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未知との遭遇 ~春の訪れは今度こそドゴログマで その1

 ……あの後、すごかったんです。
 スアが放った光に包まれた一帯にいたアラホラサーサ国の一味は、全員吹っ飛ばされていきました。
「おぼえといで~」
 捨て台詞を残しながら遙か彼方へむかって吹っ飛んでいくドロージョ姫。
 その左右に、なんか鼻の長い緑のコスチュームを着た男と、やたらマッチョな紫色っぽいコスチュームを着た男が一緒になってふっとばされていたんですけど……なんか、周囲一帯からあがった爆煙が、なんか髑髏の形をしていたような……

 そんな結果に唖然とするポラネ。

 そんなポラネの前で、おもむろに転移ドアを展開したスアは、そのドアの向こうに向かって水晶樹の杖を一振りしました。
 すると、それに合わせて何やら大量の荷物がドアの向こうからこっちに向かって飛んで来たんです。主に宝箱ですね、はい。
 で、宝箱が結構な数山積みになったところで、スアは転移ドアを消し去りました。
「……あの、これは一体……」
 おずおずといった様子でスアに訪ねるポラネ。
 そんなポラネに、スアは言いました。
「……秘宝……アラホラサーサ国、の」

 ……え~、つまりあれです。
 怒ったスアってば、アラホラサーサ国一同を吹っ飛ばした挙げ句、アラホラサーサ国の城の宝物殿の中から秘宝を全部ここに持って来ちゃったみたいなんですよね。

 それを聞いたポラネをはじめとするロクマ王国の皆さんは大喜びしています。
「そういうことなら、もうアラホラサーサ国なんて怖くないぞ!」
「姫、このままアラホラサーサ国へ攻め込んではいかがでしょう?」
「この秘宝を使えばそれも可能かと!」
 口々にそう言うロクマ王国の人々。
 で、そんな人達を見て、僕は思わず言ちゃったんですよ。
「……結局、因果応報かぁ」
「……いんがおーほー?」
「僕が元いた世界の言葉でね、良い事をすれば良い事が起きて、悪い事をすれば悪い事が起きるって言われてるんだ……アラホラサーサ国は悪いことをしたら、こうして秘宝を失うことになったんだと思うんだ。でもさ、これを使ってロクマ王国がアラホラサーサ国へ攻め込めば、その報いが必ず降り注いで、結局おんなじことの繰り返しになっていくんじゃないかな、ってね」
 僕がそう言うと、スアは
「……うん、よくわかる」
 そう言いながらうんうんと頷いています。
「パパ、パラナミオもよくわかりました。いつも良い事をしないとダメということなのですね」
 パラナミオはそう言いながら、スアと一緒に何度も頷いています。
 その横で、リョータとアルトも頷いていました。
 で、その向こうでは
「リョウイチお兄様……素敵ですわ」
 そう言いながらシャルンエッセンスが感動で号泣しています。
 あまりの涙の量で舞踏会に行くのでは的は衣装がびしょ濡れです、はい。

 で、どうやらそれを聞いていたらしいポラネもですね。
「……そうですね。これを使って攻め込めば、それはアラホラサーサ国がやっていたことを今度は私達が行うようなものですね……」
 そう言いながら、しゅんとなっていきました。
 で、しばらくロクマ王国のみんなと相談していたポラネは、おもむろに僕の元にやってきまして……

◇◇

「はい、みなさんタクラです。僕は今、ドゴログマにいます。今度こそ正真正銘ドゴログマにいます」
「パパ、誰に向かってお話しているんですか?」
「あ、いや、なんでもないんだよパラナミオ」
 
 あの後、僕はポラネからアラホラサーサ国の秘宝の処理を頼まれました。
「伝説の勇者様に処分をお願いしたとあれば、国の皆も納得します」
「い、いやだから伝説の勇者様なんかじゃないって言ってるでしょ……」
 そんなやりとりの後、結局僕はこれを受け取らされてしまったわけです、はい。
 ちなみに、これだけのことをしてのけたスアは、あくまでも伝説の勇者様の従者の1人って位置づけだったみたいです……

