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第3話「スカイ・ハイ③」

 数日後。
 スハラのセッティングにより、リクは、スハラとともに旧北海製罐倉庫の付喪神に会いに行った。
「旧北海製罐倉庫ってどんな人?」
 リクはすごく楽しみにしていたようで目をキラキラさせていたが、スハラは「会ってから、自分で判断したほうがいいよ」と言うだけで、旧北海製罐倉庫に関する情報は何も言わなかった。
 そして今、2人は北海製罐第3倉庫の前にいる。
 スハラは、勝手知ったる感じで、建物の中を進み、リクはその後ろをヒナ鳥のようについていく。
 恐い人だったらどうしようという、明らかに建物のイメージだけで『ヒト』をイメージしているリクは、ここにきてちょっと怖気づいているようだった。
 そして、2人は、一つの部屋の前で立ち止まる。
 コン、コン。
 ノックをして、こんにちはーとドアを開けるスハラに続いて、リクは後ろから部屋の中を恐る恐るのぞき込む。
「こんにちは、スハラ。先月ぶりだね」
 部屋の中には、一人の女性。
 優しさに満ちた碧の瞳に、灰色の髪は陽の光を浴びて青く輝いている。そして、ドレスはシンプルなデザインなのに豪華さを失っていない。
 そのヒトは、スハラと同じくらいの年齢に見えるが、付喪神だから本当の年齢はわからない。
 ただ、間違いなく言えるのは、建物のイメージが全くないほどに、華奢で綺麗な人だということ。
「えっ、と、」
 予想と正反対であったことの驚きから口ごもるリクに対して、北海製罐―セイカ―は、はじめましてと話しかける。
「セイカといいます。スハラから話は聞いてるわ。リクさん、よろしくね」
「あ、の、リクといいます。セイカさん、はじめまして。えっと、よろしくお願いします」
 何がお願いしますなのかわからないが、ひとまず自己紹介を終えたリクは困って、ちらっとスハラを見やるが、スハラは、そんなリクに気づきながらも知らないふりをして、にやついていた。
 ここに来る前、スハラは、セイカがどんな人か全く教えてくれなかったが、どうやらこういうことだったようだ。
「スハラから話は聞いているわ。私がこんな感じで残念だったでしょう?」
 困ったまま固まってしまったリクに、セイカは穏やかに問いかける。スハラはどうやらリクの悩みをセイカに話しているらしい。リクは、何で言ってしまってるんだと思いつつも、今回の来訪をお願いする上で当初の目的を伝えなければ説明しづらかったのも理解はできる。
 リクは、勢いよく頭を下げた。
「あの、セイカさん、ごめんなさい。そういうつもりじゃないんだ」
 謝るリクに、セイカは、セイカでいいわよと優しく言う。
「リクさん、謝ることはないわ。確かにこの建物は大きいし、いかつい感じがあるし、それと同じような『ヒト』をイメージするのも理解できるわ。リクさんだって教会そのもののようだしね」
 微笑むセイカは、リクに頭を上げるように促す。
「それに、事情が何であれ、会いに来てくれたことがうれしいわ」
 どういうことだろうと訝しむリクに、スハラが教えてくれる。
「セイカは、4つの建物を合わせて一人のヒトになってるから、存在がちょっと不安定で、あまり外出ができないんだ」
 だから知り合いも、友達も多くはないんですとセイカが付け足す。
「理由は何であれ、せっかく知り合ったんだ。セイカ、リクをよろしくね。リクも、セイカをよろしく」
 えぇと頷いたセイカは、リクへ右手を差し出す。
「リクさん、いつでも遊びに来てね」
 リクは、差し出された手を握り返して、リクでいいよと笑顔を見せた。

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