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協力依頼

 れいの場合は存在の格が違い過ぎるので別ではあるが、一般的に管理補佐というのは管理者が創造した存在ながらも、管理者に絶対の忠誠を誓っているわけではない。
 そういう風に創造することも可能だが、最初に容量の上限を決めるので、忠誠にパラメーターを振るとその分容量を使用するので他の能力が下がってしまう。なので、忠誠はあっても実力が低いということになるのだ。
 逆に能力にばかりパラメーターを振ると、強いが忠誠心が無い管理補佐が生まれてしまう。もっとも、誕生時に忠誠心が無くとも管理者次第でその後に忠誠心が芽生えるので、その辺りの調整は管理者のセンスが試されるといったところか。
 ちなみに、れいは強すぎるので管理補佐に反逆されても問題ないので、管理補佐創造時に忠誠心には一切パラメーターを振らない。
 なので、ハードゥスの管理補佐達の示している忠誠は後天的なものだったりする。だからこそ、エイビスやフォレナーレやフォレナル辺りの過度な崇拝に戸惑ったりしているのだ。
 それはそれとして、普通は管理補佐はそこまで従順ではない。一応管理者が創造主ということになるので、大半の管理補佐は管理者の下に就くが、扱いとしては雇われの部下ぐらいである。なので、中には管理者に反逆する者も存在する。
 そういった者に対処するのも管理者の仕事ではあるのだが、中には取って代わられる管理者も存在していた。無数に拡がる世界だけに、そういった結果になった世界も存在している。中には立場が逆転して管理者が部下で管理補佐が上司になっている世界も存在していた。基本的に管理者は他の世界に干渉しないので、そういうことも黙認されている。
 問題は、そういった管理補佐は野心が強い場合があることか。扱いが酷いから下克上をしたというならまだしも、一定数は野心から管理者に牙を剥いているのだから、
 そういう野心の強い管理補佐の中には、他の世界にまでちょっかいをかけてくる者も居る。管理者自体は誕生時の基本能力がほぼ横並びなので、成長如何によってはそれで乗っ取られるということもあった。
 さて、世界は無数にあるので、様々な可能性が存在している。その中の一つに、元管理補佐が複数の世界を支配しているという場所があった。
 その元管理補佐は、今は新人の管理者を狙っているらしい。ただ、それをやり過ぎて管理者達を管理している組織の許容量を超えてしまったようで、近々制裁が加えられるとか。
「………………それで助力ですか」
 そういった話と共に助力を乞うてきたのは、第二世代の管理者だった。話を聞くにまだ手が足りていないようで、用意した戦力的に敗けることはないだろうが、複数の世界を掌中に収めているだけに数が相手の方が多いので、確実を期すために手を貸してほしいというものであった。
 れいは他の管理者達と距離を置いているので手を貸すつもりはないのだが、少し考えてみると、創造主が代替わりしたのでそれも必要ないのかもしれない。それに、それはそれで力を使うチャンスとも言える。
 少し考えたれいの頭に二つの選択肢が浮かぶ。
 一つは力を封じた実や、れいが創造した武器などでまとめ役側の戦力を底上げをする。
 もう一つは、れいが創造した管理補佐を援軍として貸し出すというもの。
 れい自身が赴く気はないが、どちらにしても力を消費出来る。それとは別に、前者ならまとめ役がより強く。後者なら管理補佐の経験になるだろう。
 ただ、ハードゥスに物騒事は存在しない。人や魔物などの諍いはたいしたことはないし、外敵は来たとしてもれいが直ぐに対処してしまう。そういうのに無駄に時間を掛けるつもりも無いので、世界の防衛に管理補佐は必要ない。
 ということで、今後を考えてまとめ役の力を増やす方向で考えることにする。どういう方向で力を分配するかはまとめ役に任せればいいだろう。
 そういうわけで、れいは助力嘆願に訪れた第二世代の管理者に、以前試しに渡したれいの力で創った果実を数個と、れいが今創造した装備類を渡しておいた。
 装備類は管理者が使うことを想定しているので、人の感覚で言えばまさに神器と言えるレベルの性能だった。助力嘆願に来た管理者の装備を参考にしたので、れいからすればかなりの手抜きではあるが。
 それらを恭しく受け取った第二世代の管理者は、深く礼をして感謝の言葉を述べると、自身の管理している世界に帰っていった。これから分配などを話し合うらしい。
 これ以上はれいの関知するところではないので、どうでもいい話ではあったが。
「………………それにしても、複数の世界を支配ですか」
 ただ、その部分だけは少し気になった。
 そこまでしっかりと管理出来ているわけではないらしいが、それでも複数の世界を支配するなど普通の管理者でも手に余るだろうから。
「………………相変わらず、たまに現れる変わった存在は面白いですね」
 そんなことを少し考えたところで、れいはもう終わったことだと頭を切り替えたのだった。

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