瞬間は見ていません。ただ、倒れているおじと、加害者は見ました」

稀五郎と被害者が居たのが確かという証言だ。美鈴は瞬間は見ていないだけでその場所にはいた。他には誰かいなかったのだろうか。それは聞かずとも現場が教えてくれる。
 悪い叔父ならいなくなって良かったのかと思い巡らす。

しかし――
『でも……わたしには本当に優しかったんです』

美鈴は涙を浮かべる。フォローの言葉も見つからない。まあ身内だからなと思う。しかし死んだ者は帰ってこない。

「残酷な質問かもしれないが、この街に来て現場にいた稀五郎のことをどう思うか……?」
「新聞で見ました。関係のない他人です。雇われた殺し屋なんじゃないでしょうか」

六手梨の脳裏に思いが浮かぶ。残念だ。この娘には固定観念が出来ている。

「そうか」

無表情で一言だけ返す。証拠から生まれていない話は、間違いしか生み出さない。
 帰ろうとすると、手を美鈴が掴んでくる。びっくりだ。

「帰りは一緒に帰らせてください。泊まることになるかと思います」

次の調査……現場に向かいたくて断わろうとする。

「現場はうち……二世帯住居です」

これは驚いた。完全なる事故物件にまだ住んでいるのか。さらに彼女は笑顔で話す。

「強い人と一緒じゃないと消されますよ(・・・・・・)

高校のバッグには日本刀が入っている。銃刀法違反じゃないかと思いながらもあえて触れない。

「いいじゃん、強い娘は大好きだぜ」

仮想バトルをして、日本刀を掻い潜って押し倒すところを妄想する。身体つきをちらちら見て当たり判定をする。武道経験から判定は正確だと自負する。

「ちっ、当てられるか、痛そうだから止めておこう」

警部にあるまじき六手梨の脳味噌は、誰かが矯正するべきである。
 美鈴の家は徒歩で2時間かかる。スマートフォンでタクシーを呼ぼうとする。

「あらら……圏外か」

歩いていくしかない。歩きながら取り出したのは携帯型の無線機だ。
署に女子高校生の家に泊まっていくとだけ伝える。署の同僚はざわつく。

「来た警部、名前の通りとんでもない人ですね」
「すぐ問題を起こさせるのも署の管理体制が問われますから伏せておきましょう」

湯北署内、六手梨警部の評判は大暴落中だ。
 ようやく着いた家はごく普通の一戸建て。2世帯住宅と言っていた通りだ。玄関は電気が付けっぱなしだ。防犯の理由もあるのかもしれない。

「両親は都会に出ていて留守なんです。おじが隣に住んでました、と言っても同じ建物ですが」

洗濯、料理、掃除、草取りは全部彼女の仕事になっている。
それでいておじの会社が狙われていたとあっちゃ本当に気の毒だ。

「署ではさらに六手梨《オレ》を泊めるなんて、不幸だとしか思ってなさそうだな」

警部におもてなしできるのが嬉しいのか、楽しそうに庭の野菜を収穫して仕込みを始める。

「日本刀持ってくるほど警戒心があるのか、知らない他人を泊めるほど無警戒なのかさっぱり分からないな」

ろくでもない奴でも肩書きが付いていれば人は信じる。
 現場は前任者によって囲いがされていて誰も触れられないようにしてある。警部特権で立ち入って屈みこんで見てもいいが、検証の様子は録画しないといけない上、下手に触って問題になってもいけないのでやらない。

「遠くから見るだけでも分かるな」

加害者が被害者を包丁で刺したこと。その血痕。その包丁は回収されていて署にある。

「あれ? おかしくないか?」

遠目で見ても、居合わせて刺した手前より、倒れた後ろ側の方が血痕が多い。むしろ後ろから刺して倒れている場所に稀五郎を連れて来たんじゃないのだろうか。現場には稀五郎と役員と美鈴。美鈴は日本刀持ち。

「泊まる六手梨《オレ》が不幸なのか……?」

またまた仮想バトルをして、日本刀を掻い潜って押し倒すところを妄想する。

「いいじゃん、強い娘は大好きだぜ」

結論はそこかと否定されるだろう。冗談はほどほどにして、こっそり美鈴のバッグを開けて日本刀を調べる。当然ながら使った形跡や血痕はない。本人の言ったことしか聞いてないが、優しくしてくれた人物を斬るのはあまりない。

「四人目の男……女かもしれないがいるな」

それが関係者を消しにくると美鈴が主張していることだと思う。

「今夜は眠れない夜になりそうだ」

持ち込んだ菊酒(ねむけざまし)をグラスに注ぎ、未成年と乾杯する。きちんと断っておくが、彼女はウーロン茶な! 誰も姿を現さずに朝日が昇ってくる。署にそのまま帰る。

「泊まった上に酔って帰ってくるなんて……飲ませてはないでしょうね!!!」

署では始末書が六手梨の目の前に置かれた。
 現場に行ったのは湯北署に悪いことばかりではない。六手梨が湯北署内で、真犯人の存在アピールと、美鈴の居場所変更を提案してくる。特に2つ目は説教モードで語る。

