バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

<第1話> 異世界召喚!? そして、


気が付いたら西洋風の宮殿みたいなところに寝転がっていた。

自分と同じように大理石風な石床に寝転がって辺りを見回している人物が他に4名。

更にその周りを取り囲むように20名程の”仮装した外人さん達”がいる。

(何だここ、どういう状況?)
(おかしいな、私の記憶が確かなら、自室でパソコンの電源を入れようとしていたところだったのに。)

しばし呆けていたら、少し離れたところのお立ち台で、これまた”貴族っぽい仮装をしたちょっと偉そうな外人さん”が何やら熱弁を始めた。

「〇△×…………」

肩にタスキをかけていれば、地方選挙の応援演説をしている一発屋芸人のようだ。

(ちょっと何言ってるか分かりませんね……。)

とりあえず、一番近くに座り込んでいた女子高生と思しき”清楚な図書委員”風の女の子に話しかけてみた。

「すいません、状況がよく分からないのですが、とりあえずあそこの”ルネッサ~ンス!”的な彼が何を言っているのか分かります?」

清楚な図書委員ちゃんは

「え? あっはい、私も何が何だかサッパリですが、あの人が話している内容は理解できます。」

「そうですか。私には彼の話す言葉が理解できないので、彼の話していることを教えてもらえますか?」

「分かりました……。」

彼女の通訳だと、

    ここは、エネミア帝国の”英雄神殿”という場所らしい

    我々5人は”英雄召喚の儀”により異世界召喚”してもらえた”らしい

    邪教徒との”聖戦”に”協力せよ”とのことらしい

    邪教徒を打ち滅ぼした暁には元の世界に戻して”くれる”らしい

    衣食住と身分の保証は”働き”により考慮して”くれる”らしい

    これから全員のステータスチェックをして”くれる”らしい

ということのようだ。

(なるほど、これはラノベでよく聞く、所謂”勇者召喚”だな、”悪い方”の。)
(しかし、勝手に召喚しておいて、随分な言い様だな。通訳通りなら”上から”にも程があるぞ。)
(こっちの都合はお構いなしかい!)

自分と同時に召喚されたと思しき4名は皆同じ制服を着ており、多分同じ学校に通う高校生なのだろう。

皆一様に戸惑っているようだが、自分と違い”貴族風コスプレ外国人”の話す内容は分かっているようだ。

そうこうしていると、召喚された学生が各々立ち上がり、偉そうな”貴族風コスプレ外国人”の方へ歩き出した。

「オジサン、あそこで順番にステータスをチェックするそうですよ。」

清楚な図書委員ちゃんが立つよう促しながら、前の方を指さした。

その指さした先には水晶の珠が置かれた台があり、近くに白いローブを着込んだ白人女性が立っていた。

(ステータスって、おいそれと他人に見せていいもんじゃないと思うんだけど。)

ラノベの異世界召喚でよくあるシチュによくある展開。

普段愛読しているラノベでのテンプレを思い出しながら物思いにふける。

(ラノベとかだとこういう時、召喚”特典”で特殊能力とか生えてたりするよね。)

(そうだ、ラノベのテンプレを今のうちに試してみるか!)

こんな状況でよく行われることをこっそり試してみることにした。

(とりあえず、念じてみよう”ステータス!”)

すると目の前にパソコンの画面のようなものが浮かび上がった。


    名称
        渡里 千尋也(わたり ちずや)
    種族
        稀人
    性別
        男
    年齢
        48歳
    称号
        異世界から召喚されし者
    職業
        クーリエ
    魔法
        なし
    スキル
        誘掖の地図帳
    ギフト
        守護霊の憑依
    状態
        ややメタボ、守護霊の呪い(未発動)


(おっ出た~ステータス!)

ラノベのテンプレ通りの動きに感動しつつ、詳細を確認していく。

(種族【稀人】? 普通の人間じゃないの? 異世界人だから?)

(職業【クーリエ】って何ぞ? 剣士とか魔法使いとかじゃないんかい!)

(英語そのままなら”添乗員・案内人”又は、”〇〇便”とか”急使・特使・密使”的な意味じゃなかったっけ?)

