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植物大陸経過状況

 ハードゥスの衛星が変わっても誰も気がつかない。それはれいが見た目が変わらないように気をつけたから。
 基本的にハードゥスで起きる自然現象は、力の消費のためにわざわざハードゥスで生み出しているので、実は衛星にあまり意味はない。
 さて、ハードゥスの衛星に力の保管装置の移管が終わったところで、空いた場所を整える。衛星が一杯になったらまた保管装置を置くことになるので、保管場所はそのままにする。
「………………保管装置はまた後で創造するとしますか」
 保管装置を創造するだけでも力を使う。それもかなりの量を創造するので、力の消費も大きい。力を消費するいいアイディアが思い浮かばないので、それは貴重な方法であった。
 保管場所から移動したれいは、ハードゥスを観て回りつつ、永続的に力を消費する方法を思案する。消費する量はそれなりでもいいので、何かないだろうかと思うも、残念ながらこれといったモノは思い浮かばない。せめて一度で大量の力を消費する方法でもないかと考えてみるも、衛星を創造したのでそちらも難しい。似たようなことをすればいいのだが、創造はほどほどにしておきたかった。
 ではどうしよう? そう思ったが、やはり答えは出てこなかった。
「………………まだ焦るほどではありませんからね」
 確かにれいの成長は凄まじいのだが、それでも許容量は更に大きいのでまだ何とかなっている。ハードゥスも日に必要な力が増えてきているが、そちらはあまり期待出来ない。
「………………さて、そろそろ植物大陸の様子でも見に行ってみますか」
 最も新しい植物の楽園の大陸。それを創ってからそれなりに時間が経過したので、何か新しい変化があるかもしれない。少なくとも、勢力図は決まっているだろう。
 そう思いながられいが大陸に行くと、見た目はあまり変わらず森だった。ただ、奥の方を見れば色鮮やかだったり、何かが蠢いていたりと楽しげである。
 この大陸には植物以外にも、蟲系を中心とした魔物も放っていたので、森の奥から不気味な鳴き声も聞こえてくる。鳥の魔物も放っておいたが、ぐぎゃぐぎゃ鳴きながら空を飛んでいた。
 森に一歩入ると一気に空気が変わる。常に誰かに見られているような気味の悪さと、今にもそこらの木の間から襲ってきそうな不気味な恐ろしさが混在しているが、れいはその辺り一切気にしないので普通に先へと進む。
 森の中はそこまで暗くない。木々の間から差し込む光が多いからだろう。近くの木で蟲が蠢いたり、遠くを魔物が駆けていったりしたが、れいに襲い掛かってくるような無謀な存在はいないようだ。
 少し奥に行くと奇麗な花畑が姿を見せる。周囲に幻覚作用のある匂いをまき散らしている毒性の花々のようだ。
 れいはそんなもの気にせずその花畑を突っ切ると、更に奥へと進む。
 森の中で動くのは蟲や動物の魔物ばかりではなく、歩く植物もそれなりに存在している。待ち伏せするのもいるので、植物とて油断できない。
 全てではないが、その待ち伏せする植物の魔物が付けている実は意外とおいしいのが多い。魔木の実には及ばないながらも、高級品の部類に入るほど味がいい。匂いも濃いので、香料としても人気がある。
 れいは近くに在ったその実を一つ採って食べてみる。中には毒があるのも存在するが、れいには関係ない。
「………………ふむ、美味ですね。しかし、やはり魔木の実には遠く及ばない」
 れいが普段口にしているのは伝説級の魔木の実なのだが、それと比較するのはどんな物でも酷というもの。もっとも、若木の魔木の実でも、れいが口にした実よりも美味しさで上なのだが。
「………………まだ独自の植物は生まれていないようですね」
 広大な森の中を見て回ると、その兆候はちらほらあるのだが、それが実を結ぶにはまだまだ時間が掛かりそうであった。
 それから数日掛けて森の中を一周したところで、れいはまた時間を置いてから来ることにする。
 帰る時に森の管理のために管理補佐でも派遣しようかと思ったが、それも森がもう少し形になってから考えるべきかと思い、止めておいた。

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