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《閑話 ハンターギルドの悪夢と、とある商会の躍進》


指輪のダンジョンに異変があったらしい。

ダンジョンの宝箱中身がガラッと変わってしまった。

今まで出ていた魔道具の指輪が手に入らなくなってしまった。

この街以外の大きな街の商店やら有力者やらに高額で捌いていた魔道具の指輪が入手できなくなったのだ。

年単位で契約していた魔道具の指輪の売買契約が、全て債務不履行に陥り、多額の違約金が発生した。


責任をとり、バンゴの街のハンターギルドのギルドマスター及びサブギルドマスターは私財没収の上、ギルド追放。

その後の調査で、両者はハンターギルド本部への虚偽の報告や多額の賄賂の受領、更には一部の上級ハンターの犯罪行為の隠ぺい等が見つかり、犯罪者として服役することとなった。


ハンターギルド本部から派遣された新たなギルドマスターとサブギルドマスターにより、バンゴの街のハンターギルドの運営方針は一変。

今まで何から何まで優遇され、犯罪ギリギリの行為でもお目こぼしされていた上位ハンター達は、この運営方針変更により、そのほとんどが何らかの処分を受けることになった。

魔道具の指輪が得られないことによる収入の激減も手伝って、上位ハンター達はその身を滅ぼしていった。

今まで虐げられていた下位ハンター達は、ダンジョンの変化に伴う宝箱の増大を好機に、ハンターギルドはもとより、各々独自に商店等へ売り込みに回り、ハンターギルドでは”ガラクタ”扱いの宝箱の中身をお金に換えることができるようになっていった。



数日後、バンゴの街のハンターギルドで、”指輪のダンジョンからの取得品安売りセール”が開催された。

どうやら、宝箱から魔道具の指輪が出てこなくなり、代わりに様々な変わった”ガラクタ”が出るようになったようで、それらの一斉処分をしているようだ。

ハンターギルドにより、まさにたたき売りに出されたモノを見ていたイットマン商会の店主は、あるモノが混ざっていることに気づいた。

店主「あれは、ポリ袋では?」

上質紙と共にイットマン商会の目玉商品となりつつあるポリ袋が、ダンジョンの宝箱から出てきた”ガラクタ”として、投げ売りされていたのである。

店主「これは、まさか。彼に関係あるのか?」

しばらくその”ガラクタ”たちを観察する店主。

見たことがないものばかりで用途や使用方法が不明なものも多々あったが、その見た目は全て美しく、そして、興味をそそられた。

店主「これら全てが”ガラクタ”? あの彼に関係ありそうなこれらのモノが? 果たして本当に?」

イットマン商会の店主は、ハンターギルドがあまり興味を示さない宝箱からの”ガラクタ”を積極的に買い取ることにした。

更に、下位ハンターたちに声をかけ、直接イットマン商会へ持ってくれば、”ガラクタ”でも買い取る、と触れ回った。


そんなある日、日頃から付き合いのある同族の宿屋の娘たちが、人族の女性と共にイットマン商会に顔をだした。

どうやら、お店の手伝いで、買い物に来たようである。

すると、その連れの人族の黒髪の女性が、

黒髪「ナニコレ! 何でこんなものがここで売ってるの!」

店中に響き渡るような大声で叫びだした。


彼女に話を聞いてみると、どうやら、店先に陳列していた、例の”ガラクタ”たちを見て、歓喜しているようだ。

彼女曰く、これらのモノは自分の故郷で作られた、”ニホンセイ”で、大変手に入れにくいものだそうだ。

彼女にお願いして、その”ニホンセイ”たちの用途や使用方法を詳しく教えてもらうことにした。

対価はこれらのモノを安く譲る、という条件で。

間髪入れずに同意してくれた彼女の説明により、ついさっきまで”ガラクタ”扱いだったモノたちが、まさに”お宝”として輝きだしたのだった。

 あるモノは、枯葉などに火をつける道具。

 あるモノは、暗闇を照らす道具。

 あるモノは、紙に字を書く道具。

 あるモノは、紙に書いた字を消す道具。

 あるモノは、飲んだこともない味のする色のついた水。

 そしてあるモノは、食べたこともない味の調味料。


その説明は、それはそれは長時間に渡り、されど楽しく和気あいあいと続けられた。

用途や使用方法が分かる前まではただの”ガラクタ”。

今ではすっかり、この店の目玉商品に化けた”ニホンセイ”たち。

店主「これら全てが”ガラクタ”? 何を言っているのやら。これはまさしく、”お宝”でしょうに!」

そんな独り言をつぶやきながら、先日のことを思い出す店主。

店主「彼の言っていた、”ダンジョンで何か変わったこと、面白いことが起きるかも”とは、このことなんでしょうね。」

この店の恩人、”賢人の白耳”をした同族との別れの挨拶を思い出しながら、年甲斐もなく少しワクワクする店主だった。

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