(絶対戦闘できないでしょこれ。どう考えても只の”使い走り”じゃないですか!)

次の項目は、

(魔法【なし】って、魔法使えないのか。異世界テンプレの希望の一つが潰えた……。)

気を取り直して、

(スキル【誘掖の地図帳】(ゆうえきのちずちょう)? これって、地図ってこと?)
(スキルが地図って、残念スキルかよ!)

画面の【誘掖の地図帳】を指で触ってみたが何も起こらない。

残念スキルに憤慨しながら次の確認へ。

(ギフト【守護霊の憑依】(しゅごれいのひょうい)って、アウトでしょこれ! お化けですか?)

ギフト名に失望しつつ、画面の【守護霊の憑依】を指で触ってみた。

するとその瞬間、目の前にネコの立体画像が表示された。

『タマを呼んだかニャン?』

(おっ? 何だ?)

『タマの出番かニャン?』

(こいつ、動くぞ! じゃなくて、喋るぞ!)

目の前に現れたのは体長30cmぐらいの黒地の身体に四つの足先と尻尾の先と両耳の先と胸元が白い猫。

白靴下を履いた黒ニャンコがお座りした姿勢でこちらを伺うようにしながら目の前に浮いていた。

黒と白のバランス的に所謂ミテッドと呼ばれる黒白猫である。

よく見るとそのカラーリングを含めて、昔実家にいた”タマ”そっくりだった。

実家にいたといっても、隣の杉山さんが飼っていたネコが毎日遊びに来ていただけで、

我が家で勝手に”タマ”呼ばわりしてご飯とかあげて構っていただけだったのだが……。

(”タマ”か、懐かしいな、というか可愛かったなぁ。)

(中学生の頃、毎日のように一緒にお昼寝したなぁ~って、ほぼ夕方だったから夕寝か?)
(私の着ていた学ランを一生懸命毛繕いしてくれて、おかげで抜け毛だらけになったけど、何か嬉しかったなぁ~。)
(あと、海苔が大好きで、海苔を見せると”ミャーミャー(クレクレ)”うるさく前足で抱き着いてきたなぁ~。)
(そういえば”タマ”の杉山家での本当の名前知らないな。今更だけど……。)
(なんて、今はどうでもいいこと思い出しちゃったな……。)

そんな思い出に浸っていると、目の前のタマが香箱座りを始め、そして目を閉じ始めた。

(あれ? 寝ちゃってません?)

慌てて”タマ”そっくりのネコの頭を指でつつくと、

『用がないなら寝てるニャン。』

と鬱陶しそうに目を開けた。

「ごめんごめん、とりあえずよく分からないのだけど、君は何者?」

『タマはアシスタントのネコ型電子心霊ニャン。』

「何それ?」

『ヘルプ&サポート要員ニャン。』

「なるほど、色々教え導いてくれると?」

『その通りニャン。』

どうやらネコ型ヘルプさんのようだ。

丁度いいので、色々教えてもらうことにした。

「それじゃ早速だけど、君のこと、ギフトの詳細を教えてくれる?」

『分かったニャン。』

タマがそう言うと、詳細が色々記された画面が目の前に展開された。

(おー! 何か凄い! ゲームの画面みたい!)

展開された画面に感動して、ふと他人にこれが見ているのか気になり、周りを見渡す。

すると、皆一様に”貴族風コスプレ外国人”の方を向いており、自分のステータス画面等は見えていないようだった。

(とりあえず周りにはバレてないようだな。それじゃ、ひとつずつ確認していこう。)


【ギフト】
    神の気まぐれにより与えられる恩恵
    保持する者はほとんどいない

ギフト【守護霊の憑依】
    神に認められし守護霊による援助
    同時に憑依され呪われる(【守護霊の呪い】)
    アシスタント(タマ)として守護対象者を教え導く

【アシスタント(タマ)】
    守護対象者の全魔力を用いて顕現したヘルプ&サポート要員
    黒地の身体に末端と胸元が白い雑種ネコ型電子心霊
    可視化すると体長30cm程(守護対象者以外認識できない)
    某オフィスソフトのネコ型アシスタント”ミ〇ー”の改良強化新型
    しばらく放置しておくと、居眠りを始める

