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不死の王

 屍の王。それは元居た世界では大層恐れられた存在で、実体を持った災厄と呼ばれ恐れられていた。
 過去に幾度となく討伐隊が組まれたが、世界中の人を相手取ってもついぞ討伐出来なかった存在で、それだけの規模で討伐隊が組まれても、実際に屍の王の許に辿り着けたのは、全ての討伐を合わせても数名程度だったと言われている。
 それほどの存在が長きにわたり存在していた。屍の王自身に世界征服のような大層な野望が無かったために人は滅びなかったが、それでも屍の王の勢力圏が広かったために、人はある一定の数までしか人口が増やせなかった。
 そうしてとうとう訪れた限界と共に行われたのが、乾坤一擲の策となる世界中の人を集めに集めた過去最大規模の討伐。
 それによる屍の王との全面戦争により、人は大幅に数を減らしてしまったが、それだけの代償を支払ったおかげで、屍の王はその世界から消失した。
 これを討伐隊は屍の王を討伐したと公示したものの、実際は屍の王は健在のまま、交戦した討伐隊の主力が全滅。なので、そう公示しながらも英雄不在となった。適当な人物が居なかったのだ。実力のある者は皆死んでしまったのだから。
 討伐隊を返り討ちにした屍の王は、悠久を存在したことによる倦んだ心を晴らすために、側近達と共に世界を棄てた。その結果、一人だけ生き残りハードゥスに漂着する。
 屍の王は、漂着して直ぐ目の前に居た人物を見て、自身の終わりを悟る。
 今までにも自身よりも強い存在というのは居た。しかし、それでも屍の王は消滅させられずに存在し続けてきた。つまりはそれでも敗けたことだけは一度たりとも無かったのである。
 だが、今回は違う。相手の存在の位階が違い過ぎるのだ。見ただけで恐ろしいまでに高みに居る存在など、屍の王の永い時間の中でも初めての経験であった。
 それだけの差があったために、屍の王の中に抵抗するという言葉は一切思い浮かばない。全てを受け入れる。自然と浮かんだその想いと共に、屍の王はその時を待った。
 しかし、屍の王の予想に反して、その時は訪れなかった。その代り、幾つかの注意事項と役割を与えられたが。
 屍の王はそれを唯々諾々と従う。それが当然で、おかしなことなど何一つとしてないのだから、逆らうなど欠片も思い浮かばなかった。むしろ至高な存在の役に立ちたいという想いの方が強かった。
 こうして屍の王は新たな地で役割を得た。役割の内容は元居た世界とあまり変わらないが、それでも圧倒的に充実感が違っていたので、内容に反して楽しみでしょうがない。
 それからしばらくして、その大陸で地上に強力なアンデッドの存在が確認された。そのあまりの強さに人々は恐怖し、その高位のアンデッドを不死の王と呼んで恐れた。

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