「現場に放置とか気が利かない連中だ。なにしてたんだオマエらっ!」

この言葉には誰も文句を言えない。こればかりは六手梨が正しいが、仕事量はかなり増える。

「六手梨さん、勘弁してください」
「事故対策で事故現場があれば呼びかけに出たり、スマホ運転の取り締まりがあったりで最近忙しいんです」

国の政策によって振り回される。同情の余地は大いにある。
高校に近い借家物件を選び、荷物を運び入れる。高校へは警察関係者が送り迎えをする。

「正直、毎日へとへとだ」

六手梨自身の提案だから仕方ないが、会った頃は日本刀を持って怯えていた美鈴に笑顔が戻ったと考えると、かなりいいことをしたと思う。
 ところが署で今日の交通安全指導の報告書を書いていると、同僚が飛び込んでくる。

「たいへんです、六手梨さん。現場が熊によって破壊されました」

最近野生生物が多くなってきたからな、それに美鈴がこっち来ているからな、と思う。念のため聞いてみる。

「真犯人の証拠は……血痕は……?」
「跡形もありませんよ。でも美鈴さんが熊に襲われなかっただけでも六手梨さんのお手柄です」

始末書の処分が、手柄によって帳消しにされるという話が出る。だが六手梨は頭を抱えて蹲る。時々トイレに篭って出てこない。

「お腹大丈夫ですか? 何か食べました?」

なんてこった。これでは稀五郎が犯人ということで片付けられかねない。別の同僚がその言葉を訂正する。

「何食べても平気で頑丈な奴だ。考え事だろう」

証拠として保管してある防犯カメラの映像から血痕をチェックする。

「不鮮明だ。稀五郎と被害者しか映っていない。ここにカメラ付けた奴の責任だ」

悔し紛れにビデオデッキをガンガン叩く。署の同僚に怒られる。壊れるまでは行かなかったらしく、始末書は免れた。

 湯北街に雪が降る。季節外れの雪だ。今日は美鈴の送り迎えは六手梨。交代メンバーに入るのも最初は断られたが人手が足りなすぎてようやく入った。

「署の人っていい人ばかりですね。六手梨さんのような荒っぽい人ばかりかと思ってました」

この印象、会った当日にお酒持ち出したのが悪いのは確かだ。

「……でもいい人なだけじゃ終わらないんです」

間接的に蔑められているのは気のせいで、美鈴は解決力のある警部を求めていることが分かる。

「稀五郎に会うか……?」

雪の日は音が静かだ。湯北署の拘留所の稀五郎の元に、内密で彼女を連れて行く。
 稀五郎は長く拘留されているのに健康状態は悪くない。

「こんな男でも3食の食事と散歩はさせてもらってますから」
「隠しごとはしているか?」

稀五郎の手が一瞬止まる。

「現場で暮らしていた親戚の娘を連れて来ている……警察《オレ》には話さなくていいから、
彼女の安全のためになると思ったことだけ、彼女に話してやってくれ」

留置場の監視カメラをダンボールで覆う。稀五郎と美鈴を2人きりにする。

「美鈴は終わっても聞いた内容を絶対に話すなよ」

留置場の二重扉を閉め、鍵をかける。被疑者と少女を2人きりなんて、ろくでなし行為だ。

「ありがとうございます。話が……できました」

美鈴は笑顔になって帰っていく。署内にもこの不正行為はバレていない。
しかし2人の様子を見ていた六手梨には、不可解な感想が残っていた。

 間に何件もあって先延ばしになっていた検死結果があがってくる。

「たいへんです、六手梨さん。被害者の検死結果が出ました」

同僚から詳しい話を聞く。

「傷から分かったのは、凶器は包丁ではなく刀です。両方刺す使い方なので包丁だとばかり……」

包丁傷と刀傷のサンプル写真を見せられる。

「緊急に同居の美鈴……未成年ですが確保して取調べが開始されます」

口をあんぐりと開ける。現場を案内してくれて彼女の日本刀も調べた。稀五郎は保釈されるのかというと、疑惑は晴れないのでそのままだ。

「凶器は見つかっていません。付近の湖沼を大人数で探していますが」

美鈴が移動後誰かが捨てた……?
あの日本刀はスマートフォンで撮っておくべきだった。六手梨《オレ》の一生の不覚だ。

「六手梨さんなんてその程度ですよ」

同僚にも言われる。

「絶対に美鈴じゃないからな!」

信用はしてもらえない。
 事件検証はまだ続いている。湯北村雨高校で美鈴の日常について親友に聞いて回る。

「おじの話が出たことはないか?」
「いいえ? 2人暮らしなのは聞きました」

話が出ないことは想定内。親戚とはいえ話したくないことの1つに間違いないからだ。

「みれーっち、痣《あざ》作ってきたことあったよね?」

美鈴の話したくない重要なことが浮かび上がってくる。六手梨《オレ》に隠していた……? おじによる美鈴へのDV。それは事件の動機になってしまう。頭を振って気持ちを切り替える。

