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回転率は上がった。しかし、迷宮の在庫は減らなかった

 迷宮内限定の加護の効果は、意外と直ぐに出た。
 今回の加護は迷宮限定なので、大きな変化だと適応するのに時間が掛かる身体能力の上昇はほどほどにして、その代わりに護りに関して様々なモノを付加している。
 主に各種状態異常への耐性付加と、身体の周囲へ防御の膜を張ることで物理・魔法両方のダメージを大幅にカットするというもの。
 もっとも、ダメージが大きすぎるとカットしてもやられるので、少し格上までなら戦える程度のもの。それでも同格程度なら問題なく勝てるぐらいにはなるので、攻略の一助にはなるだろう。という認識だったのだが、思った以上に護りの補助というのは大きかったのか、それとも元々精強だったということなのか分からないが、効果が表れるのが思った以上に早かったのだ。
「………………それとも、疲労軽減も組み込んだからでしょうか?」
 疲労軽減と言っても、普段よりは疲れにくい程度のものなのだが、それでも十分に役立ったようだ。ついでに言えば、強心も付加されていたので、怯懦に打ち勝ち戦えたというのも大きいらしい。
 結果としては成功。全体の攻略速度が微増ではあるが早くなっている。その結果を受けた軍も、迷宮攻略組を増員する予定のようなので、もう少し速度は上がりそうだ。
「………………もう少し渡しておいてもいいですね」
 迷宮限定の加護の装飾品を他の場所にも供給するついでに、試験運用に協力した礼として装飾品を追加しておくことをれいは決める。
 早速追加分の装飾品を創造したところで、元々創造していた配る分の装飾品を影響力のある管理補佐達に説明と共に渡し、れいは追加分を渡しに試験運用に協力した国へと赴く。れいの存在はあまり知られていないので、担当する場所は少ない。
 そうして全ての装飾品を配り終えたところで、後は経過を観察しながら待つばかり。合間に攻略後に新しい迷宮の設置も忘れずに行っていく。
 やはり影響力の大きな者を派遣しただけに、全ての場所で行動が早い。このままいけば各地で微増程度でも、全体でならば二割程度は迷宮の消費が増えるかもしれない。少なくとも一割は増えそうだ。
「………………それでも少し流れ着く量の方が多いですか。いえ、二割ぐらい増えれば丁度いいかもしれませんね」
 現在の収支を基に計算したれいは、在庫が増えるのはなんとか抑えられそうだと結論を出す。後は減ればいいが、こればかりは今後の漂着物次第と言えるだろう。
 とりあえず懸念事項の一つが少し改善されそうなので、まぁいいかと次に取り掛かる。
 現在のハードゥスにおいて一番の懸念事項は、やはり膨れ上がる力だろうか。それを使う場所がないので余力がありすぎる。
 子供が生まれる時にはリソースを消費するが、それで使用するリソースは微々たるもの。それも死んだ者の分のリソースで十分に賄える範囲。
 さてどうしたものかと悩むも、それはもう長いこと考えて答えが出ないので、どうしようもない。無駄に何かを創造すればどうにかなるが、それはそれで抵抗がある。
 それに加えて、れい自身の力の増加もあるので困ったものであった。いっそ漂着物を集めている一角とは別に、れいの創造した世界を離れた場所に創造しようかとも考えている。
 力の消費のためにハードゥスを少しずつ拡張しているので、ハードゥスは既にかなり大きい。それこそ、世界を三つ四つ内包してもまだ余裕があるほどに。なので、それも候補の一つとして真剣に検討してもいいのかもしれない。

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