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効率化

 世界の力の偏りが顕著になってきていた。それで外の世界がどうなるというものではないが、パワーバランスという観点で見ればかなり危うい。
 現在力が偏っているのは二ヵ所。一つは最古の世界にして、外の世界に無数の分身体を放っている存在が管理する始原の世界。そしてもう一つがハードゥスだった。
 最古の世界に関しては、始原の世界の管理者の成長速度が異常なまでに速いのが影響している。その世界の力の大半は管理者の力なのだから。
 ハードゥスに関しては、管理者であるれいの力が最も大きいとはいえ、それだけではなく無数の世界から流れ着いてくる力を取り込んでいるからというのも大きい。れいはハードゥスに流れ着いた力はハードゥスに取り込み、元の世界には戻していないのだから。
 この両者の力の差はそこまで大きくはない。今のところ最古の世界の方が上ではあるが、それもいつかはひっくり返るだろう。始原の世界の管理者の成長速度も異常なまでに速いが、ハードゥスの管理者であるれいの成長速度もまた異常なほどに速いなのだから。
 もっとも、管理者であるれいとハードゥスの成長を合わせた量で、やっと始原の世界の管理者の成長速度に若干勝っている程度なのは恐ろしい事実ではあるのだが。
 さて、そんな二つの世界なのだが、その管理者達は外の世界は観測こそすれ興味が無かった。なので、どれだけ力が偏ったところで問題はないだろう。
 それはさておき、それよりも重要なのは、膨れ上がる力のやり場である。互いにそれについては一応克服してはいるが、それでも膨れ上がる力を完全には止められていない。
 管理している世界の拡張も際限なく行うわけにもいかない。そんなことをすれば、いつか世界と世界が衝突してしまう。もっとも、その場合は圧倒的に力の強い二つの世界の方が相手を取り込むだろうが。
 そういうわけで、もしも二つの世界が衝突することになった場合は大変だが、二つの世界は離れているので問題はないだろう。そもそも、そうなる前に何か解決策を考えるだろうから、その心配はないのだが。
 そうした中で、ハードゥスのれいは今日も何か力の活用法はないかと思案する。そうそう名案は浮かばないので、もう習慣のようになってしまっていた。
「………………ふむ。このままでは駄目ですね。少し頭を冷やすことにしますか」
 慣れてしまって何となく考えるだけになっていることに気づいたれいは、ふるふると頭を振って思考を切り替える。こういう時は少しの間その思考から離れた方がいいだろう。
「………………折角猶予を得たのですから、焦らなくてもいいでしょう。何かの拍子に名案が浮かぶかもしれませんし……何だか既視感がありますが、永いこと過ごせばそんなことは一度や二度はありますか」
 一つ息を吐き出したれいは、別のことを考えることにした。もっとも、既にやるべきことは済ませた後なので、考えるとしたらこの後こなす予定の仕事についてになってしまうが。
「………………現在のハードゥスの運営は順調。ハードゥスに暮らすモノ達の営みも予想の範囲内。管理補佐達の仕事振りも問題なく、ペット達も健康そのもの。うーん、考える以外にやることが少ないですね。ハードゥスの維持・管理の方は今更ですし」
 かといって、改めて考えてみても現在は順調そのものなので、特に対処すべき問題も存在しなかった。あっても細かなモノで、管理補佐達で対処可能な案件ばかり。つまりれいは通常の管理作業ぐらいしかやることがなかった。それが一番重要なのではあるが。
 しょうがないので、れいは既存の管理方法の見直しで効率化が計れないかと思案していく。結局それにより、力の消費が少し抑えられてしまうという結果に終わり、また力の持っていき場に頭を悩ませてしまうのだった。

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