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五 スイカ


 幼いとき、父がスイカを食べながら、曾祖父の話をしてくれた。


 ある夏、曾祖父は用事があり、知り合いの家へ行った。

 先客がいて、客は縁側でスイカをごちそうになっていた。

 うまいスイカだ、と言って、客はずいぶんたくさん食べたが、曾祖父は食べなかったという。

 スイカを食べ終えると、家人がスイカの皮が入ったままの大皿を井戸端へ運んで、井戸の水をかけた。

 スイカの皮と皿から排水路に油膜が流れた。

 主は、墓地の下の畑で作ったスイカは、今年も大玉で、味がいいと言った。

 まだ、土葬が多い時代の事である。

 
 私は、食べかけのスイカを皿に置いた。

 私を見て、父は口からスイカの種を出しながら、曾祖父から話を聞いたときの自分と同じだ、と言って笑った。

(了)

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