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6 矛盾・フィジカルディスタンス

「警察がデモ隊を鎮圧できなければ、州兵を動員しろ。
 それでも鎮圧できなければ、国軍を投入しろ。
 我々の警官がニグロの一人や二人をくたばらせようが、どうってことはない。我々白人の力を見せてやれ!」

「大統領!それでは、国際社会に対する我々の言い分が通りません!!」

「この国は我々のものだ。ニグロは我々の恩恵で生きている。
 ニグロのデモ隊を鎮圧することは、我が国の問題だ。第三世界を支配しようと侵略を進める国とは、話が別だ。
 ヤツラは他国を侵略してるんだ。民主国家の我々から非難されて然るべきだ。我々はヤツらを叩きのめすのに、武力行使も辞さない。世界の覇権国家も宇宙の覇権国家も、我々だ。
 ニグロのデモ隊ごときは、兵力で鎮圧しろ!」

 大統領補佐官は、わかりました、と答えて大統領執務室を出た。
『いったい、誰が、こんなバカを大統領に選んだ?
 全てが大統領選のせいだ・・・』

 大統領選では、まず国民が「選挙人」と呼ばれる人を選び、そこで選ばれた選挙人が大統領を選ぶという二段構えの間接選挙制を採用している。
「選挙人」が資本主義者で白人至上主義者なら、それなりの大統領を選んでしまう。

 第二次大戦後、核なき世界が叫ばれて国際的に民主化が進んだ。しかし、何度かの経済危機に見舞われた国際社会は、自国の利益優先をはかり、国際的な民主化は衰退した。
 大統領補佐官の国に残ったのは、経済至上主義による白人至上主義の独裁思想だった。
 それは、第三世界を支配しようと侵略を進める国でも似ていた。ちがっているのは、民族至上主義による一党独裁思想だった。

『自己中心主義者に権力と武力、財力を持たせたら、国家どころか、世界が崩壊する・・・』
 大統領補佐官の脳裡に、世界崩壊へ突き進む国際社会が浮んだ。

(了)

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