「もし第四の人物が美鈴の親しい人間だったら?」

美鈴を守るために何かをする、その場合でも守られた美鈴は警察に話せなくなるだろう。

「稀五郎に会わせに行ったなんて、俺はとんだピエロだ」

もしそうだったら口裏あわせの手助けをしただけに過ぎない。しかし関わって全てを観察することは絶対に意味がある。それは六手梨が都会の交番で身をもって味わったことだった。

 数年前、都会のとあるバーで従業員が殺された。関係者全員と会って話しを聞いた。特に会話が進んだやつがいた。途中で担当を降板し結果を後で聞いた。不祥事で降板ではなく別の事件で適材だっただけの話だ。

「六手梨さん、あいつ犯人だったそうですよ」

やりとりは克明に残して引継ぎした。その一部が決め手になっていた。

「よくしようとしてくる奴は、裏がある場合がある」

これが結論だ。美鈴の場合はどうだろう?安全を求めて擦り寄ってきた、が正しいかもしれない。結果的に借家を宛がった。いや、駄目だ駄目だ。関係者を全部排除して考えたほうがいい。美鈴は残念だが関わりがある。そして精神的に追い詰められやすいだろう。

「毎日カウンセリングに行ったほうがいいし、見張りを超重点的に置かないとな」

即行で会いに行く。泣いたのか目の下に隈ができている。気を許してもらっているのか話はできる。

「監視がいて嫌です」

六手梨《オレ》のせいだ。しかし必要なんだと説き伏せた。
 事件はさらに展開を見せる。被疑者にやはり美鈴の知り合いの青年が上がってくる。

「美鈴の所に行ったのに、何で知り合いまで到達しなかったんですか」

この地区の有力者の息子。名前は大村一登《おおむらかずと》という。美鈴に頼まれて日本刀を預かっていたと主張している。だが湯北署では彼が隠れていた経緯と、美鈴が頼んでませんと言った供述を重視し、ほぼ犯人扱いで捕縛した。

「ほらな、美鈴じゃないだろう」

偉そうに署内の同僚に吹聴する。また六手梨の株が下がる。

「六手梨さんの初期捜査も良くないんですよ!」

それは認める。しかし知り合いと言っても恋愛関係にはないし、第四の人物を美鈴が隠した理由が分からない。彼が第四の人物ではないかもしれない。署内の会議でシミュレーション会議をしてみる。

「悪い会社があったら、会社のある地元(ろくでなしさんたんとう)はどう思うのだろうか?」

同僚が俺に聞く。

「出て行ってほしい。さもなくば……」

不慮の事故でもあってなくなればいい。怖い結論なんで口には出せない。つまり、美鈴のおじは地域全員を敵にして仕事をしていたということだ。

 美鈴がおじについて本当に思っていることを聞きたい。それによって犯人が変わってくる。
しかし聞くまでもなかった。既に話してもらっていたのだ。

『でも』(殴ることも愛情で)『わたしには本当に優しかったんです』

行間が読めた。六手梨会心の観察眼だ。

・ヤクザ者に頼まれた稀五郎と、第四の人物がおじに斬りかかる。
 美鈴は日本刀で妨害する。しかしおじは第四の人物に突き殺された。
 殺されてしまったらどうしようもない。

・カメラに映ってしまった稀五郎は逃げられない。
 稀五郎の提案で、全員でそれ以上誰も傷つかない方法を選ぶ。
 捕まっておいて凶器が違えば釈放されることを見越してのことだ。

・刀は2本、凶器の1本は大村一登が貸し出したもの。

・地域住民は隠してそこで暮らすしかない。

そして六手梨警部は、この現場から安全に逃げれる人物をひとりだけ知っていた。


 六手梨警部にはもうひとり会うべき人物がいる。

 「ええ、いい警部でした、地域思いの」

 知る人物から情報提供を受ける。

 「どこに行かれたか分かってますか?」
 「老人ホームです」

 同僚と足早に向かう。穏やかな色の美しい建物だ。

 「六手梨ですけど、元警部さんいますか?」

 その人物は老人ホームの入り口まで出迎えてくる。

 「分かってる、君は名警部だ。本当のことを話そうと思う」

(完)

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