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第1話Part.4~おしゃれな本屋でお買い物~

 武器を購入した次は学校で使用する書物の購入に本屋へ行く。本屋は武器屋から少し歩いた場所にある。

「すみません。」
「はい、いらっしゃいませ。」

 受付に座っている長い髪の女性に声を掛ける。彼女は皮用紙に何かを記入していた。まずは受付にシェーベリー戦闘大学校専用の教科書を買い求めに来たことを告げる。
 学校専用の教科書は店頭に並んでいないのでこうして受付に取り次いでもらう必要がある。それを持ってきてもらう間に店頭に並んでいる教科書を探すつもりだ。
 店頭に並んでいるのは先生自身の著書を教科書に指定しているというパターンのものだ。武術や魔術書などがそれにあたる。

「ファンデン、くん?」
「え?あ、アメリアさん!」
「やっぱりファンデンくんだ。久しぶりだね。」
「本当に。今ちょうどアメリアさんのことを考えてたんだ。」
「えっ?!わ、私のこと?」

 俺は本を探そうと受付から方向を変えて歩き出そうと思った時、ちょうどアメリアと再会した。彼女はアメリア・ブランシエール。初等学校は同じだったが中等学校はシェーベリー学術学校に通うことになっている友人だ。
 身長は150センメラー弱で灰色の大きな瞳が特徴的で肩にかかるほどまでに伸びた綺麗なブロンドの髪をしている少女だ。
 卒業式、そして卒業パーティーのペイツで会って以来、大体2、3週間ぶりぐらいか。俺はちょうどアメリアのことを考えていたと言うと、彼女は顔を赤くして狼狽えた。

「うん。アメリアさんと図書館に行って以来色々本を探すことも増えたんだ。ちょうど本屋さんだし今日も教科書を探すついでに何か面白い本があればと思ってね。」
「あ、あ、そういうこと……。」
「アメリアさんも教科書を買いに来たの?よかったら一緒に探さないか?」
「うん。ちょっと待ってて。私も受付するから。」

 アメリアは俺の言葉に少し残念そうな表情を見せたが、一緒に教科書を探すついでに面白そうな本を探さないかと誘ってみると表情がパッと明るくなって、彼女も受付に専用教科書の取次ぎをしてから2人で本を探すことになった。

「この本屋さんってすごくおしゃれだよね。」
「ああ。俺も入ってちょっと驚いた。」
「うんうん。入った瞬間に不思議な感じでおしゃれな階段が招き入れてくれるような感じで。」

 外観はベースは白色でかわいらしい壁画やちょっとしたお城のような装飾を施したおしゃれな見た目ではあるのだが、それほど特筆すべき外観と言うわけではなかったのだが、中に足を一歩踏み入れるとそんな感想が一変した。
 外からは分からなかったが奥行きが非常に長い、そして本棚は左右に設置されており、1階の天井までの高さはおそらく5メラーほど。その辺りは特に驚くところではない。

 だが2階に上がる階段が本屋の中心に置かれており、入り口からすぐに目に入りお客を招いているように見える。そしておそらく2階の天井がグラスか何かだろうか、上から光が差し込んでいて階段が太陽光で自然のライトアップでキラキラと光り、まるで天にでも上るような非常に幻想的な雰囲気を感じさせる。
 階段も特徴的な作りになっており、階段の裏側も見えるのだが、その裏側も1段1段非常に凝った装飾を施している。

「すごい……綺麗だね。」
「ああ、これはたしかに……。」

 入り口から見えている階段を10段ほど上がれば折り返し。折り返しの階段は二又に分かれ、少し膨らんでから合流し、そしてまた二又に分かれる所謂8の字状になった凝った作りをしていて、天井を見てみると思った通り天井の一部分はガラスがはめ込まれている。色づけられたグラスでシンプルながら綺麗な模様が描かれている。

「お?この辺りに武術の本が置かれてるみたい。」

 2階に上がって本棚を見ていると武術書が固められている場所を見つけた。タイトル順となっているので探している本の辺りの文字を見つけ、その辺りを順に探していく。そして武術の教科書『戦闘術入門:アドニス・グウィン著』を見つけてそれを手に取った。
 そしてアメリアも探している本の欄があったようでそちらを見ているようだ。

「見つかった?」
「えっと……あっ。」
「ん?」
「あったけど届かない……。」

 アメリアが探している本も見つかったが高い場所にあるようで彼女は届かないらしい。俺はそのタイトルを聞く。俺なら手を伸ばせば届きそうだ。

「ちょっと待ってね……よっと……はい。」
「ありがとう。ふふっ。」
「ん?どうかした?」
「リール・ア・リーフの入学式の日を思い出して。あの時もファンデン君がこんな風に私の帽子をとってくれたね。」
「懐かしいね。ヨーゼフ肩車してね。」
「入学の時ちょっと不安だったけど、ファンデン君たちのお陰で大丈夫だって思えたよ。」

 アメリアが柔らかい笑みをこちらに向けた。俺もたしかにそんなことがあったなと思う。アメリアとは方向性は違うが俺も不安を持っていたので初等部入学の日は特に印象深い。

「あ、アメリアさん。教科書多いね……。」
「うん。私は学術学校だから。」
「俺も手伝うよ。まだあるんでしょ?」
「うん。ありがとう。」

 俺は武術書と魔術書、薬学の本くらいなのだがアメリアの方は難しそうな本がたくさんあるようでとても全部は持てなさそうだ。俺は手伝うことにしてアメリアの教科書も一緒に持つ。結局アメリアの教科書は店頭に並んでいるものだけで8冊あった。

 もうそろそろ受付に頼んでおいた教科書が揃っている頃か。俺たちは受付の方へ行ってみることにした。思った通り教科書が揃っておりお金を支払って外に控えている便利屋のラビーの元へ教科書を持って行った。
 アメリアも便利屋か馬車辺りを連れてきているであろうが、一度で全部持って行くのは難しそうなので一度本屋に戻って、往復していたアメリアに残りを手伝うと言って彼女が連れてきているという馬車に一緒に持って行った。

「今日はありがとう。ファンデン君。」
「うん。また今度ね。」

 馬車に乗ったアメリアを見送る。アメリアは窓を開けて手を振ってきたので俺も手を振り返して彼女の馬車が小さくなっていくまで見送ってからラビーの元へ戻った。

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