バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

人の成長速度と北の森の状況

 れいが現状の把握のために各大陸を見て回った結果、人の成長はやや遅れてはいるが、それでも誤差の範囲内に留まっている。勿論、大陸によって成長に差はあるも、それでも今のところは問題なさそうだった。
 それに人の成長が遅れている原因は、ハードゥスで誕生した者達の成長が鈍いからであった。本来であれば、ハードゥスに満ちている力に適応してもう少し強くなっているはずだったのだが。
 それについて調べてみると、どうやら人の繁栄が順調過ぎて、昔ほど自身を鍛えるということをしなくなったのが原因らしい。当然だが、いくらハードゥスに産まれたからとて、鍛えねば強くはなれないのだ。
 逆に、追い込まれている魔物の方はより鍛えているので、結果として魔物の勢いが増すという当然の帰結に繋がったということ。
 個では魔物。群では人とバランスは取れていたのだが、やはり群が強みとて個の力が弱くなればそれも覆るというもの。
 ただ、現状では魔物が人を圧しているとはいえ、それは人が魔物の領域を侵食したのと変わらない。元々人の方が勢力としては弱かったのだ、今回は一度その時に戻るだけ。どこまで勢力を蝕まれるかは不明だが、滅亡する前に何処かでまた逆転することだろう。なので、れいは調べはしたが介入する気はさらさら無い。
 各大陸への調査が終わったれいは、魔木にその話でもしようかと北の森に移動する。そこでふと、魔木がしていたフォレナーレとフォレナルの話を思い出した。今は少し賑わっているというフォレナーレの方は後回しにして、フォレナルの様子を見てみることにした。現在の森の様子も聞く必要もあるだろうし。
 フォレナルの家の前に到着する。相変わらずの木の呑まれた家で、いつ見ても中々に壮観である。
 扉を叩くと、直ぐに中からフォレナルが出てくる。いつものやり取りを経て中に入ると、れいはまず森の様子を尋ねることにした。
 フォレナルの報告によると、フォレナルが管理している側の森は今でも平和らしい。フォレナーレ側の管轄から少数の人は入ってくるが、ほとんどが浅い部分だけ探索して帰っていくらしい。
 その他は魔木に聞いた事柄や今までと変わった報告はなかった。報告後の雑談のついでにフォレナルにフォレナーレの現状を知っているか尋ねてみると、割と詳しく知っているようだった。同じ森を管轄しているからか、連絡は結構密に取っているらしい。そして、フォレナルを訪ねてきた人はまだ居ないという話だった。
 フォレナーレ側の管轄の話だが、雪山の裾野まで到着した者達はいるようだ。それからその者達は準備を整え雪山に挑んだらしいが、途中で挑戦は終わったらしい。難度で言えば、雪山は森よりも遥かに高いのだから当然の結果かもしれないが。
「………………」
 そこでれいは、昔攻撃してきた雪ウサギのことを思い出す。意外と好戦的で狡猾なウサギだったので、あれの相手は人にはまだ荷が重そうだ。
 それからも色々話をした後、れいはフォレナルに見送られながら、フォレナーレの家に向かうことにした。

しおり