(”守護対象者の全魔力を用いて顕現”って、私に魔法がない理由って……。)
(……でもタマを実装してくれて助かったよ。ヘルプ要員がいなくちゃ分からないことだらけだし。)

(それにしてもオフィスソフトのアシスタントか、懐かしいな。最近見かけないけど……。)
(圧倒的にイルカ派が多数だったけど、中には冴〇先生好きのマニアもいたよな。)


【守護霊の呪い】
    ギフト【守護霊の憑依】の代償。ギフト初利用時に発動する。
    著しい身体的変化が生じる。【生前のタマの希望通り】
    変化は呪い発動後の翌朝に現れる

(恩恵を授かると共に呪われるのか……。)
(”生前のタマの希望通り”って……、やっぱりタマは昔一緒に遊んだ”タマ”だったんだ!)
(タマは私の守護霊として戻ってきてくれたのかな? それとも見えてなかっただけで今までも私と一緒にいてくれてたのかな? そうだったら嬉しいな。)
(タマと一緒にいられるなら、全然呪われますよ! 魔法もいらないよ!!)



ギフト【守護霊の憑依】こと、タマのことが分かったので、早速ヘルプをお願いしてみる。

「それじゃ次に、私のこと、職業やスキルの詳細を教えてくれる?」

『分かったニャン。』

タマがそう言うと、新たな画面が目の前に展開された。


【職業】
    神より与えられし適職
    本人の資質とスキル等により決定される

職業【クーリエ】
    地図を用いた先導、偵察、諜報、歩哨、及び、対外交渉、密使等をこなす地図のエキスパート。

(おや? 思っていたよりアリな職業か? 何か凄く有能そうじゃない?)


【スキル】
    訓練等により身につく技能
    稀に先天的スキルも存在する

(おお、ラノベでよく見るヤツだ。剣を振るうと剣術スキルが生える的な。)


スキル【誘掖の地図帳】
    魔力により操作するメニュー付き多機能地図帳

(ふむ、この地図帳と一緒なら、職業【クーリエ】は輝くってこと?)
(でも待てよ、”魔力により操作する”って、私、魔法使えなんだけど……、大丈夫か?)

「ねぇタマ、私、この【誘掖の地図帳】スキル使える、よね?」

『使えにゃいニャン。』

「えぇ~、なにそれ。完全に残念スキルじゃん!」

『でも大丈夫ニャン。』

「え? どういうこと?」

『タマが使うニャン。』

「ん? タマが私の代わりに使ってくれるってこと?」

『そうニャン。』

「おぉーなるほど、タマはそういうことができるんだ。」

『そうニャン。』

「そっか、ありがとね、タマは私の救世主だよ。」

『タマに任せにゃさいニャン。』

「うん、頼りにしてます。」

ムフン、と胸を張るタマを愛でたところで、続きを見る。


【誘掖の地図帳】の機能一覧

【基本メニュー】
    言語切替(自動)
    日時表示(タイマー機能付き)
    外国為替
【地図機能】
    表示範囲変更
    平面地図表示
    立体地図表示
    バードビュー表示
    固有名称表示
    アイコン表示
        人物:〇
        動物:△
        植物:□
        その他:◎
        色分け識別
            親愛:緑
            友好:青
            中立:白
            警戒:黄
            敵対:赤
【特殊機能】
    地図印刷
    地図上ルート検索
    地図上プレビュー
    地図上転移
    ホームポジション



【誘掖の地図帳】の各機能詳細

基本メニュー

【言語切替(自動)】
    一度聞いた言語を話すことができる
    一度見た言語を読むことができる

(あれ? この機能があればこの世界の言葉分かるんじゃないの?)

「ねぇタマ、言語切替(自動)って有効になってないの?
さっきこの世界の人が何喋ってるのか分からなかったけど。」

『さっきまではスキルを使っていにゃかったからニャン。
今はスキルが有効ににゃったので、言葉が分かるはずニャン。』

「そういうことね。ありがと。」


【日時表示(タイマー機能付き)】
    現在位置の日時を表示する

(時計もあるのか、まさにゲームのメインメニューだな。)


【外国為替】
    異なった通貨の売買(交換)を行う
    入出金は常時可
    初期資金は召喚された時点の貯金額(1,530万円)

(これは素晴らしい! 入出金は常時可”ってことは、お財布代わりにできる? これでお金は何とかなりそうか?)


