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力と器

 この世に存在するモノには容量が存在する。それは世界でも例外ではなく、許容量以上は受け入れられない。それでも限界を超えて力を注ぎ続ければ、世界に限らず、それは遠からず壊れてしまうだろう。
 れいもまた同様で、成長する力とそれを受け入れる器の成長速度がかみ合っていない。現状では力の成長速度が早すぎるので、このままではいずれ存在が耐えきれずに崩壊してしまうだろう。だからこそ、れいはどうにかして力を消費しようとしているのだが。
 とはいえ、それは今すぐというわけではない。れいの限界はかなり先なので、仮に何もしなくとも千年はなんとか保てるだろう。しかし、それでもこのままではいつかその日が訪れてしまう。
「………………さて、どうしましょうか」
 れいは時折ハードゥスに力を注いでいたが、そろそろハードゥスも限界に達しようとしていた。
 流石にそれをそのままにするわけにはいかないので、れいはハードゥスの根幹に手を入れて許容量を増やすことにした。これはれいだから出来る技術で、普通は世界の根幹を弄るのならば、一度その世界を壊して創り直さなければならない。
 そうしてハードゥスの許容量を大幅に上昇させたところで、れいは一息つく。れいが力を注がなくとも、外から流れてくる力のごく一部がハードゥスに流れ込んでしまっているので、許容量には余裕が在った方がいいのだ。
「………………」
 ハードゥスの改造を終えて一息ついていたれいは、そこで何かを閃きそうな感じに動きを止める。
「………………」
 動きを止めたれいは、頭の中の考えをまとめていく。そうしていくと、一つの答えに辿り着く。
「………………継続した力の消費は難しくとも、ハードゥス同様に自身の容量を引き上げれば解決出来そうですね。成長に関しては若干遅らせるのが精々のようでしたが……」
 れいの成長速度の要因の大本は、一体化しているハードゥスなので、そちらで通り過ぎていく力に対処しなければ成長を遅くさせるのは難しい。それは分かっているのだが、流れてくる力がハードゥスを通過することが重要なので、そこに手を加えることは出来なかった。
 かといって、ハードゥスとの一体化を解くと、ハードゥスの護りの面で不安が出てくる。なので、結局のところそこはどうしようもないのだ。
 自身の改造に関しては既に何度か行っているので、その辺りは問題ない。むしろそれでいながら、自身の許容量の限界を引き上げるという発想が浮かばなかったことの方が不思議なぐらいだろう。おそらく力を消費させる方に意識が向いていたからだろうが。
 そういうわけで、十分に休憩した後にさっさと自身の改造を終わらせる。抵抗されない分、自分の改造は楽なので直ぐに終わった。
「………………」
 改造後に身体の調子を確かめたれいは、問題ないと頷いた。元々余裕はあったので、そこから上限を引き上げた程度では変化が起きようがない。
「………………高出力にも対応出来るように、少し身体の方も弄っておいた方がいいですね」
 力の量が増えたことで一度に出せる力の量が大幅に増しているので、昔に改造したきりだった出力方面の部分を弄って、現在の状況に対応させていく。
 そのまま各部の調整も行った結果、効率が上がって改造前よりもかなり調子がよくなった。
 それに満足したれいは頷くと、軽く身体を動かして力の加減を確かめてから休憩を終えたのだった。

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