バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

5 絆

 ゆふこからメールが来た。
「緊急に連絡欲しい」
 とある。またかと思った。

 急ぐならゆふこが直接電話してくればメールを書く手間が省ける。そう思いながら電話する。

「もしもし」
 ハスキーなゆふこの声が聞こえる。

 この声だけでゆふこの姿が目前に浮かび、頼られているのを実感する。

 結局さんざん聞かされ意見を求められた。

 どういう意見かって?
 もちろん、こういう女の定説、恋愛談義さ。
 こういうと格好よく聞こえるが、実際はゆふこの付き合う相手について、私が意見を求められているのだ。

 だいたい、ゆふこの行動パターンは決まっている。
 さんざん好き勝手して、どうしようもなくなると私に連絡して意見を求め、あなたの考えたとおりに行動するといってしおらしくなり、さめざめ泣く。
「悲しくて泣いてるんじゃないの。あなたに優しくいわれると言葉のかわりに涙があふれるの」
 私をほろりとさせる言葉だ。


 最初のころの電話で、すすり泣きを風邪といってごまかしていた。二度目三度目で泣いているのがはっきりした。
 だが、何度も同じようなことがつづくと、多少なりとも呆れてくる。

 だからといって私はゆふこを嫌っていない。好意以上のものを彼女に感じている。それを知ってか、ゆふこは私になんでも話すようになった。そして電話代がいっきに増えていった。

 何度も電話番号を変えメルアドも変えた。
 事務所の電話番号を知っているゆふこは、携帯の番号とアドレスを調べ連絡してきた。

 私はゆふこの自由奔放さが好きだ。容姿も好きだ。愛しているといって過言ではない。
 だが、何かが少しずつ変ってゆくのがわかった。

 私は心の中にある剣を鞘から抜いた。先祖から心に受け継いだ魔除けの剣だ。

「無上霊宝神道加持」
 九字を三回唱え、ゆふことの悪しき絆を十握の剣で三回断ち切った。


 数日後、ゆふこから電話が来た。
「あたし、これから、大切な人と話したいことがあるんです。
 一度、本音で話したほうがいいいですよね?」
 いつものもったいぶった様子がない。いきなり論点を話すような口振りだ。本命を見つけたか。

「ああ、そう思うよ。早いほういいだろうね」
 私がそういうと同時に、

「わかりました」
 ドアベルが鳴り、事務所の階段を登る音がしてドアが開いた。
「来ちゃいました!」

(了)

しおり