地図機能

【表示範囲変更】
    画面上の地図の縮尺を変更できる
    (1/1スケールから1/100万スケールまで)

(地図は実物大表示からかなり広い範囲まで表示できそうだ。日本地図なら本州全体ぐらいはギリ表示できそうだ。)


【平面地図表示】
    2D表示モード

【立体地図表示】
    3D表示モード

【バードビュー表示】
    航空写真表示モード

(航空写真もあるのね。)


【固有名称表示】
    人物や建物等固有名称を有するモノの呼称を表示する

(人の名前や建物の名前も表示されるのか? これは便利だ。)


【アイコン表示】
    人物や動植物等を各種アイコンで分類表示する
        人物:〇
        動物:△
        植物:□
        その他:◎
【色分け識別】
    操作者に対する友好度をアイコンに色分けすることで表示する
        親愛:緑
        友好:青
        中立:白
        警戒:黄
        敵対:赤

(これで敵味方判別できるぞ!)


特殊機能

【地図印刷】
    現在表示されている地図をA4用紙に印刷する

(A4用紙限定なんだ。)


【地図上ルート検索】
    固有名称がある人やモノまでのルートを検索できる

(これも凄いな、人探しや落とし物探しが捗りそう!)


【地図上プレビュー】
    地図上から実際の現場の状況を見ることができる

(実際に行かなくても現場の状況をリアルタイムで見ることができるってこと?)
(ここまでくるとスパイ衛星以上だな、これ。)


【地図上転移】
    地図上の任意の場所へ瞬間移動できる
        対象:操作者及び操作者に直接触れているモノ
        制限:1日1回

(地図上の行きたいところに転移できるのか、これまた便利。)
(しかし、1日1回しか使えないのか。使うタイミングは慎重にしないとな。)


【ホームポジション】
    設定した場所への一時帰還ができる
        帰還時間は最大12時間
        1日1回操作者のみ帰還可能
        デフォルトで”自宅”が設定される

(これは……”自宅”って、もしかして、元の世界に戻れるのか?)

「タマ! これって、元の世界の”お家”に帰れるの?」

『そうニャン。ただし一時帰還ニャン。』

「どういうこと?」

『12時間経過するか”現場復帰”をすると、こちらの世界の帰還直前の場所に戻るニャン。』

「元の世界に戻れるのはあくまで一時的なもの、そういうこと?」

『そうニャン。』

(……まぁ、それでも一時的とはいえ1日1回日本に帰れるのはありがたい。)
(いや、寧ろ勝ち組じゃね! 異世界と元の世界を行ったり来たりできる!!)



全ての確認が終わるころには、自分以外の被召喚者は水晶の珠が置かれた台の前に一列に並んでいた。

(ヤバイヤバイ。夢中になっていて、自分だけ取り残されちゃってるよ。)

小走りで彼らの列の最後尾に並び、様子を伺う。自分の前には”清楚な図書委員ちゃん”が並んでいる。

どうやらまだステータスのチェックは始まっていないようだ。

そうこうしていると、白いローブを着込んだ白人女性が説明を始めた。

「異世界からの英雄の皆さま、こちらは”鑑定の水晶”、触れた者のステータスを表示する魔道具です。」

「只今からお一人ずつ順番にこの水晶に触れていただきます。まずは先頭の英雄様、お願いいたします。」

そういって先頭に並んでいる男子高校生”爽やかイケメン君”を促す。

(おっ! さっきまでと違って話している言葉がわかる! 日本語でしゃべってるみたい!)

そんなことを考えていると、”爽やかイケメン君”は何のためらいもなく進み出て”鑑定の水晶”に触れた。

すると、パソコンの画面のようなものが浮かび上がった。



    名称
        佐藤 勇也(サトウ ユウヤ)
    種族
        稀人
    性別
        男
    年齢
        17歳    
    称号
        異世界から召喚されし者
    職業
        勇者
    魔法
        光属性魔法
    スキル
        多言語理解、剣術、体術、身体強化
    ギフト
        聖剣召喚
    状態
        健康、光神の祝福


(おー、多分日本語じゃないのに、日本語のように理解できる!)

