08
「まぁ、今始まった事ではないし、俺も理解しているはずなんだ。
なのに兄貴の事があるから、どうも理性が……」
お兄様は、奥さんを亡くされて今は、独身。
だから余計に不安なのだろう。
私がお兄様を好きになったらどうしようって……。
だから早く結婚を済ませたいのか。
少しでも不安を和らげるためにも……。
「お兄様の事ですが……確かに理想型のイケメンだと思います。それは認めます。
ですが、何度も言うように私が好きなのは、課長ですから。
だから、お兄様を好きになることはありません。
私を信じて下さい!」
その言葉に嘘はない。
この性格を直さない限りは信用してくれないと思うが、出来たら直したい。
せめて課長に安心してもらえる程度には……。
するとそれを聞いた課長は、クスッと微笑んでくれた。
「そうだな。俺の考え過ぎだな。悪い……。
俺の悪い癖だ。慌てずにじっくり考えて行こう」
私を信じて考えを改めてくれた。
そうよ……私は、課長と一緒に式を挙げて幸せになるのだから頑張って直して行こう。
そう……決心したはずなのに、そんな私達に大事件が起きた。
改めて式場の日にちも決まり順調に準備が進む。
後は、結婚式を迎えるばかりだった。
するとそんな時に一本の電話が鳴った。
「はい。イケメンパラダイス喫茶でございます」
電話に出ると何処かで聞いた事のある番組名を言われる。
あれ?この番組って……確か。
「えぇっ!?相田君がウチの喫茶店に1日店員として取材をしたいですって!?」
驚いて思わず立ち上がってしまった。
話の内容は、今話題の人気番組『お仕事してパラダイス!』だった。
そこに人気俳優の相田君がレギュラー出演している。
なんとその相田君がこのお店で1日イケメン店員としてテレビ撮影をしたいと言う申し出だった。
つ、つまり生の相田君を拝めるという事になる。
どうしよう……これは、夢?いや、奇跡が起きた。
「はい。喜んでお受け致します。日時は、いつ頃にしましょうか?」