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曲がった善意

「何だよ良い事すんなって、どんなルールだよ」

 暗い街道をランタンが照らしているが、全てを照らす事は叶わなかった。 そして暗い中、周りの警戒を強めていた。 暗く静かな街道は、廃墟を歩いているのかと錯覚する程静かだった。

 治安が悪過ぎて出れないとか、そんなのか?

 すると道中、ひったくりが起こり、男の人がこけているのを助けた後、「気分悪いな」と言い、ひったくり犯を捕らえ、氷の縄で拘束した。 そして犯人が持っていたであろう長い紐の付いた財布を持ち主に返した。

 「ったく、何でまた」
「アンタ、何も捕らえなくても、ほら、財布は返してもらったしさ」
「いや、このままココの警察か何処かへ」

 会話をしていると、直後、背後から累は突如として刺された。 しかもソレはナイフなどでは無く、剣だった。

 は? ってかこんなデカイの、コイツ、何者だ⁉︎

 振り向きざまに刺してきた女に裏拳をかまし、そして少し距離をおいた。

 「お前ら! 盗みの事は後だ逃げろ!」

 その言葉を聞くと同時に累は能力を解いて、体に刺さった剣を抜き、手に持って能力を審判に切り替えた。 そして累が裏拳をやった隙に二人とも逃走した。 

 「ご褒美はありがたく受け取っておきますが、何故逃すのですか? 監禁すべきです」
「おい、先ずは俺を刺した理由を言え」

 何故分からないのか首を傾げ、只「良い事をしたから」と答えた事に、殴りかかりそうになるも、何かを曲解したのかもしれないと思い、理由を聞いた。

 「少しでも良い所へ行ってもらう為です」
「ソレとコレと何の関係が?」
「良い人には良い人生を歩んで欲しいんです」
「ソレは分かる」
「なので痛めつけます、殺しはしません」

 累はどうにかソレに関わりそうな何かを頭の中から取り出し、少し動揺して質問した。

 「おい、まさかとは思うが…… 苦しい事をしたら後が楽になる、とか、そんな事言われたり……」
「はい、その通りにしてるんです。今を痛めつければ、今では叶いませんが、来世で、もっと幸福になれる筈だと思っています」
「まぁ、気持ちは分かるが、蔑ろにし過ぎだろ」
「何がですか?」
「当人の気持ちを、まぁ、俺も良い人には良い人生を歩んでもらいたい。けど、幸せ過ぎるのも、駄目なんだと思う。 他の奴なんかそうなんだけどさ、幸せ過ぎて不安になる奴も居るんだ、本当にこんな幸せを受けて良いんだろうか、って、思う奴が」
「幸せ過ぎるのも、良い人を傷つけるって事、ですか?」
「あぁ だから、止めろ、とは言わないが、これ以上幸せになりたくないって人が居るわけだから、予め確認位はやってくれ、そして、承認したら、好きにしろ」

 すると彼女の目は光を失い、返答次第では殺すと言わんばかりの殺気を放ちながら、虚な声で質問した。

 「最初はそう言ってたんですけど、誰もさせては、くれなかったんですよね、貴方もそうでしょう? 私は只、私なりに幸せにしたかっただけなのに、貴方も私を除け者扱いするんでしょう?」
「いや、俺はこう見えて強欲なんだ、幸せ過ぎて不幸なんて俺にはない、だから、痛めつけてくれて構わない、但し、場所と時は選んでくれ、そうでもしないと、周りがうるさいし、掃除も、しんどい」

善意でやってる事を否定するのは、もっと良くない事が起こるしな、痛みに耐性は有るし、審判も有るし、少しアレなだけで、まだ矯正は出来るだろう。 問題は矯正の仕方、だが

その言葉を聞くと彼女は涙を流して笑いながら、嬉しそうに話した。

「良い人かと思ったら何かの噂を聞きつけて来た同じ考えの偽善者ですか。良いですよ、初めての相手って事で、特別にいつでも痛めつけてあげますね」
「好きにしろ」
「ココには悪人しか居ないのでついて行っても」
「好きにしろ、但し場所と時は」
「分かってます」

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