表示されている文字は明らかに日本語ではないにもかかわらず、まるで日本語で表示されているように理解できた。

(これが”言語切替(自動)”の能力か。)

”言語切替(自動)”の能力を実感しながら、”爽やかイケメン君”のステータスを見る。

(あれ? 私のステータスと何か違う、というか色々多い。)

(魔法使えるし、スキル多いし、聖剣召喚できるし、神に祝福されてるし、そして”勇者”だし!)

これは彼が主人公というやつなのだろうと一人納得していると、周りがざわつき始めた。

「やった! 勇者だ! 勇者召喚に成功したぞ!」

「当たりだ! 我が国の召喚は当たりだぞ!」

(なるほど、”我が国の”ということは、他国も召喚しているのかな? そして”ハズレ”も召喚されたことがあると……。)

ざわつきが続く中、白いローブを着込んだ白人女性が次の男子高校生を促す。

「勇者様、どうぞこちらへ。次の英雄様、お願いいたします。」

2番目に並んでいた”メガネが似合うどこぞの御曹司”的な彼は、少しの躊躇の後”鑑定の水晶”に触れた。

すると、またパソコンの画面のようなものが浮かび上がった。



    名称
        鈴木 賢人(スズキ ケント)
    種族
        稀人
    性別
        男
    年齢
        17歳    
    称号
        異世界から召喚されし者
    職業
        賢者
    魔法
        全基本属性(火、水、土、風)魔法
    スキル
        多言語理解、高速詠唱、魔力感知、魔力強化
    ギフト
        鑑定眼
    状態
        健康、学神の祝福


(魔法全基本属性だし、スキル多いし、鑑定眼あるし、神に祝福されてるし、そして”賢者”かよ!)

「やった! 賢者だ! またしても有望だぞ!」

「当たりだ! 連続で当たりだぞ!」

これまた大騒ぎの中、白いローブを着込んだ白人女性が粛々と次の女子高校生を促す。

「賢者様、どうぞこちらへ。次の英雄様、お願いいたします。」

3番目に並んでいた”ゆるふわカワイ子ちゃん”的な彼女は、待ちかねたとばかりに”鑑定の水晶”に触れた。

すると、またまたパソコンの画面のようなものが浮かび上がった。



    名称
        田中 エミ(タナカ エミ)
    種族
        稀人
    性別
        女
    年齢
        17歳    
    称号
        異世界から召喚されし者
    職業
        踊り子
    魔法
        幻惑魔法
    スキル
        多言語理解、歌唱、演舞
    ギフト
        魅了の歌声
    状態
        健康、楽神の祝福


(勇者、賢者ときて、次は……、聖女じゃないんかい!)

心の中で一人そんなツッコみをしていると、周囲も同じように感じたらしく、

「まあ、立て続けで当たりはそうそうあるまい。」

「戦闘職ではないが”踊り子”でもギフト持ちだ、十分戦力だよ。」

「幻惑魔法は色々と使い勝手勝手がいいからのう。」

「完全に補助戦力ですな。」

といった微妙な評価となっていた。

当の本人も当てが外れたようで、まさに”ガーン”といった表情をしていた。

(言うほど悪くないと思うけどな、幻惑魔法とかめちゃ怖いでしょ。ギフトもあるし、邪道・詭道・搦め手担当でしょうに。)

微妙な空気の中、白いローブを着込んだ白人女性が粛々と次の女子高校生を促す。

「英雄様、どうぞこちらへ。次の英雄様、お願いいたします。」

4番目に並んでいた、私に通訳してくれた”清楚な図書委員ちゃん”な彼女は、戸惑いながら”鑑定の水晶”に触れた。

すると、またまたまたパソコンの画面のようなものが浮かび上がった。



    名称
        高橋 華恋(タカハシ カレン)
    種族
        稀人
    性別
        女
    年齢
        17歳    
    称号
        異世界から召喚されし者
    職業
        聖女
    魔法
        神聖魔法、回復魔法
    スキル
        多言語理解、浄化、精神耐性
    ギフト
        霊視
    状態
        健康、慈神の祝福


(こっちが聖女だったか。これで三役そろい踏みだね。)

「やった! 聖女様だ! 聖女様の降臨だぞ!」

「当たりだ! 大当たりだぞ! これで邪教徒たちを駆逐できるぞ!」

先程と違い、歓迎一色の大歓声だ。

(これで物理攻撃、魔法攻撃、回復、サポートと揃ったのかな?)

