神王倒し計画
「神の子って…………
そう話すと、レンは顔をしかめていた。
人間では…………ないのか?
俺は思わず首を傾げる。
「うーん…………その神の子とは違うんだよ」
説明に困ったのか、レンは口を閉じてしまう。
すると、そんなレンをフォローするかのようにベルティアが話し始めた。
「ねぇ、レン。はっきりといった方がいいと思うわ。神の子なんて言っても、この世界でいう神の子と混同させてしまう」
「そうだね。僕は…………僕はこの世界でいう神だ」
しかし、レンがはっきりと言っても、俺とメミは困惑顔を浮かべるしかなかった。
「…………ますます理解できなくなってきた」
「お兄様、私もです。レンが神だなんて…………信じられません」
ただえさえ、身近にガキのような悪魔がいる。なのに、久しぶりに会った親友が神様? わけわからん。
当然俺は信じることなんてできず、訝し気な目でレンを見る。
「まぁ、いいさ。僕が神だったり、ベルティアやコンコルドが天使であることはどうでもいいこと」
「ちょっと、私のことをなにしれっと言ってるのー」
「どうせそのうちバレることだからいいでしょ?」とレン。
はぁ?
すでにパンクしている頭なのに、さらにわけのわからないことを言ってくる2人。
「まてまてまて!
「誰が悪魔ですって、あんなやつらと同じにしないでもらえない?」
「べ、ベルティアさんが…………てん、しぃ…………」
悪魔と言われ気に食わなかったのか、ベルティアは背中から白い翼をばさりと広げる。その姿を見たメミは驚きのあまり失神しそうになっていた。
仮装している…………わけでもなさそうだ。
本当に天使なんだな。
そういえば、さっき。
『私はこの世界の人間ではないからね』
とか言ってたっけ。なるほど、確かに天使は人間じゃない。
…………。
でも、なんか思ってた天使と違う。
もっとこうおしとやかーというか、気品があるというか。
目の前にいる天使は好戦的。天使って平和を望むもんじゃないの?
あ、もしかして堕天使だったり…………。
「ねぇ、今、私が堕天使じゃないかなんて思ってるでしょう?」
「思ってません…………それでその神様と天使様がなんでこんなところにいるんだ? その様子だと俺に用がある感じだが…………」
神のレンはかなり前からただの人間の俺に接近していた。何かしらの考えがあって、近づいてきた。
だから、俺に何か用があると思うんだが…………。
一体、神が人間に何を望むのだろうか。
「そうだよ。ネル、君に頼みたいことがあったんだ」
レンたちは切り替わったように真剣な面持ちに変わる。
「神王を倒してほしんだ」
「しんおう?」
しんおうって、神様の中の王様ってことか?
そんなやつを…………倒せ?
何を言っているんだ、
ベルティアの変人っぷりがうつったか?
「神の王のことだよ」
「いや、分かるけど…………なんで俺?」
「まぁ、色々事情があるけれど、簡単に言えばネルが勇者だから、かな?」
「それも知ってるのか」
「だって、僕、神だもん。勇者指定は僕の仕事だからね。いつもなら、8歳超えてから、勇者の印を与えていたけど、ネルには赤ちゃんの頃から、勇者指定していたよ」
マジか。生まれた時点で、俺が勇者確定だったのかよ。嫌なんだけど。
レンに頼めば、アルカイドの勇者を別の人にしてもらうとかできねーかな。
…………いや、今の話はそれじゃなくて。
「…………だいたい神様にどうやって会うのかも知らないのに、神の王を殺す? 無茶なことをいうなよ」
「大丈夫。ネルならあともう少しで神様にケンカを売れるようになるよ」
「…………どういうことだ?」
勇者であっても、人間に変わりはない。
天使であったベルティアと戦っても、ベルティアはまず死ぬことはなかった。
人間VS天使でさえ、最初から結果が目に見えるようなもの。
それなのに、チートな神様に人間がケンカを売る? 自殺行為も同然だ。
「僕が死んだ後、ネルは裏世界に行って、レベル上げしたでしょ? あれね、僕の神王倒し計画の一環だったんだよ。天界でいろいろあって、ネルのレベル上げは部下に任せたけどさ」
「お前の部下? 会った覚えなんてないのだが?」
あの時、裏世界で会ったのはコンじいぐらいで。
コンじいしか会ってなくて。
…………。
いやいや。
あのおじいちゃんが、レンの部下? そんなわけないだろ。
「なぁ、レン」
「何?」
「まさかだとは思うが、コンじいがお前の部下だということはないんだろうな?」
俺が恐る恐る聞くと、レンはアハハと笑っていた。
「そうだよ、コンコルドは僕の部下。天使はみんな神の部下みたいなものさ」