 で、一度元の世界に戻った僕達。

 スアが、魔法ででっかい黒電話を呼び出したかと思うと、それを使って神界に電話していきました。
「……たいがいにしなさいよ、ね……滅ぼしに行くわ、よ」
 なんか、そんな物騒な言葉が漏れ聞こえたかと思うと、ジャクナがすさまじい勢いでやってきました……その手には発行し直されたばかりのドゴログマ侵入許可書が握られています。
 ……しかし、ジャクナがここまで慌てたってことは……ひょっとしてスアってば、その気になれば神界すら……
 そんな事を考えた僕に、スアはニッコリ微笑んできました。
 その笑顔を前にした僕は、それ以上何も聞かないことにしました、はい。
 聞くのが怖くなったともいいます。

 で、ジャクナが改めて発行し直してくれた侵入許可証を使って、僕達は改めてドゴログマへとやって来たわけです。
 
 スアは、行き慣れている薬草の草原にこれてご満悦らしく、珍しく鼻歌を歌いながら薬草を摘みまくっています。
 その周囲では、パラナミオ・リョータ・アルトに加えてテンテンコウとシャルンエッセンスも一緒になって薬草を摘んでいます。
 何しろ、その一帯に生えている草、全部が超貴重な薬草だって言うのですから、間違いようがありません。
 
 で、僕はと言うと、イエロとセーテンが掘ってくれた深~い穴の中にですね、アラホラサーサ国の秘宝の一部を放り投げているところです。
 いえね、今ここで捨ててるのって、全部どうしようもないというか、とんでもない宝箱ばかりなんですよ。
 スアに調べてもらったところですね、魔獣を凶暴化させる物をはじめ、周囲を大爆発させたり、中には開けただけで全世界を滅ぼす大破壊が始まってしまうとんでもない物まで含まれているっていう話でしたので、そういう物騒な物だけここに破棄していこうって話になったわけです。

 このドゴログマって、そういったとんでもない魔獣や神獣、秘宝なんかを破棄するために作られた世界らしいので、こういう物騒な品物を破棄しても問題ないだろうってことになったんです。
 ジャクナにも話は通してありますしね。
 
「さて、これで最後、っと……」
 足元に残っていた宝箱を穴の中に放り投げると、僕は足元に置いていたスコップを手に取りました。
 イエロとセーテンも同様です。
「じゃ、穴を埋めて終わりにしようか。あとでスアにこのあたりを封印してもらえばお終いだ」
「心得たでゴザル」
「任せるキ」
 そう言うと、僕達は穴に向かってどんどんと土を放り投げていきました。

 その時です。

 モギュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ

 なんか、穴の中からすごい声が聞こえて来ました。
「な、なんだぁ?」
 僕やイエロ、セーテンが唖然とする中、その声の主が穴の中からすごい勢いで地表に姿を現しました。

 モグラです。

 でっかいモグラです。

「なんでこんなでかいモグラが……」
「まさか、この穴の下が巣でござったか?」
「やっぱりあの感触、おかしい気がしたっキ」
「あの感触?」
「えぇ、拙者とセーテンが穴を掘り進んでいたところ、その奥底で何やらでかいものにぶち当たったのでござる。で、それが何やらもそもそ動くものでゴザルから……」
「アタシとイエロでぶん殴ったら、静かになったキ」
 あっはっはって笑ってるイエロとセーテンですけど……
 じゃ、なんですか……今、穴の中から出現してきたこのでっかいモグラって……イエロとセーテンにぶん殴られて気絶して……で、目を覚ました上で、激怒しながら……
「うわ、ちょっとやばい! みんな逃げろ!」
 僕は大声をあげながら薬草を摘んでいるスア達の方へ駆け出しました。
 そんな僕の後方で、イエロとセーテンが巨大モグラに対して対峙しています。
「心配いらないでゴザルよご主人殿、今度は仕留めてやるでゴザル」
「そういう事ッキ」
 そう言うと、2人は巨大モグラに向かってダッシュしたのですが……よく見ると、その巨大モグラ魔獣の頭の上にですね、さっき遺棄したばかりの宝箱が乗っかっているではないですか。
 で、巨大モグラが体を動かしたはずみに、その中の一つが開きました。
 するとその宝箱から、何やら黒い煙が流れ出し、巨大モグラを覆っていったかと思うと、

 なんということでしょう

 その巨大モグラ……全身が黄金のキャタピラ状になり、鼻と手の先がドリル状に変化していきました。
「なんだあの、どこかの怪遊星人が土木作業用に開発したロボットみたいなのは……」

しおり