そんなことを思っていると、白いローブを着込んだ白人女性が自分を促してきた。

「聖女様、どうぞこちらへ。次の英雄様、お願いいたします。」

「オジサン、この水晶に触れってって言ってますよ。」

”清楚な図書委員ちゃん”改め”聖女ちゃん”が律義に通訳してくれた。

(そういえば、私はここの言葉がわからないことになってたんだっけ。)

「通訳ありがとうお嬢さん、触ってくるよ。」

言葉がわからない設定はそのまま継続することにし、水晶に触れてみる。



    名称
        渡里 千尋也(わたり ちずや)
    種族
        稀人
    性別
        男
    年齢
        48歳
    称号
        異世界から召喚されし者
    職業
        クーリエ
    魔法
        なし
    スキル
        誘掖の地図帳
    ギフト
        守護霊の憑依
    状態
        ややメタボ、守護霊の呪い


(見劣りするな、前の4人と比べると。魔法ないし、戦闘能力皆無だし。)

(さっき自分でステータス確認したときと同じだなって、あれ?)
(状態の”守護霊の呪い(未発動)”が”守護霊の呪い”に変わってる? 未発動が取れてる!)
(もしかして呪いが発動しちゃった?)

表示されたステータス画面を見ながらそんなことを考えていると、周りが静かになった。

(あれ? 何もリアクションなし?)

周りを伺うと、小声でヒソヒソと話しているようだった。

「完全なハズレですな。」

「聞いたこともない職業だ。」

「こ奴、魔法が使えぬようじゃ。」

「スキルが1つしかないですぞ。」

「スキル【誘掖の地図帳】? なんじゃそりゃ聞いたことがない。」

「召喚者に必ずあるスキル【多言語理解】がありませぬぞ、もしや我々の言葉が理解できぬのでは……。」

「何あのギフト、【守護霊の憑依】って、本当にギフトなの?」

「神の祝福がないどころか、【守護霊の呪い】? 呪いじゃと! 何と恐ろしい……。」


(……まあ、こうなるよな、完全にハズレでしょ、私のステータス。)


そんなヒソヒソ話だけが聞こえる状況の中、自分に声を掛けてくる者がいた。

「オッサン、残念だったな。魔法が使えないとか、完全に俺らのお荷物じゃん。」

”爽やかイケメン君”こと勇者、佐藤 勇也だった。

(おっと、人は見かけによりませんね、”爽やか”改め”ヤンキー”勇者だな。)

勇者の印象を下方修正していると、高校生達がワイワイやり始めた。

聖女「佐藤君、そういう言い方ないんじゃない? この人だって好きでこうなったわけじゃないのに。」

勇者「そんなのどうでもいいでしょこの際。要は使えるか使えないかでしょ? 実際。」

賢者「まあ、そう言うなよ。ここに召喚されたってことは、何かしら役目みたいなものがあるんじゃないか?」

勇者「役目ねぇ。魔法はない、戦闘系スキルもない。唯一のスキル【誘掖の地図帳】? 地図で何の役に立つのやら。」
勇者「しかも【多言語理解】のスキルすらないし。」
勇者「ここの言葉わかんないんじゃ何もできないんじゃね? 生きていけるかも怪しいぜ!」

賢者「確かにそうだが……。」

踊り子「よかった! 私より下の人がいた!」

聖女「エミちゃん、そんな言い方……。」

踊り子「カレンちゃんは聖女様だからそんなこと言えるんだよ。見てよ、ここの人たちの私を見る目!」

こんな感じで渡里に関することを渡里に関係なく話していた。

(とりあえず、無能を演じ続けて要観察ってとこでしょうかね。)

