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新大陸

 新しい大陸は、初期のハードゥスのような場所に決まった。つまりは完全にではないが、特殊な力が存在しない世界。
 なのでその大陸では、魔法と呼ばれるモノやそれに類するモノは全て使用出来ない。例外は特殊な力を内蔵している場合だが、周囲に特殊な力が存在しないので、その場合でも消耗がかなり激しい。
 例えば人や魔物。そういった存在は体内で特殊な力を生成出来るのだが、しかしその世界では、余程大量に生成出来なければ、それよりも消耗の方が上回り弱体化してしまう。初期の頃のハードゥスでは、流れ着いた生き物のほとんどが弱体化していた。
 それでも死ぬことはないので、普通に生活する程度であれば問題はない。
 それに、ということは魔物も必然的に弱くなるということなので、防壁だけでも十分被害を防げるということになる。
「………………ここでしたら、将来的には動物を放ってもいいかもしれませんね」
 現状では動物の数が少ないので、今は増やすことを念頭に育てている。動物がハードゥスに漂着してくること自体が稀なので、動物に関しては今まで以上に慎重に管理していた。
 とりあえず、将来的に動物の数が増えすぎた場合の候補としておく。もしかしたらその前に、微量な特殊な力しかない環境に魔物が動物に変化するかもしれないが。魔物の中には、元々動物だったのが特殊な力の影響で魔物に変化したという存在も居るのだから。
 そういうことを考えつつも、設置するモノについて考えていく。
「………………自然に関してはそこまで問題はありませんが、人はどうしましょうか?」
 技術的なことを考えれば、元々特殊な力が存在しない世界出身の者を多めに配置すればいいのかもしれないが、大陸の外には特殊な力が存在するので、そのことを知識として知っている者も必要だろう。
 その割合によっては、発展が鈍重になるかもしれないし、特殊な力について上手く伝わらないかもしれない。今後のことを考えれば、その存在自体は伝わっておいてほしいところ。
「………………住居も特殊な力を利用した家は省いた方がいいでしょう。設置したところで直ぐに機能しなくなりますし。もっとも、幾つかは見本としては置いておきたいですね」
 れいはある程度大陸を創った後の方針について考えたところで、早速新大陸を創造していく。
「………………大陸の大きさは……平均的でいいですね。地下迷宮は一つぐらい見本で置いておきたいところですが、今は止めておきましょう。せめて特殊な力の存在が広まってからの方がいいでしょうから。後は地下迷宮の維持に必要な力の供給について考えなければいけませんね」
 そうやって一通り考えたところで、れいは新しい大陸を創造していく。
 それから自然物や家屋を設置し終えたところで、れいは大陸の近くにネメシスとエイビスを呼んだ。
 二人が揃ったところで、新大陸について説明していく。管理補佐達に関しては、れいが特殊な力を管理補佐に供給することによって、管理補佐に限り、新大陸でも特殊な力の行使が可能にしておいた。
 そういった説明の後、れいは早速本題に入る。といっても二人を呼んだのは、いつも通りに住民の案内のためだが。
 案内する住民について大まかに説明を終えると、早速二人に新大陸に移動してもらった。その後で、互いに離れた場所に用意した二つの町へと住民をそれぞれ案内させていった。
 今回は特にトラブルもなく住民の案内を終えると、後はしばらく住民の行動を静観しておくだけ。一応、二つの町にそれぞれ管理のための管理補佐を派遣しているので、大きなトラブルはそうそう起きないだろう。
 今までのノウハウがあるので、特殊な力が使用出来ないからといって何も準備出来ないというわけではなかった。それに、最初の頃はハードゥスも同じだったので、そちらの方の経験も共有しているから問題ない。
 後は経過観察をして、何も問題なければ発展を期待するだけだろう。そんな目的の場所でも、範囲が広すぎて通過していく力の影響を完全には締め出せなかったのは残念ではあるが。

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