無能な自分の扱いがどうなるのか、しばらく観察してみることにした。


(その間にスキル【誘掖の地図帳】で色々確認しておきましょう。)

「タマ、【誘掖の地図帳】で地図をゲームみたいに常に表示させておける? 半透明で。」

『できるニャン。』

周りの喧騒をよそに小声でタマに【誘掖の地図帳】の地図を表示させてもらっていると、

「オジサンすいません。そのネコちゃんは何ですか?」

”清楚な図書委員ちゃん”こと聖女ちゃんだった。

「何のことです?」

一応とぼけてみると、

「オジサンの目の上辺りにいる黒っぽいネコちゃんですよ、今話してたじゃないですか。」

どうやら聖女ちゃんにはタマが見えているようだ。

(もしかして、聖女ちゃんのギフト【霊視】が働いているのか?)

他の高校生は何の反応も示していないので、聖女ちゃんだけが見えていると判断した。

「ちょっと何言ってるか分かりませんね……。」

再度ごまかすと、

「どうして嘘をつくのですか? ネコちゃんいるじゃないですか!」

始めは小声での問いかけだったのに、今度は大きな声で抗議してきた。

「しーっ、大きな声出さないで、こんな大勢いる場所で手の内晒せるわけないでしょ?」

そう返してみると、

「ずるいです! オジサン何か隠してますね?」

すると、他の高校生も会話に加わってきた。

賢者「高橋さん、どうしたんです?」

聖女「オジサンが黒っぽいネコちゃんとお話ししてたんです。何か秘密の能力とか隠していそうです。」

勇者「あん? オッサン何か隠してんのか?」

踊り子「ネコちゃん? どこ? 何それずるい! エミにちょうだい!」

4人の一斉口撃が開始された。

(聖女ちゃんは分別のある大人だと思ったのに、興奮してダメですね。)

(ネコ好きなのかな? ネコ好きは個性的というか我が強い人が多いからな【極めて個人的見解】。)

聖女ちゃんに対し、そんな残念な感想を抱いていると、

賢者「どういうことです? 魔法も使えない無能なくせに隠し事とか、少し甘い顔をしたら付け上がってるんですか?」
賢者「もしかして持ってるスキルに何か秘密が? ならば賢者である僕がギフト【鑑定眼】で暴いてやる!」

そういうや否や、賢者君の目は赤く輝きだした。

(え? 自分のギフトもう使いこなしているの?)

”賢者君スゲー”と感嘆していると、

賢者「なるほど、”魔力により操作するメニュー付き多機能地図帳”と……、でもあなたって、魔法使えませんよね?」
賢者「ふっははははっ、これは傑作だ。唯一保持していたスキルも魔法が使えないあなたでは操作できない、まさに無能とはあなたのことでしょう。」

賢者君は両手を広げ、芝居がかった口調で口撃してきた。

勇者「まじかよオッサン。魔法なし、言葉分からず、スキルもダメって、マジパネェな!」

踊り子「そんなことよりネコ何処にいるの? エミより使えないオジサンはネコをエミに差し出すべき!」

勇者「確かにお荷物野郎は俺たちに何らかの貢物があって然るべきだな。」

(この3人は残念どころの騒ぎではないな。完全に人を見下してる。)

ここでタマに表示してもらった地図に目を向けると、人物を示す”〇”アイコンが30個ぐらいあり、

自分の位置を示す中央の”+”から一番近くの”〇”は黄(警戒) 【多分聖女ちゃん】
その次に近い3つの”〇”は赤(敵対) 【勇者・賢者・踊り子】
それ以外の20個以上の”〇”は黄(警戒) 【この国の人たち】
表示だった。

(同じ召喚された日本人4人中3人が”敵対”とはね……。)

(こりゃダメだ。これではまともな扱いどころか、味方かどうかも怪しい。さっさとお別れするのが吉かな。)

そうと決まれば行動あるのみ、まずは香箱をキメて寝ようとしていたタマに念話で話しかけてみた。

(タマ~、聞こえるかぁ~い?)

『聞こえるニャン。』

(よかった、念話が通じた。それで聖女ちゃんはタマを目視できるみたいだけど、タマの声って他の人は聞こえているの?)

『聖女のギフトは”霊視”だから、見えるだけで声は聞こえにゃいニャン。』

(なるほど、それじゃ、この念話とタマの返答は聞かれないんだね?)

『そうニャン。』

(それじゃ、タマにお願いがあるんだけど、……。)

こうして念話でタマに色々”仕込み”をお願いをした。


タマとの念話を終え、興奮冷めやらぬ高校生組に最後の確認をしてみることにした。

「すいません。ちょっといいですか?」

勇者「おいオッサン、雑魚のくせになめた口きいてんじゃねぇぞ!」

(勇者は会話にならなそうですね。)

賢者「あなたの方が年上だが、ここでは能力が上の者に従うべきだ。おとなしく我々の……。」

(賢者はマウント取って悦に入っているようだね。)

踊り子「ネコちゃんどこ? 出して、早く出してよ、エミより使えないオジサンはエミの言うことを聞く下僕なんだから!」

(踊り子ちゃんは変に序列にこだわって、これがスクールカーストってやつか? 知らんけど。)
(この外見だし、きっと学校ではみんなにチヤホヤされてたんだろうな。 知らんけど。)
(なのに、ここに召喚されて残念な”ハズレ”扱いで……。自分より下に人を置くことで安心したいのかね。 知らんけど。)

聖女「なぜ秘密なんですか? これから一緒にやっていく仲間でしょ?」

(聖女ちゃんは会話はできそうだけど、妙に秘密にこだわってくるな。)

「お嬢さん、あの3人の発言を聞いて、それでも私を”仲間”だと言えますか?」
「彼らは私を同格とみなしていないようですが。」
「お嬢さんは私を仲間として同等に扱ってくれるのですか?」

聖女「うぅっ。で、でも、これから一緒に頑張っていくんですから、隠し事なんてダメだと思います!」

「誰が一緒にいるって言いました?」

聖女「え? どういう意味ですか?」

「あなた方と一緒に行動するとは限らないと言っているんです。」

聖女「そんなこと不可能です。この状況で、大した能力のないあなたが、一人でどうしようというのですか!」

聖女「第一、言葉だってどうするんですか? 私達が通訳しなくちゃ理解できないでしょ?」

「今後どうするかなんて、私の自由ではないですか。それともあなた方には私に強制する権利があるとでも?」

聖女「そんなことは言っていません!」

「では私が勇者だったら、秘密を教えろとか、一人で行動するなとか、言えますか?」

聖女「……。」

「そう、言えませんよね。結局あなたも他の3人と同様、私の能力が低いと見て侮り、自分達に従って当然だと見下しているんです。」
「能力の低い私のことは、上位者であるお嬢さんたちが全て把握して当然、そう思うから私の秘密を許せないんでしょ?」

聖女「そんなことは……。」

「あるんですよ。結局そういうことなんです。」

聖女「……。」

「あなたが一番まともそうだったので、最後の会話をさせていただきました。」

聖女「最後ってどういう……。」

「もうお会いすることはないと思いますので、最後に一言。」
「今後、人を見下し差別したことにより、味方だったはずの人からの折角の助力を得られなくなった、なんてことにならなければいいですね。」
「少なくとも、私は今のあなた方の手助けをするつもりはありません。」

そして勇者たち3人に目を向けた。

「そちらの3人も聞いてください。」

勇者「何だ雑魚が偉そうに!」

「君達は私を見下しマウントを取りたい。」
「私はそんな君達とは関わり合いになりたくない。」
「だからここで宣言する。今後一切、私は君達に関わらない、以上だ。」

勇者「上等じゃねぇかゴミムシが、泣いて助けを求めても助けてやんねぇからな!」

賢者「ふん、戯言を。我々に寄生するしかない癖に。」

踊り子「そんなこといいから、ネコちゃんどこ?」

聖女「……。」

(それじゃ、タマ、お願いね。)

『分かったニャン。』

「それでは、これでおさらばです。」

そう言うと、渡里は高校生達の前から忽然と姿をくらましたのだった。

しおり